上天せいろ
東京都のおいしいそば屋

東京都江東区の四ツ目通りから1本はずれた細い道沿い、ほかに目立つ建物やお店のない通りに「きのした」はあります。

店の前に置かれた縁台とのれんの佇まいは、蕎麦のおいしさを想像させるようなとてもいい雰囲気です。

ガラス戸を開けてお店の中に入ると、広々とした空間の中央に“小上がり”とは言えないような広さの畳敷きのスペースが目に入ってきます。そこには4卓16席があります。入って左側には、8~10人が座れるような木製の大テーブル、正面右側には勘定場を衝立で隔てた向こう側に2人掛け席が2つ、4人掛け席が3つ並んでいます。

小上がりを囲った欄干やいす、テーブルもすべて木製で、広々としている割には落ち着いた雰囲気です。

「きのした」外観です。しっとりと落ち着いた店のたたずまい。蕎麦の美味しさが、外観に漂っています。

花番さんものんびりとした対応で、混雑時はどうなんだろうと心配になってしまいました。この時間、畳敷きのスペースには家族4人組1組とカップル1組(話し声がよく聞こえます)。他に大テーブル席に1人、テーブル席に1人。1人客は2人ともビールを飲んでいます。

私はレジ後ろの2人席に通され、お水とおしぼりをもらいました。

さて、メニューを見てみましょう。そば・うどんのお品書きの中には特に目を引く“変わり種”がないのは、私にとっては嬉しいこと。安心して蕎麦の味に集中できそうです。天そば、天せいろ、鍋焼きうどんに「上」があるのはおそらく海老の本数でしょう。

バスに揺られ、スマホの地図アプリ片手にたどり着いたお店です。折角ですから「上天せいろ」(税込み1674円)を頼みましょう。花番さんに注文していると、座敷の家族客からもう一人の花番さんに、追加注文の声がかかりました。「“笹だんご”を2つください」。

えっ! 笹だんご!? メニューには載っていません。キョロキョロと壁に貼られたメニューを見ていると、あっ、ありました。「笹だんご 1個150円、5個700円 ※持ち帰り承ります」。隣にはちょっと気になる「あります ねぎそば800円」の文字。赤と黒のマジックで手書きのメニューでした。そのほか、ホワイトボードに、ポテトサラダやレンコンのきんぴら、牛もつ煮など、つまみがいくつか書かれています。

そして待つこと5分、上天せいろの登場です。

手前に薬味(ネギ、わさび)と天せいろ用の口の広いそばつゆ椀。奥に天ぷらとせいろ。天ぷらは、素麺の天ぷらが華やかさを演出してしているものの、天ぷらの衣の色の他は海老の尾の赤と素麺を束ねるのに使っている海苔の黒が目立つだけなので、しし唐などを添えて、もう少し彩りがあれば‥‥と思いました。

天ぷらは大海老2本と、カボチャ、そして素麺の飾り天ぷらの4品。おそらく普通の天せいろは大海老1本とカボチャの2品ではないでしょうか。

さて、そばの印象です。表面の感じはつやがありますが、水の切れ具合もいい塩梅の様です。やや細麺で、見ただけでコシがあるのを感じます。良く見ると、やや茶色を帯びた麺の中に細かな黒と白の星が入っているのがわかりますが、麺自体の粒状感は弱めです。麺の量は少なくはありません。十分だと思います。

せいろ
つややかさがあり、かすかにホシが浮かんだ蕎麦。ごくりと、喉が鳴ります

蕎麦粉は茨城県筑西産の常陸秋そばで、水分含有率15%とのこと。加水率は時期によって変えているそうです。

さて、早速そばからいただいてみましょう。あっ、食感がいいですね。私の好きな、少し表面にざらつきがある舌触りです。噛んだ感触も、しっかりとコシを感じ、歯ごたえも程よいものでした。麺の適度な長さ(普通に手繰り上げてつゆに浸けられる程度)がうれしいです。このくらいの長さだと、食べやすく、のど越しの良さもわかります。蕎麦の味は強いものの、香りは少なめでした。

つゆはしっかりした色で、鼻を近づけるとほんのりと出汁の香り。私は、出汁の主張はこのくらいが好きです。舐めてみると、どちらかと言えば“少し甘め”ですが、後味がすっきりしています。化学調味料は言うまでもなく、ザラメや砂糖の匂いや味の残るものはあまり好きではありませんので、私にとっては“いい感じ”です。そばを半分ほど浸けて啜るのがグッドバランス、そのくらいの濃さです。

つゆに浸けて啜ると、そばの味がさらにアップしました。麺とつゆがバランスの良い一体感を生んでいるようです。

そば湯はどびんに入れられてきました。つゆが多かったのでそば猪口をお願いして飲みました。少しとろみはありますが、ドロドロでもなく麺自体よりも香りが立っています。つゆを入れると、少しつゆの酸味が顔を見せますが、嫌な感じではなく、美味しくいただくことができました。

この店ではせいろ関連が人気だそうですが、そば自体がとても美味しいので納得です。

「きのした」さんは、とてもゆったりとした時間が流れるお店でした。レジの脇の壁に有名人の色紙が貼られていました。ビートたけしさん、溝端淳平さん‥‥。おそらく仕事でこの地を訪れたときに地元の人に聞いたのでしょう。「おいしいおそば屋さんなら『きのした』さんだね」と。

再訪したいお店となりました。ごちそうさまでした。

(レポート/木曽馬ジョージ)

 

【 店の電話番号 】03-5606-0052

【 住 所 】東京都江東区千田7-14

【 アクセス 】都営バス「千田」バス停から1分、「扇橋二丁目」から3分

【 営業時間 】11:00~14:30、17:00~20:30

【 定 休 日 】水曜日

【ひとり分の平均的な予算】「上天せいろ」税込み1674円 (2018年5月25日現在)

【 予 約 】可

【クレジットカード】

【 個 室 】なし

【 席 数 】36席

【駐 車 場】1台分あり

【 煙 草 】昼は全面禁煙、夜は分煙

【アルコール】ビール、日本酒、焼酎など

【店のホームページ】なし

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