生そば ちく満(大阪府堺市)豊かな歴史と伝統文化の街、堺市で味わう古のせいろ蕎麦 

大阪府のおいしいそば屋

世界最大級の墳墓である仁徳天皇陵古墳をはじめとする百舌鳥古墳群は世界遺産登録されました。茶道を大成した侘茶の祖、千利休、女性の自由と自立を求めた与謝野晶子など多くの偉人ゆかりの地でもある堺。他にも包丁や自転車、鉄道、鉄砲、線香、堺昆布など堺で生まれたものが全国へ広がるなど貿易都市や商業都市としても栄えた堺のお膝元にある【ちく満】そばは元禄8年(1695年)創業の超老舗蕎麦の有名店です。現在も堺市の中心地である大道筋は路面電車(地元ではチン電として親しまれています)が走り、老舗の和菓子店や超有名な堺の名店揃いの地域でぜひ近くの名店にも一緒に訪れてみていただきたい、お勧めのそば屋さんです。

すっきりした街並みに突然工場のようにも見える、古い日本家屋にも見える不思議な建物があり、一見してお蕎麦屋さんには見えない佇まいです。大阪の友人でも知らない人が多くお蕎麦自体も独特な唯一無二のお蕎麦です。地元民の私は、今までの人生で一番訪れているお蕎麦屋さんで(数百回以上)馴染みが深すぎて冷静にリポートしにくかったのですが、改めてじっくり味わってみました。

建物の割には入り口は左手に小さく暖簾が有り、くぐると直ぐに大広間がふすま越しに見えます。左手には製粉している機械が並びまさに工場に来たような雰囲気。朱色に塗られた補強用の鉄骨が目立つ廊下、堺のお線香や自転車の事など伝統産業を説明する看板もたくさん掛けられている廊下です。廊下を右に折れると右手に大きな広間が手前と奥とに分かれています。

レジ前にお店の方が立っておられ人数を確認されると同時に大声で自分の入るべき部屋とテーブルを番号で伝えられ、言われるがまま、その番号通りの靴箱に靴を置いて指定番号の席に案内されます。この時間は何故か少し素早くしないとダメなのかも??と初回の方は思われるかもしれないくらい一瞬の事ですが常連さんが多いので皆さん素早く行動されますが、ゆっくりでも問題有りません。因みにその廊下を真っすぐ行くと左手に階段があり混雑時に案内される2階へと繋がっており、踊り場に化粧室があります。

階段の右手は大きな厨房で、大きな鍋で茹でて、蒸されている様子がガラス越しに見ることが出来ますが、雰囲気的にずーっと見て居られる感じではないです。2階に案内されるときや、待ち時間があるときに見学するのは楽しいですし目立ちません。写真も撮っても今まで声を掛けられたことは有りません。

メニューはそばはサイズのみ選べます、以前は2斤と言うものも有りましたが、現在は、せいろそば1斤(いっきん)1.5斤(いっきんはん)とおかわりのみです。2斤があったときには、2斤を一気に頼まず、1斤先に頼んで、食べ終わりにおかわりを頼むのがツウの頼み方でしたが今は無くなっています。

アルコールを楽しむ方もいらっしゃいますが今はコロナ禍で中止中。通常はビールと日本酒があります。突き出しに出汁で残った鰹節とわさび、醤油がかかっており、これをグルグル混ぜて肴にするのがとても美味しいのです。何故かビールはほんのりぬるい・・・繁盛店ならではなのか?わざとなのか??それはわかりません。

何時も1.5斤(いっきんはん)を注文します。真っ白のユニフォームに真っ白の三角巾をされ、テキパキとお仕事をこなされる店員さんに【いっきんはん】と伝え到着を待ちます。現在はお願いしたらお水が出てきますが以前はお水の提供は殆どありませんでした。お子様連れには言われなくても供されていました。テキパキとされている店員さんは特別愛想はありませんが不愛想と言う意味でもありません。そば湯の提供時期を見計らったり、とにかく客の見えるどこかに立たれているので忙しなく感じる方もいらっしゃるかも知れません。

大広間は正座で座布団の上に座ります、足の不自由な方には低めですが座椅子のようなものを貸していただけます。奥には小さな滝も流れる庭が見え、光が差し込んで明るい店内です。大きな和室は畳ではなく葦簀のような籐のようなものか?定かではありませんが(昔の銭湯の床材)が前面に張り巡らされていて涼しげで清潔感があります。テーブルも朱に塗られていますが黒い部分も浮き上がっており彫刻刀で彫ったような懐かしい表面で艶は有りますがお店の雰囲気にもピッタリです。

注文してから供されるまで5分はかからないのが通常ですが、あまりにも混んでいるときは少し待たされます。

まず熱々の徳利(出汁入り)とキレイに洗われ濡れている白い布巾がセットで到着し、その後、四角いせいろ(蓋つき)の上に薬味と卵、出汁を入れるお椀が上手に乗せられて供されます。これは絶対セットでバラバラに到着することは有りません。あらゆる席から湯気がいっぱい出ていていかにも美味しそうな店内。

到着と同時に早口で『卵と溶いてから出汁を入れてください!』と言って立ち去りますが初回の人は聞き取りにくいかも知れません。お椀に卵を割り入れ(この卵は普通の大きな卵でうずら卵ではありません)よく溶いてから熱々の徳利に濡れた布巾を巻いて火傷しないように慎重に出汁を注ぎます。ただし、この時、徳利の出汁を全部入れると辛くなります。卵より少ないくらいでも十分ですが好みなので少し入れて見て混ぜて味を確認してから調整することをお勧めします。入れすぎるとお蕎麦の味が分かりにくくなり卵を追加しないとバランスが取れなくなります。因みに数人で来店しても一人1個の徳利で提供される訳ではないので、バランスよく入れないと誰かの出汁が足りなくなる恐れがあります!

お店の方のおススメは『卵をよく溶いて・・・』とのことですが、この時の溶き加減が最後の蕎麦湯を足したときの表情が全く変わるのでお好みでどうぞ。よく溶くと、かきたま汁のようなそば湯になり、余り溶かずにそば湯を混ぜると卵が大きく塊となって加熱されるので、表情を変えられるので楽しみの一つでもあります。薬味は関西なので青いネギの輪切り、割りばしで塗りつけられたようなワサビ。見た目はとても潔さを感じるお蕎麦です。

一度茹でてから蒸されているので歯茎だけでも食べられるのではないか?と思うほどふにゃふにゃで、蕎麦はのど越し、とか思う方はびっくりするようなお蕎麦です。私も未就学の頃、また30歳になる頃まで、このふにゃふにゃの蕎麦と全卵を溶いて出汁を入れるスタイルがどちらかと言うと好きではなく、苦手なお蕎麦の部類でした。うどんで言うと『伊勢うどん』のような、ふんわりした食感。噛むというよりちぎれる感じが正しいです。長く写真などを撮ってしまっていると本当にブチブチちぎれやすく食べにくいですが、熱々を食べるとつるつるとはいただけます。見た目は全体的に白っぽく粒感も無いです。蕎麦の風味も強くなく、塩で食べるようなスタイルは合わない気がします。(ありませんが)

蒸気が徐々に上がるとともに瑞々しさと艶っぽさは消え、見た目もパサついた感じになります。とにかく直ぐに食べて欲しい。薬味を入れる量やタイミングはお好みで。のちの蕎麦湯にも備えましょう!

30代になったころから、ここのお蕎麦の美味しさがようやく分かるようになりました。他のお蕎麦と比べるのではなく、ちく満そばは唯一無二でそば粉の風味を楽しむと言うより、濃く甘みも強めの出汁に全卵をしっかり溶いてこそのバランスで成り立つお蕎麦です。そのふんわりした食感や湯気や場から感じるエネルギーや歴史そのものを共有し感じる蕎麦。それが『ちく満』そばなのです。

どれか一つ欠けても成り立ちません。数百年前からこの地で愛され食べ続けられている珍しいお蕎麦、お店の雰囲気もさることながら地域の美味しい和菓子や歴史にも是非触れて帰っていただきたいお勧めのお店です。

そばが残り少なくなった頃に、頼まなくても瞬時に持ってきていただけるそば湯はこのお店特注の錫製の打ち出しの特徴的な湯桶に熱々で供されます。因みにこちらのそば湯は『かまくら』と呼ばれています。意味は不明ですが創業当時から変わりないと、こちらのお店の方がおっしゃっていました。本当に熱々なので出汁に残っている卵がいい感じに加熱され、かきたま汁のように花が咲きます。ここの『かまくら』で作るそば湯にはファンも多いです。この時、追加で卵を頼まれる方もいらっしゃいます。全部飲み干せるよう調整し、徳利に残った出汁も全て『かまくら(そば湯)』と平らげます。食べ終わりは提供された時と同様にすべての器をせいろの上に乗せておくと定員さんが持っていきやすいです。

食べた後は長居することなく、皆さんさっさと帰って行かれます。これも人気店ならでは、堺商人が忙しい合間に食べていた習慣が残っているのかもしれません。こちらはお土産も有りますので、茹でたお蕎麦を持ち帰り、記載されている通りに調理すると簡単に自宅で楽しむことが出来ます。

従業員さん同士が声掛けし、良く聞く言葉に『ぶんしょ!』と言う言葉があります。きっと常連さんは必ず聞いていて、初回の方も意味は分からず聞いていらっしゃると思います。いわゆる『はい!』と返答することを『ぶんしょ!』と言われているのです。この事は、お店の方が知り合いということも有り、昔聞いたことが有るのですが『聞承』と言う漢字から来ているとのことでした。『ぶんしょう』が『ぶんしょ』となったのか?これも創業当時からの掛け声らしく、経営陣もしっかりとした意味は分からないとのことですが、読んで字のごとく『聞きました、たまわりました』と言う意味が『ぶんしょう』になったのではないかと仰っていました。いずれにしても歴史やそば自体、そばとかまくら(そば湯)を楽しむまでの空気感、お店の雰囲気までの全てが、このお蕎麦の美味しさを構成しているのだと、数百回は食べている馴染みの有名店で最近感じることです。そして現在は、しばらく食べてないと必ずフラッと食べに行きたくなる、そんな魅力あふれる堺の名店、他では絶対味わえない珍しいお蕎麦が、ちく満そばです。

(レポート提出/Megumi.K)

【 店 名 】生そば ちく満

【 読 み (ひらがな)】きそば ちくま

【 店の電話番号 】072-232-0093

【 住 所 】堺市堺区宿院町西1丁1-16

【 アクセス 】阪堺電車『宿院駅』徒歩1~2分(170m)

       南海本線 堺駅 徒歩 10~12分

       南海高野線 堺東駅 徒歩 15~20分

【 営業時間 】10:30~20:00 (但し、コロナ禍は短縮営業)

【 定 休 日 】月曜日(祝日の場合は翌日休み)

【ひとり分の平均的な予算】880円~

【 予 約 】不可能

【クレジットカード】不明(多分無し)

【 個 室 】なし

【 席 数 】下手前広間 和座敷テーブル30席  

下奥広間 和座敷テーブル 20~26席程度

2階席  和座敷テーブル 20~30席程度  

【駐 車 場】 有 ( 普通車25 軽自動車 3 )

【 煙 草 】不可

【アルコール】有  ビールと日本酒 ノンアルコールビール

【店のホームページ】無

【地図にリンク】https://goo.gl/maps/x7c2HLepKB3RDitM8

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