蕎麦乾麺のランキング、おいしいそば乾麺大賞2022 – 日本蕎麦保存会

【ごあいさつ 日本蕎麦保存会・片山虎之介】(名前をクリックすると公式HPにリンクします)
日本一おいしいそば乾麺大賞、グランプリが決まりました。日本蕎麦保存会が実食して審査した、ベスト10を発表します。
「おいしいそば乾麺大賞」は、本当においしいそば乾麺を、皆さんにお知らせすることで、そば好きの方を増やしたいという願いを込めて実施している賞です。
日本蕎麦保存会が主催して、今年で3年目を迎えます。
審査方法は、Webサイト『日本蕎麦保存会jp』で募集して、全国の皆さんから、お気に入りの乾麺を推薦していただき、それらをエントリーの対象として審査します。
審査員は、日本蕎麦保存会が認定した蕎麦鑑定士と、代表の片山虎之介です。
今回は、10人の蕎麦鑑定士による予備審査の評価を参考にして、片山虎之介が実食してランキングを決定しました。
毎年、そば乾麺は進化しています。
新しい味の製品が登場して、人気の落ちたものは消え、世代交代のドラマが展開しています。
それでも何年も勝ち残る、強者(つわもの)もいます。
手元にストックしておいて、いつでも食べたいときに食べられる、素晴らしいそば乾麺の世界を、どうぞお楽しみください。
★このページの一番下に、そば乾麺を推薦していただくメールフォームがあります。あなたの大好きなそば乾麺を推薦してください。
発表します。栄光のグランプリを受賞したのは、このそば乾麺です!
第1位
妻有そば
玉垣製麺所
【概評】
3年連続でグランプリを受賞した「妻有(つまり)そば」。そのおいしさは、現在のところ並ぶものがありません。
妻有そばは、茹で時間5分を推奨しています。
大きな鍋に大量の湯を沸騰させ、一人前の乾麺を投入して、指定通り、5分茹でたそばの写真が、以下のものです。麺の中に芯も残らず、理想的な状態に茹で上がりました。
茹でる前の乾麺の太さは、1.1mm×1.7mm。一般的な乾麺の中では、やや細めに分類できる太さです。
それが規定の時間通りに茹でると、1.9mm×2.1mmになりました。
麺がどのくらいの太さなのかは、おいしさに直結します。麺の太さ、細さが、コシや、表面の滑らかさと一体になって、そばの食味を形作るのです。
そばは、目で見て、ある程度、食べたときの味や食感を判断できる珍しい食べ物です。それは食べる人が、今までいろいろなそばを食べたときの経験を思い出すからです。
「しなやかにカーブしているから、喉越しが良いに違いない」とか、「表面がつややかだから、舌触りはなめらかだろう」などと予想できるのです。グランプリを受賞したこの麺の感じが、おいしいそばの見本です。
なお、茹でる前と後の写真の倍率は、全て同じに統一してあります。
食べたときの印象は、まず舌、口中に、すべるような滑らかさを感じます。
細くて、弾力のある麺は踊るように跳ねます。
歯を当てると、一瞬、逃げるような感覚があり、ほぼ同時に、気持ちの良いグニグニ感がはじけます。これらの食感は、海藻の“ふのり“を、上手に使っていることから生まれる魅力です。
歯を当てて、軽く力を入れると、いさぎ良いくらい、すっぱり切れます。そばは、細く長くつながるものですが、切れ味は重要です。すっぱり切れるから「そば」なので、小麦の麺なら、引っ張っても簡単には切れません。
ましてや噛み切ったときに、歯にネチネチと粘りつく「歯ぬかり」は、そばの天敵です。
妻有そばは、そういう不快な食感はまったくなく、食感のバランスが非常に優れています。
時間が経過してものびにくく、ツルツル感が持続します。ボソボソの食感になりにくいのも妻有そばの重要な個性です。
海藻のふのりを使った乾麺は、意外に多いのですが、これほどセンス良くバランスが整ったそばは、他にありません。
《原材料/小麦粉(国内製造)、そば粉、海藻、食塩、加工でん粉》
第2位
手折り八割そば
神田まつや
【概評】
『神田まつや』は、東京の手打ちそばの名店です。創業は明治17年(1884)ですから、実に138年の歴史を積み重ねてきた老舗です。
あまり知られていませんが、その名店が、そば乾麺を販売しています。長い歴史に恥じない、素晴らしいそば乾麺。一般のスーパーでの取り扱いはありませんが、お店のサイトから、通販で購入することができます。
『神田まつや』のそばの品質に対するこだわりは、当然ながら、並大抵のものではありません。名店にふさわしい乾麺を、独自の製法で完成させて、販売に踏み切りました。
茹でる前の乾麺の細さは、1.1mm×1.8mm。茹で上がったときの太さは、1.9mm×2.5mm。麺の太さは、お店で提供しているそばよりも、やや太めというより、幅広です。この幅広の形状が、実はおいしさに直結します。幅の広い部分が舌に接触することで、そばの味が、より強く、味蕾に感じとれるようになるのです。
写真を見てもわかるように、乾麺にしては珍しく、「角が立った」麺になっています。この「角」も重要です。エッジの効いた「角」が、舌や口腔内の粘膜に当たることで、接触感覚の刺激が強まり、食感の魅力が倍増します。手打ちの店が、「角の立ったそば」を目指すのは、そうした理由から。乾麺でこれを実現させた『神田まつや』のそばは、高く評価されて当然といえます。
食べた感想は、なめらかで、しなやか。それでいてコシがあり、喉越しも秀逸。歯を当てると、気持ち良く切れて、歯ぬかりは、ありません。
玄そばのアクを入れることで、そばらしさを出す演出もされていません。スッキリした食味で、江戸そばの名店にふさわしい、粋なそばに仕上がっています。
《原材料/そば粉(そば国産)、小麦粉、小麦たん白、食塩》
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第3位
信州戸隠そば
信州戸隠そば(株)
【概評】
長野県(信州)はそば処として知られていますが、その信州を代表するそば乾麺が、この「信州戸隠そば」です。信州戸隠そば(株)の社名を冠した、まさに誇りをかけた自信の一品ということができるでしょう。
麺の太さは、茹でる前は1.1mm×1.3mm。5分茹でたあとは、1.3×1.5mmになり、そばとしては理想的な太さになります。
さまざまな条件をクリアしていれば、このくらいの太さというより、細さが、食感や味を楽しむ上で、最も洗練された印象を与える麺になります。
食べてみると、そばとしての完成度の高さを実感します。
喉越し、コシのバランスは完璧で、つながりも強すぎることもなく、頃合いのところでふっつり切れます。
アクは抑えられ、そばの甘みがしっかり感じとれます。
非の打ちどころのないそば乾麺という形容が似つかわしい、魅力的なそばに仕上がっています。
《原材料/そば粉、小麦粉、食塩、そばの葉粉末》
第4位
新そば
玉垣製麺所
【概評】
手打ちで仕上げた新そば特有の魅力は、非常に繊細で、手打ちでさえ、その魅力を完全に伝えることは難しいものです。それがそば乾麺で、どこまで再現できるかと思いながら食べてみました。さすがに、グランプリを受賞した「妻有そば」のメーカーであるだけに、新そばの雰囲気を保つことに成功していると感じました。
その方法としては、1、そばのアクを適切なレベルに抑えること。2、材料の夏そばの長所を引き出すこと、の二つがポイントではないかと思われます。
そば乾麺にアクをある程度入れることは、そばらしさを演出する一つの方法ですが、新そばには、玄そばのアクは似つかわしくありません。なぜなら新そばのアクは、玄そばの外皮より、むしろ甘皮にあるものなので、そちらを強調することで、新そばらしさを感じさせることが可能になります。茹でる前、茹でた後の麺の状態を見ると、この方法が講じられているであろうことが読み取れます。
また、二つ目のポイントとして書いた、夏そばの長所を引き出すという点ですが、夏そばの長所はどこにあるかというと、秋そばのような強い風味がないところにあると私は思います。逆説的ですが、風味が乏しいことが、かえって夏に味わうそばにふさわしい清涼感を引き出すのです。つまり暑さに疲れた体には、癖のないさっぱりした食味のそばが食べやすく、おいしく感じられるということです。
北海道の夏そばを原材料に採用しているこの「新そば」を味わったときの清涼感は、まさにそれが成功していることの証左だということができます。
茹でたあとの太さは、1.9×2.2mmで、「妻有そば」とほぼ同じ。バランスの良い食感を持ち、色味はやや明るめの印象を受けます。
夏新の時期だけに販売される、期間限定商品です。
《原材料/小麦粉(国内製造)、そば粉、海藻、食塩、加工でん粉》
⬇︎そば乾麺を電子レンジで、美味しく茹でる方法を、ユーチューブに動画アップしました。ご覧ください。
第5位
つるつる雪んこそば
GOLD
桝田屋食品
【概評】
このそばのメーカー桝田屋食品の製品としては、他に普及品に位置付けられる「雪んこそば」があります。これも人気のそばなのですが、「つるつる雪んこそばGOLD」は、それとはまるで違った食べ物という印象さえ受けます。
二つの製品とも、海藻のふのりを入れたそばなのですが、「つるつる雪んこそばGOLD」は、ふのりの効果がむしろ抑えられていて、自然なそばの感じが前面に出ています。
それでいながら、ふのりは、必要にして十分なだけの働きをしていて、つるりとした喉越しの良さをサポートしています。そういうところが好ましく、高級品のイメージに結びついているのではないでしょうか。
茹でる前の乾麺は、1mm×2.2mm。4分30秒、茹でた後は、1.5mm×3mm。はっきりした幅広の麺です。この平たい麺の表面積の大きさが、舌に穀物の味を強く訴えかけます。
同時に強い存在感を主張し、それが食べた後の満足感につながります。
原材料を見ると、そば粉がいちばん最初に書かれていますが、食べた印象は、むしろ小麦粉の感じが強いようです。それは小麦粉と同時に、小麦たんぱくを入れているため、それらを合算すると、小麦粉の食感が強調されるためだと思われます。これは良い意味で、小麦粉の力が、そばのおいしさを底上げしてくれている状態です。
個性が際立つ、優れたそばの一つでした。
《原材料/そば粉(国内製造)、小麦粉、食塩、海藻、小麦たんぱく》
第6位
そば
カネス製麺
【概評】
今回ノミネートされた製品の中で、特に興味深かった製品の一つが、このそばでした。なぜなら、原材料を見ると、そば粉の配合割合が1割未満でありながら、しっかりおいしいそばに仕上がっていたからです。
商品名は「そば」。バラ売りではなく、1.8kgという大量のそばが、箱に詰められて販売されています。
製造したカネス製麺株式会社は、皆さんご存じの、手延そうめん「揖保乃糸」のメーカーなのです。明治40年(1907)創業の歴史ある会社です。
1.8kgの箱詰めから100gの価格を割り出して見ると、なんと約59円。驚きのコストパフォーマンスです。業務用としても十分に使えるそばだと思います。
もちろん業務用と評価したのは、価格も廉価ですが、いちばんの理由は、おいしいからです。
茹でる前の乾麺は1mm×1.5mm。茹でた後は1.8mm×2.1mm。それなりの太さを持ったそばになります。
食味は、きちんとコシがあり、これだけ小麦粉を使っていながら、歯切れもすっぱり気持ちが良い。小麦粉の味を感じますが、そばのアク、味、香りが、小麦粉の味に蓋をして、そばらしい食味にまとめています。お見事と言うしかありません。
乾麺についてランキングをしているサイトなどで、おいしいそば乾麺の見分け方として、原材料の表示を見て、そば粉の多い製品を選ぶことをすすめているところがありますが、それはまったくの間違いです。
そば乾麺の食感を左右するのは、主に小麦粉であり、味、香りをコントロールするのは、主にアクの使い方です。そば粉がたくさん入っていさえすれば、おいしいそばだと書いているようなサイトは、あまり信用しない方がいいかもしれません。
このそばを食べると、そのことがはっきりわかります。
カネス製麺株式会社の「そば」という製品は、そばはもちろん、小麦粉を熟知したメーカーが作った、そば乾麺の傑作の一つだと評価できます。
《原材料/小麦粉(国内製造)、そば粉、食塩》
(そば粉の配合割合、1割未満)
第7位
白梅特選 出雲そば
児島製麺
【概評】
出雲そばという郷土そばの特徴の一つが、黒い色にあるように、この乾麺も、かなり濃い色をしています。一見、アクが強そうに見えますが、それほどではありません。どちらかというと食べやすいそばで、汁も付いていて、痒いところに手が届くそばということができるかもしれません。
麺のつながりは良く、なめらかな食感が楽しめます。そばの甘みも感じられ、良くできた乾麺ということができます。
茹でる前の太さは1.6mm×1.7mm。5分間茹でた後は、2.3mm×2.5mm。ほぼ断面は正方形のそばで、食べたときの量感にも満足できます。
付属している汁は、180〜200ccの水、またはお湯で薄めて使うようにと記されています。甘みが強く、醤油感も強い、いわば重い汁です。出雲そばの強い個性に合った、麺とは相性の良い汁だということができるでしょう。
《原材料/小麦粉(国内製造)、そば粉、食塩》
第8位
三瓶そば
湯浅英行
【概評】
個性の強いそばです。三瓶在来種の玄そばを9割使った、そば乾麺で、製造する量は多くないため、一般的なスーパーでは買えません。
しかし、在来種ならではの、独特の厚みのある味を感じることができる魅力的なそばです。
在来種のそばの風味の特徴は、完熟した実と、早刈りしたような未熟な実が混在する、複雑な味にあります。
それに対して、一般的な改良品種のそばは、そういった厚みはありません。完熟したそばの味、一種類だけで完結します。
在来種のそばが、ソプラノ、アルト、テノール、バスなど、厚みのあるハーモニーが楽しめる味だとしたら、改良品種のそばは、テノールだけの歌声のように、シンプルな味になると理解してください。
茹でる前の乾麺の太さは1.1mm×1.7mm。5分間茹でた後は、1.8mm×2mm。それなりの太さはありますが、比較的、切れやすいので、茹で上がった麺を水洗いするときなど、ていねいに扱うよう注意してください。
アクも強いけれど、在来種のそばの甘味は、しっかり楽しむことができます。
《原材料/そば粉(そば 島根県産)、小麦粉(小麦 国産)、食塩》
第9位
信州そば
そばぶるまい
ヤマサYH
【概評】
指定通り7分茹でた麺は、優しい食感で食べやすい印象でした。喉越しも良くて、歯を当てると気持ち良く切れます。歯ぬかりも、気になるほどではありません。
味も強すぎるという感じではなく、全体にバランスの整ったそば乾麺です。
茹でる前は、1.1mm×1.4mm。茹で時間の表示は、6〜7分と、やや長めです。7分間茹でた後は、1.8mm×2mm。量感のある麺で、若干、茹で太りのする麺という印象を受けました。
出荷時の麺は、一応、ラップに包まれていますが、上下が密封されていないため、保存する際は、密閉できる容器や袋に入れるようにと記されています。
《原材料/小麦粉(国内製造)、そば粉、食塩》
第10位
雪んこそば
桝田屋食品
【概評】
製造時に海藻のふのりや、やまいもなど、つるつるした食感を生み出す材料を練り込んだ、食感を重視したそばです。
茹でる前の太さが0.9mm×2.1mm、5分間、茹でた後は1.5mm×3mmになるという、はっきりと平麺の形状をしたそば。舌に当たる幅広の麺の感触が記憶に残ります。そしてその平麺がとてもつるつるしているので、他のそばとの差別化がはっきりできていて、個性を主張するそばです。この食感が気に入った人は、病みつきになるでしょう。
舌触りが柔らかく、とてもなめらかな喉越しを楽しむことができます。
そば乾麺は実際のところ、自分で食べてみないとわかりません。好きか嫌いかは、本当に微妙な部分で分かれますので、興味が湧いた方は試してみてください。
《原材料/小麦粉(国内製造)、そば粉、小麦たんぱく、食塩、海藻、やまいも粉、増粘剤(グァーガム)、炭酸ソーダ、リン酸カリウム、炭酸カリウム》
そば乾麺は、茹で方しだいで、おいしくもまずくもなります。正しい茹で方を知ってください⬇︎
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【みなさんがお好きなそば乾麺を推薦してください】
「おいしいそば乾麺大賞」は、そば好きのみなさんの推薦をもとに、ノミネートする乾麺を決めています。どうぞ、みなさん、下のメールフォームから、イチオシのそば乾麺を、ご推薦ください。来年度のランキングが、あなたの推薦で決まります。