手打そば 一期一会(群馬県高崎市)上州群馬で味わう個性派の更科蕎麦!
- By: Reporter
- カテゴリー: 群馬県のおいしいそば屋, 関東地方のおいしいそば屋, 関東甲信越のおいしいそば屋, 葉乃井, おいしいそば屋の食べ歩きレポート
更科蕎麦.それはソバの実の中心のほぼでんぷん質だけでできている部分のみを挽いた粉で打たれる蕎麦.色が白く,ビジュアルの美しさと舌ざわりのよさは格別とされる逸品である.通常の二八蕎麦や十割蕎麦,あるいは田舎蕎麦に比べると蕎麦自体の風味や香りは控えめなものになるため,蕎麦好きの人でも評価は分かれるものでもあるが,筆者は実は更科蕎麦が好きである.というか惹かれてやまない.ぶっちゃけぞっこん.東京のあの老舗1)でも体験済み.4級受講時の蕎麦専門店2)でもお気に入りの一品である.理由は何だろうか・・やはりそれは見目麗しいその姿に他ならないだろう.遠目には素麺か冷麦に見えてしまうかもしれないが,正面切って見ればその限りではない.同じ白さでも透明感のある白さなのである.神々しい白さと称してもよいかもしれない.とにかく美しいのだ.マジで.
そんな更科蕎麦の中でも個性的な逸品を提供してくれるお店が上州群馬県の高崎市にある.JR高崎駅から道のりとしては6kmほど,丘陵地帯の頂上付近と言えるだろうか.そんな場所にそのお店はある.名前は「手打そば 一期一会」さん.「一期一会」.歴史的には茶道に由来する四字熟語である.その機会はくり返されることはない.一生に一度の出会いであるとの心得で相手をもてなすという意.何とも深い屋号である.11時の開店に合わせてひたすら丘陵を登ってきた.緩やかな傾斜ではあるが,筋力不足な中年には少々キツい(少しは筋トレせなあかんな).少し上がった息で暖簾をくぐる.『こんにちは』.『いらっしゃいませ~』との声とともに席に案内される.
ご主人の『お決まりであればご注文を・・』との言葉に『さらしなそばをお願いします』と注文する(基本,食べたい品は決めてから訪問する.我迷わず^0^/).お茶を飲みつつ,お品書きを観覧する.ゆずきりそばに茶そば,田舎そばもある.なるほど,これらを合わせて三色そばや五色そばにするんだな・・.おや,甘味(しるこ,ぜんざい)もある(筆者は実は甘党).実に豊富なお品書きである.
そうこうしているうちにたちまち更科蕎麦の登場.『お待ちどおさま』の声かけに脳内でドーパミン3)が爆発する.『おおっ!!』.その姿たるや神.神である.平打ちタイプの更科蕎麦.普段なじみのある細打ちと違ってこれまた新鮮.思わず見入ってしまう.「上州美人」というカテゴリーは存在しない.だから,その比喩は使えない.しかし,美人ではある.そう群馬にだって個人としての美人はいるはずだ.それでよいではないか(・・2人くらいいた気がする).
さあ,頂こう!まずは蕎麦だけを味わってみる.すぐにのみ込まずよく噛んで味わう.ほのかな甘み.一発KOなみの多幸感,恍惚感.見事である.しばしそのまま食べ進める.次いでつゆのみを味わう.『・・うん,いい感じ』.さあ,合わせてみようじゃないか.つゆに少し浸して今回はなるべく上品にすすってみる(気分的に軽快にとか豪快にいきたい感じになれない).『・・ズ・・ズ・・ズ・・』.ナイス・マリアージュ!井之頭五郎さん4)の言葉を借りれば『一目惚れならぬ一食い惚れ』である.
薬味に目を移すとネギ,わさび,大根おろしのトリオが鎮座している.いい蕎麦屋の薬味には大根おろしがある.かの蕎麦の伝道師の言葉の通りである.6割ほど食べ進めたところでそれぞれの薬味を試してみる.まずは大根おろし.なるべくつゆには入らないように上手に蕎麦に絡めて手繰る.絶妙なマッチングである.もともと大根自体が好きな筆者としてはうれしい薬味である(そのままかじりつきたいくらい好き).次いでネギ,わさびとその刺激的なマッチングも楽しむ.程よい麺量ではあったものの,たちまち試合(食事)は終盤戦.
一片も残さずきれいに完食する.正味5分.幸福な時間は刹那のように終わる.蕎麦湯を飲みながら,少しだけ余韻に浸る.すごい美人さんと・・,いや外見だけの話ではない(言い直そう).すごく好きな人とつかの間のデートを楽しんだかのような気分である.お会計を済ませてお店を後にする.『ごちそうさまでした.おいしかったです』の言葉は忘れない(絶対に).
外に出て再び屋号の看板を眺めてみる.「一期一会」.改めて深い言葉である.「人生100年時代」・・なんてフレーズを最近よく耳にする.それは長いのか短いのか.あるいはそれでよいのかわるいのか.そんな時間の中で人はどれほど得難いもの願わしいものに出会えるだろうか.出会っているだろうか.今日の「さらしなそば」との出会いもある意味「一期一会」である.ふと脳裏に会いたい人の顔が浮かぶ.もう一度会いたい人の顔が.・・柄にもなくやたらと感傷的になってしまったなと頬を叩いて我に返る.「一期一会」.必ず明日がやってくるとは限らない.今日一日の価値は皆等しいのだ.どこかで聞いたような言葉を反芻しつつも筆者の胸中にはある確信が生じていた.このお店との縁は一期一会ではないと.出会いは偶然かもしれない.しかし,再会は純然たる意志だ.再び相まみえる決意を固めて帰路につく筆者であった.
注
1) 総本家 更科堀井(麻布十番本店ではなく立川店だけど・・).本店にも行きます.
2) そば処うちだ(群馬県高崎市)
3) ドーパミン.中枢神経系に存在する神経伝達物質で幸福感ややる気を高める効果がある.
4) 孤独のグルメ.久住昌之原作のテレビドラマ.松重 豊さん演じる「井之頭五郎」が仕事で出向いた街々で思うままの食事をする物語.グルメに関して時々絶妙な名言が炸裂する名作.
参考文献
新島 繁 (2011).蕎麦の事典,講談社学術文庫
(レポート提出/葉乃井)
【店名】手打そば 一期一会
【読み】てうちそば いちごいちえ
【電話番号】027-388-5077
【住所】〒370-2107 群馬県高崎市吉井町池2062-1
【アクセス】JR高崎駅から約6km.車かバスが現実的.
【営業時間】11時から18時
【定休日】木曜日.変更の場合もあるのでお問い合わせください.
【ひとり分の平均的な予算】1000円~3000円
【予約】お問い合わせください
【クレジットカード】
【個室】有
【席数】42席(テーブル席や座敷席など)
【駐車場】有(20台ほど)
【煙草】ダメだと思う
【アルコール】有(酒,ビール,水割り etc.)
【店のホームページ】無