蕎麦 森乃庵(石川県津幡町)北陸蕎麦道中 趣ある町の蕎麦屋で頂く手打ちの二八!

石川県のおいしいそば屋

関東の奥地 群馬県から北陸の雄 石川県へ蕎麦道中.JR 北陸新幹線が開通した今,北陸ももはや関東の近所.加賀百万石を誇った金沢市を擁する北陸随一の大都市に2時間強で到着する.京都の影響があるとされる石川県は食文化においても共通項を見ることができる1).例えば,「たぬき蕎麦」.関東で主流の天かす入りのものではありません.京都のたぬき2)です.きっと探せばあの愛しのあんかけ蕎麦3)にも出会えるかも・・.

しかし,今回の目的は京風あんかけ蕎麦でも金沢観光でもありません.在来線に乗り換え,隣接の津幡町へ.風のうわさに聞いた蕎麦の名店がある町に遥々やってきた次第である.駅舎から町並みを見渡すと天気(曇り雨)のせいなのか,心によぎる一抹の寂静感・・.そして同時に感じられる奇妙な懐かしさ.何だろう,このじわじわと湧いてくるような既視感(デジャヴュ)は・・不思議と愛おしくも思えてくる.いかにも蕎麦の似合う町(でも店舗数少ない).きっといい出会いがあるに違いない.

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そう確信してくだんの店に歩を進める.そのお店は「蕎麦 森乃庵」さん.午前11時の開店と同時に暖簾を出しにいらした店主さんに『よろしいですか』と挨拶をしつつ入店する.即座に出てきたお茶と交差するようにすぐさま注文,『もりそばをお願いします』と.その日の天候や季節柄(2月です)を考えれば温かい蕎麦にいきたいところだが(基本は「かけ蕎麦第一主義」!),あらかじめインターネットで当店において提供される蕎麦の特性を確認済みであったため,迷いはなかった(もっともお品書きを見て決めることの方が少ない.蕎麦屋の私は迷わない^0^/).

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こちらの蕎麦は色が黒めの田舎風平打ち麺(手打ち)なのだ.となればもう「もり」の一択.少なくとも冷たい蕎麦系の方がその真髄を味わいやすいだろう.お品書きの中にはおろしそば(冷)もある.うーん,こちらも捨てがたい.マイベスト蕎麦の不動の第5位(ちょっと微妙か?)にランクするおろしそば・・.が,今日は「もり」.「もり」である(森乃庵だけに?).しょうもないオヤジギャグを脳内でくり広げていると間もなくそのもりそばが登場する.

『おお!』.ネットで見た以上の迫力.やはり本物はすごい.普段はやや白めの色の細い麺線を愛する筆者であるが,時折恋しくなるのがこうした野趣あふれる風の蕎麦である(・・迷ってるじゃねえか).そのビジュアルから石川美人というよりかは石川ダンディといった貫禄だろうか.

箸を手に取り,いざ実食!まずは蕎麦だけを手繰る.『おお,蕎麦だ』.噛み応えのある蕎麦を味わいつつ,当然のことが脳裏にこだまする.結構な量をそのまま頂く.ついでつゆを味わってみる.濃いめのつゆは実に力強く,これなら蕎麦に負けはしない.出汁にこだわりがあるらしい.鰹本節,雑節,昆布を使用しているとのこと.さあ,そのマリアージュやいかに!少しだけつゆに浸して軽快にすする(バナナマンの日村さんには遠く及ばないが・・)4).『ズズッ!』.見事なマッチングである.この蕎麦にしてこのつゆ,このつゆにしてこの蕎麦.かけ蕎麦にも同様のことが言えるが,この蕎麦とつゆの相性こそが蕎麦食の極意なのである.

研究に研究を重ねた結果なのだろう・・まさに夫婦和合な仕上がりである(独断だがつゆが妻).7割ほど食べ進めたところで薬味のネギを蕎麦に絡めて食してみる.ネギの辛味がチクっと舌に刺さり,これまたいい具合.同様にわさびでもやってみる.こちらもまたいい感じに刺激的である.それなりにボリュームのある麺量であったが,しっかりと味わいつつも10分ほどで完食.

同時に提供された熱々の蕎麦湯をつゆ猪口に注ぎ入れきれいに飲み干す.その後,蕎麦湯だけを飲みながら,お品書きを再確認.温かい蕎麦ももちろんある.10代の頃なら冷温両方いけたかな・・?(オジサンはもうダメです.いろんな意味で(涙)).よく見るとにしんそば(自家製にしんとのこと)5)を発見!やはり京都の食文化を踏襲しているのがこの地域のようである.

お会計を済ませてお店を後にする.もちろん『おいしかったです』の一言は必ず置いてくる.『おや?』.雨が上がって晴れ間がのぞいているではないか.まさにおいしい蕎麦を頂いた後の爽快感を天が体現してくれているかのようである(基本,晴れ男).

勢力図的には石川県はうどんと聞いたことがある(北陸地方で蕎麦と言えば福井県らしい.越前そば).しかし,石川県の蕎麦もよいではないか.そもそも准うどん県(名称に根拠はありません)の群馬県でさえ,うまい蕎麦屋は数多く存在するのだから.今日はやたらとダンディな蕎麦に巡り合った.次に来るときは石川美人風の蕎麦を見つけたいな・・.『少し寒いけど一駅歩くか』.寒空の下でも次なる蕎麦への熱い期待があれば難なく歩ける・・そんな思いの筆者であった.


1) 諸説あるらしい.北陸物語Webサイトhttps://monogatari.hokuriku-imageup.org/ 記事一覧:金沢で「たぬきうどん」を頼むと? https://monogatari.hokuriku-imageup.org/news/2014/07/12/13416/
2) 刻み油揚げと九条ネギの入ったあんかけ仕立てのもの.
3) 具のないあんがかかった蕎麦.葛粉でとろみをつけたかけ蕎麦とも言える.あんかけラーメンや五目あんかけ焼きそばなどから連想してはいけない.絶対に.
4) お笑い芸人のコンビ「バナナマン」の日村勇紀さん.ある種のネタなのかもしれないが,グルメ番組等で披露される麺類系の吸引力は強力そのもの.
5) にしんそば.京都の「松葉」(もちろん訪問済)が元祖とされるにしんの甘露煮をのせた温蕎麦.冷しもある.

参考文献
新島 繁 (2011).蕎麦の事典,講談社学術文庫

(レポート提出/葉乃井)

【店名】蕎麦 森乃庵

【読み】そば もりのあん

【電話番号】076-288-7971

【住所】〒929-0323 石川県河北郡津幡町字津幡二536-1

【アクセス】JR中津幡駅からすぐ.

【営業時間】午前11時~午後19時

【定休日】火曜定休(休日の場合は営業)

【ひとり分の平均的な予算】1000円~2000円

【予約】お問い合わせください

【クレジットカード】

【個室】無

【席数】24席(テーブル4席(4人掛け),カウンター8席)

【駐車場】有(6台)

【煙草】ダメ(はり紙あり)

【アルコール】

【店のホームページ】無

【地図にリンク】https://goo.gl/maps/wHeyMGovkBfV8Eqy9

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