関東地方のおいしいそば屋

勤務先の近くにある「浜町かねこ」の店主が修行していたお店、神楽坂の「蕎楽亭」は、常々一度訪れたいと思っていたお店です。

何度か土曜日に行ったことはありますが、いつも店頭に多くのお客さんが並んでいて、毎回諦めていました(並ぶのが大嫌いな私です)。

飯田橋駅方面から神楽坂を上り、左に折れて少し行った奥まったところに蕎楽亭はあります。開店時間(11:30)の15分前に店の前に着いたのですが、人ひとり並んでいなかったので、30℃超えの暑さの中、汗だくになりながら近所をぶらり。細い坂道が縦横に走るこの辺り、歩くには疲れそうですが、生活圏としてはいい雰囲気です。


10分ほどぐるりと回ってお店に戻ると、この間に3組7名のお客さんの列ができていました。

店頭には入口に小さな木製看板と、足元に行灯があるのみで、暖簾はありません。なんとも殺風景な店構えがいいではありませんか。

開店時間を5分ほど過ぎて、いよいよ店が開きました。店内は入口に対面して厨房が横に走り、その手前にカウンター席がずらりと並んでいて、まるでお寿司屋さんのよう。

先の3組が皆左にあるテーブル席に案内されたので、必然的に私はカウンターの一番隅の席に通されます。後ろに並んでいた1人客の女性は私の隣に。なるほど、端から詰め込まれていくということですね。この店の人気ぶりがわかります。

おしぼり、お茶と一緒に手書きのメニューを渡されます。天ざるを食べるつもりだったのですが、「天ざる」(2400円)の隣に見つけた「季節の天ざる」(2400円)が気になりました。違いを聞いてみると、普通の天ぷらはえびとアナゴ、季節の天ぷらは現在、鮎と桜えびとのこと。迷いに迷って「季節の天ざる」をチョイス。


隣に座った女性客は、小盛のトマトそばとだしまき玉子を注文。だしまき玉子はハーフもできるそうですが、彼女は普通サイズ(卵3個分)を頼んでいました。なんとも頼もしい女性です。

さて、まず上がってきたのが鮎の天ぷら。まるで泳いでいるように立てられた鮎天に、しし唐、なす、舞茸の3品が添えられています。「浜町かねこ」の鮎天も立てられていましたが、やはり蕎楽亭ゆずりでした。横長の皿の一方は空いていて、あとから揚げられる櫻海老がここに置かれるようです。鮎天にはたで酢も付いていました。


間をあけずにそばが登場。こんもりと盛られた細い麺。このクラスのお店になると、そばの締め方とか水切り具合だとかはもう基本中の基本なんでしょうね。見た限りでは完璧。顔を近づけると、そばの香りが鼻を突いてきて、口にする前からすでに美味しい!

数本を手繰って啜り込みます。やはり麺自体が美味しい。水そばでもいけそうなほどに美味しい。細いのにコシがしっかりしています。麺の表面の多少ざらつき感はのど越しを邪魔するものではありません。また、噛めば噛んだで、歯を通してもそばの味が伝わってくる感じです。長さも、箸を顔の高さ辺りまで上げれば山から離れるので、ストレスになりません。

小さめのつゆ壺からそば猪口に入れるとき、かすかに出汁の香りがしましたが、控えめ。口につけてみると、甘さも適度で私の好きな感じだし、塩味も程よい。ほのかに椎茸(?)のような味もしますが、椎茸を使っているのでしょうか。

そばをつゆにつけて啜ります。ダシの魚臭さはなく、蕎麦の香りがしっかりと立ってきます。ネギや大根おろしをつゆに入れても、そばのうまさは隠しきれません。つゆや薬味をここまで計算しているのだとしたら‥‥! それほどのバランスの良さでした。


鮎天はせっかくなのでたで酢でいただきます。頭からサクッと噛むと、瞬間に鮎の香りで満たされます。三つ葉と一緒に揚げられている桜えび天の油切れもよくサクッと揚げられています。桜エビと三つ葉の香りの二重奏に思わず笑みがこぼれてしまいます。しかし、これらもそばの美味しさを邪魔するものではありませんでした。

鉄瓶で出されるそば湯は、熱々で、良い加減にとろみの強いもの。白濁の中にも星を見ることができるのは、あまり他店にはないそば湯です。美味しいそば湯でした。

期待以上のそばでした。気の置けない友人とそばを、そば屋を語るにはもってこいのお店でした。ただ、私にとって普段使いにはできないお店だというのも間違いないところです。

お勘定時、その場に花番さんが来てくれるのもうれしいポイントの一つです。
ごちそうさまでした。

(レポート提出/木曽馬ジョージ)

【店名】石臼挽き手打ち 蕎楽亭

【読み(ひらがな)】いしうすびきてうち きょうらくてい

【 店の電話番号 】03-3269-3233

【 住 所 】東京都新宿区神楽坂3-6

【 アクセス 】東京メトロ飯田橋駅B3から4分、JR飯田橋駅西口から5分

【 営業時間 】(月)17:00~21:00、(火~土)11:30~15:00、17:00~21:00

【 定 休 日 】日曜、祝日

【ひとり分の平均的な予算】昼   夜

【 予 約 】夜のみ1日3組まで

【クレジットカード】不可

【 個 室 】なし

【 席 数 】30席(内カウンター10席)

【 駐 車 場 】なし

【 煙 草 】完全禁煙

【アルコール】日本酒、焼酎、ビール

【店のホームページ】http://www.kyourakutei.com/

どんごろやす
蕎麦 降松(くだまつ) (山口県下松市) 小山の中にある古民家改装の蕎麦屋

下松市東部の山あいにある、古民家を改装した今年ちょうど開業十年になる蕎麦屋さんです。国道2号線やJR …

のほほんと。
蕎麦割烹 黒帯(愛知県名古屋市) 十割そばと二八蕎麦の食べ比べ

ラストオーダー30分前の13:30頃に店舗に到着。店内は満席で、前に3組のお客様が待っている状態でし …

ルーモス
蕎麦割烹 黒帯(愛知県名古屋市)伝説の蕎麦職人の味を受け継いだ蕎麦割烹「黒帯」で希少種「幻の蕎麦」をいただく

以前、鶴舞店へ伺った「蕎麦割烹黒帯」さん。特徴ある蕎麦をもう一度食べてみたいと、今回天白本店へ伺いま …