手打ちそば 和 (大阪府大阪市) 手挽きにこだわり、まっすぐ蕎麦に向き合う真面目なお蕎麦屋さん

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大阪メトロ御堂筋線の「あびこ(安孫子)駅」から地上に上がると東側に日本最古の観世音菩薩のお寺として有名な「あびこ観音」の大きな案内看板が目につきますが,それとは反対の西側にあるあびこ中央商店街の大きなアーケードをくぐり,賑わう庶民的な商店街を5分程歩いて通り抜けて居住区域に入るとすぐに,赤い縦長の暖簾の下がる小体な店構えの「手打ちそば 和」があります。

お店の表はどちらかというと昔の大衆食堂か何かを少し改造しただけではないかと思われるような質素な感じで,間口もそれほど広くありませんが,赤い縦長の暖簾と「手打ちそば 和」と墨書風に書かれた木製の看板が印象的です。お店の前には客のものと思われる自転車が2台停めてあり,車用の駐車スペースは見当たりませんので,街の中の小さなお蕎麦屋さんといった雰囲気です。お店の前の窓ガラスには,店が21年目に入ることを記念して10%引きとの貼り紙がありました。

当日は,お昼時を避けて13時過ぎに伺ったのですが,扉を開けて中に入ると真面目そうな店主がすぐに出てきて対応してくれました。お店の中はこじんまりした感じで,右手の小上がりに座卓2卓8席,左手に小さめのテーブル2台4席(合計12席)でしたが,古い調度品などの装飾もなく,やはり昔の街の小さな大衆食堂をイメージさせます。最近はお洒落でモダンなお蕎麦屋さんも多いのですがこの店は、ちょっと違った雰囲気です。

メニューを眺めますと,そばの種類としては,手挽き二八の細打ちと手挽き十割の太打ちがあり,さらには熟成したそばと冬の温そばが並んでいました。また,蕎麦前や他の一品料理もあり,関西では有名な鴨肉を使った鴨料理も書かれていました。

蕎麦前にも惹かれたのですが,初めて伺ったお店なので,まずは手挽き二八の細打ちのざるそばをお願いしました。待つほどのこともなく,丸型の竹笊に平らに盛られた蕎麦が,つゆが半分ほど入れられたそば猪口と白ねぎ,山葵,塩が盛られ小皿と共に店主自らにより提供され,塩で食べてもらっても美味しいとの一言を添えて奥に引っ込みました。また,本日の玄そばは福井県丸岡産とのことでした。

そばは細からず太からず,やや緑色がかった薄茶色を呈し,ホシが各所に散らばっていて,ツヤツヤとした瑞々しい光沢を放っていましたが,荒々しい感じがしました。2,3本を箸でつまんですすりこみますと,きちんと噛むことを求められるしっかりとした食感で,ザラリとした舌触りがあり,口に入れた瞬間から野趣あふれるそばの香りが感じられました。さらに,鰹節の出汁が効いたやや濃い目のそばつゆに軽くつけてすすりこみますとそばの麺の表面がギュッと締まった感じがして噛むときの歯にあたる感じが強くなり,さらにそばの甘みや風味の広がりを感じました。店主に聞きますと,挽き分けたそば粉をブレンドしているそうで,細打ちの食感を出すためにつなぎを2割入れているとのことでしたが,食べた感想としては,そば粉の荒い存在感が強く感じられ,いわゆる二八の滑らかな食感とはやや違うと感じられました。

そうなりますと,手挽き十割の太打ちを食べないわけにはいきませんので,そば湯を持ってきてくれた店主に太打ちをお願いしました。これは先ほどの細打ちに比べるとやや時間がかかりましたが,ほどなく,黒色の丸皿の上に丸い竹簀を置いたものに,太さ5~6ミリ程はありそうな,細打ちよりも若干色の濃い茶色を呈し,大小のホシが多数見えるそばが存在感たっぷりに置かれて提供されました。

私としては初めて見るそばの姿で,ややあっけに取られたのですが,写真を撮るのも忘れて(添付写真は2本ほどつまんだ後のものです),1,2本を箸でつまんでみますと,長さは細打ちに比べて短かく,口元に持っていくだけでそばが香りますが,口に入れた瞬間からそばの穀物感のある香りが強く感じられます。そばをすするというよりも,箸で1,2本をつまみ上げてしっかりと何回か噛んで食べるそばです。細打ちのようなフッツリとした切断感やのど越しはありませんが,かといってネチャネチャという歯ぬかりまではなく,噛むたびにそばのはね返してくる力強さや香りが感じられます。手引きの十割とのことでザラザラ感のある食感を想像していたのですが,そばの表面は滑らかで口中に入れた際にもザラつきのある舌触りはほとんどありませんでした。これだけの太いそばを中まできちんと熱を入れ,かつ,張りのある表面を保つように湯がくのは難しいだろうなと思いました。

さらに,特筆すべきは,薬味として添えられた「暮坪かぶ(遠野かぶ)のおろし」です。書籍等で見たことはあったのですが,実際にお目にかかったのは初めてで,見た目は辛み大根のおろしに似てはいますが,白さは大根よりもやや灰色がかっており,しっかりした辛みとかすかな苦みがあって,そばの穀物感に非常によく合います。店主に暮坪かぶを初めて食べる旨を言ったところ,暮坪かぶ自体を奥から持ってきて見せてくれましたが,蕪というよりもやせた小さめの大根といった風情で,大阪で通年暮坪かぶを扱っているお店は2,3軒しかないと聞いているとのことでした。

最後に,この店にはあまり似合わないのではと思いましたが,花柄のティーポットに入れられた濃い目のそば湯をそばつゆと暮坪かぶのおろしを合わせていただきました。また,この次来たときは,メニューにあった「熟成したそば」なるものをいただいてみたいと思いました。

(レポート/ sobayanoyutou)

 

【 店の電話番号 】06-7165-7100

【 住 所 】大阪府大阪市住吉区苅田5-7-2 

【 アクセス 】大阪メトロ御堂筋線「あびこ駅」より徒歩6~7分

【 営業時間 】月・水~金 昼11:30~14:00 夜18:00~21:30 
       土・日・祝日 昼11:30~15:00 夜17:00~21:00

【 定 休 日 】火曜日(除く祝日)

【ひとり分の平均的な予算】昼 1,500円程度

【 予 約 】可
 
【クレジットカード】不可

【 個 室 】なし

【 席 数 】12席(座卓8席(4席×2),テーブル4席(2席×2))

【駐 車 場】なし 

【 煙 草 】禁煙

【アルコール】有

【店のホームページ】なし

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