そば切り荒凡夫(あらぼんぷ) (大阪府大阪市) 大阪の古き文化の香り漂う老松町できりりとしたそばを提供する気鋭のお蕎麦屋さん

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大阪市の中心部である北区西天満を東西に横切る老松通りから裁判所に向かい路地に入ってすぐのところにさほど間口は大きくないものの白い暖簾と店の入口上に掲げられた店名「荒凡夫」が大きく墨書された扁額様の木の看板が印象的な「そば切り荒凡夫」があります。老松通り一帯は、もともと大阪天満宮の表参道として発達したところで,学問・文化の街として知られ,現在は古美術商や画廊が多いところから古き文化の香りが漂っています。

一帯の昼間人口は多く,多彩な飲食店も軒を連ねており,手打ちそば店だけでも間近に3軒もあってなかなか競争の厳しい所です。
9月の残暑厳しき平日に,あらかじめ開店時間を調べた上で,その10分程前に到着したところ,先客は1組だけでした(もっとも付近は事務所等が多く,昼の休憩時間である12時頃にはあっという間に満員になりましたが。)。店の入口横には「本日のお蕎麦」として「北海道美瑛産 新蕎麦」と張り紙があり,毎朝,石臼で自家製粉しているとのことでした。まだ9月上旬のことでしたので,私の乏しい知識によれば,いわゆる夏蕎麦かなとも思いながら開店を待っていますと,ほぼ開店時刻にお店の入り口が開けられ中へ招じ入れられました。

お店の間口はそれほど広くなく,奥に向かって木のカウンター席が6~7席,奥に二人掛けのテーブル席が1席とこじんまりとした感じで,装飾はほとんどないものの清潔感のある白壁が奥まで続き,奥の壁際にはシートをかけられた石臼や麺棒などの道具類が置かれていました。カウンター席と向かい合う形で調理場があり,店主(30歳代後半とお見受けしました。)がそばを大きなゆで釜で湯がき,洗って,竹笊に盛り付けるなどの一連の動きを間近で眺めることができ,これからそばを食べようという気持ちが盛り上がります。

品書きを眺めますと,まず「そば三昧」が右端に書かれており目を引きます。そば三昧というとその内容はお店によっていろいろですが,この店のは添えられた説明文によれば,「二八・十割・粗挽き十割を半盛ずつ」となっており,迷うことなくまずそれをお願いしました。

他のメニューとしては,「もりそば二八(小盛)」,「ざるそば二八」さらに「ざるそば十割」となっていて,二八の「もり」と「ざる」の違いについて,店主に伺おうと思ったのですが,昼時のことで調理場の忙しさが見て取れましたのでまた次回の訪問時に伺うこととしました。他に気になったメニューとしては,「手挽き粗挽き十割」と「釜揚げの辛み大根おろしそば」などがありましたが,いわゆる種物や天ぷら類はありませんでした。なお,昼,夜,曜日によりメニュ-が違うようで,夜は鴨のつけ汁そばやそぱ掻きに加えアルコールや肴類も提供しているようでした。

ほとんど待つこともなく提供されたのは,「そば三昧」のざるそば二八(半盛り)です。そばは重厚な感じの竹笊の真ん中に山高に盛られ,そば猪口,小ぶりのそば徳利に薬味として山葵と塩が添えられています。そばはやや細めで,若干緑がかった薄茶色を呈し,ホシは見当たらず,ツヤツヤとした瑞々しい光沢を放ってきりりとした感じがします。

2,3本を箸でつまんですすりこむと,そばの清々しい香りが感じられ,そばの角が立っているのが分かるしっかりとした食感で,軽く噛むとふつりと切れます。添えられた塩を軽く一つまみそばの上にパラパラと散らして食べますとそばの香りはそのままに食感がよりしまった感じがします。

そばをそばつゆに浸す前につゆだけを少量なめてみますと,関西には珍しく濃い黒色で鰹節が強く効いており,昆布は使われていないのではないかと思わせる汁でしたがまろやかで生臭みなどはなく,そば湯で割れば味わい深いものになるだろうと思いました。そのつゆでそばをすすりこみますとそばとの相性が良く,口中でそばとつゆの香りや味わいが広がるように感じられました。半盛りですからあっという間に食べて終えてしまいますとそれを見計らったように,ざるそば十割(半盛り)が提供されました。

ざるそば十割は,先ほどの二八が盛られていたざるよりも黒味を帯びた網代編とでもいうのでしょうか,重厚な感じの竹笊の真ん中に山高に盛られて提供されました。

そばの太さや色味は二八と同様でツヤツヤとして長さも十分にあり,むしろ二八よりも明るい感じの色味でやはりホシは見当たりません。しかし,食感は二八とは相当に異なっていて,麺を歯で噛んだ時にみしっとに中身が詰まっている感じがしてさらにもう少し噛むことを求められます。同時に二八よりもやや強い穀物感のあるそばの香りが広がります。これも半盛りですからあっという間に食べて終えてしまい,やはりそれを見計らったように,粗挽き十割(半盛り)が提供されました。

粗挽き十割は,先ほどの十割とは異なる加工と編み方をされた重厚な感じの黒味を帯びた濃い茶色の竹笊の真ん中に山高に盛られて提供されました。そばの太さは変わらずやや細めで長さも十分にありましたが,色味は十割よりもやや濃い茶色を呈しつやつやとしていてホシがところどころに見えます。

食感は十割よりもさらに中身が詰まった感じがして少し噛まねばなりませんが歯抜かりなどはなく,かすかなざらつきも感じられます。そばの香りは十割と同様に感じられました。粗挽き十割を食べ終わりますと,声をかける間もなく,そば湯が濃緑色の大きめの和風マグカップ様の陶器で提供されましたが,そばの湯がき汁を入れたもので開店後間がなかったせいかサラサラと飲みやすく,そばつゆと合わせてその香りを楽しみました。

二八,十割,粗挽き十割と蕎麦三昧させてもらってそのそれぞれの魅力に触れることができましたが,手挽きの十割もメニューにあり,これらのそばを毎日挽いて打ち分けるのはなかなか骨の折れることではないかと思いました。当日は昼のランチタイムに伺ったため,店主との会話もほとんどできませんでしたし,また,メニューの中で「手挽き粗挽き十割」と「釜揚げの辛み大根おろしそば」はぜひ食べてみたいと思いましたので近いうちに再度伺いたいと思いました。

(レポート/sobayanoyutou)

 

【 店の電話番号 】06-6315-6767

【 住 所 】大阪府大阪市北区西天満4-1-11 

【 アクセス 】地下鉄「南森町駅」,京阪「なにわ橋駅」,京阪・地下鉄「淀屋橋駅」・「北浜駅」より各徒歩約8~10分

【 営業時間 】昼11:30~15:00 
       夜17:30~20:00(木・金曜日のみ)

【 定 休 日 】火曜日

【ひとり分の平均的な予算】昼 1,500円程度

【 予 約 】可
 
【クレジットカード】不可

【 個 室 】なし

【 席 数 】カウンター6~7席,テーブル席(二人掛け)2席

【駐 車 場】なし 

【 煙 草 】禁煙

【アルコール】有

【店のホームページ】あり(フェイスブック,ツィッター)

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