2020年11月27日
2007年9月10日に我が家にやってきて、それから13年間、一緒に暮らしていたプリンが永眠しました。プリンのことを愛してくださった皆さまに、お知らせします。
プリンは7月7日生まれの女の子でした。人間が大好きで、ときどきワクチンの注射をしてくださる獣医さんも大好きで、病院に連れていくと獣医さんの顔をペロペロ舐めて喜ぶので、獣医さんも「こんな子は、いませんよ」と、感激してくださいました。
2007年9月、初めて我が家に来てくれたころのプリンです。
ものすごく元気で、トイレをおぼえるまではケージの中に入れていたのですが、外に出たくて、どんなに出にくくしても、ブルトーザーのようによじ登って、出ようとしました。
海と水泳が大好きで、伊豆の海に遊びに行くと、舞い上がるように走っていました。
クッシング症候群などの難病も抱えていましたが、とても活動的で、いつも私たちに笑顔を届けてくれました。まだまだ生きて欲しかったのですが、膵炎が悪化して、大好きな獣医さんの病院に入院中、急変して、他界しました。その夜の夕飯は、お腹いっぱい食べて眠ったそうですが、夜中に血栓が詰まったらしく、眠るように亡くなりました。
プリンを愛してくださった皆さま、長い間、本当にありがとうございました。彼女は、またきっと生まれ変わって、会いに来てくれると信じています。
2020年2月22日
実に久しぶりのブログです。
どうにも時間がとれなくて、忘れたころの更新になります。
楽しみにアクセスしてくださる方、ごめんなさい。
何をやっているのか、自分でもわからなくなるほど、いろいろなことをしているのですが、今週の18日には、南青山で「蕎麦のソムリエ講座」を行いました。
テーマは「古流 江戸打ち」。要するに、江戸時代を通じて、蕎麦はほとんど、一本棒で打たれていたということを、お伝えしました。
江戸そばは、三本棒で打っていたと思っている方、それはちょっと違います。本来の江戸そばは、一本棒です。
日本蕎麦の正統な打ち方は、一本棒。この打ち方が、そばの美味しさを、最も引き出す、理想的な打ち方なのです。
「蕎麦のソムリエ講座」では、下の写真でおわかりのように、蕎麦の知識と、蕎麦を打つ技術と、両方を同時に学んでいただきます。
次回は3月11日(水曜)。この日は、日本一おいしいと評価され、「おいしいそば産地大賞2020」グランプリを受賞した福井在来の、早刈りそばと、完熟そばの食べ比べをしていただきます。
講師は、福井からお越しいただく、北谷敏一さん。福井の一本棒の達人です。
お時間のある方は、すぐに申し込んでいただいて、お時間のない方は、すぐにスケジュール調整をして、お申し込みください(笑)。
極上の、おいしい蕎麦、ご一緒に楽しみましょう。
3月11日、「蕎麦のソムリエ講座」の、詳しい説明は、こちらです。
2019年5月6日
新宿・花園神社の赤テントで行われた唐十郎さんの「ジャガーの眼」、観てきました。
久しぶりに、あの時代の空気を吸いたかったのです。
私の整理番号は1番。最前列の、花道に接した角のところに、ギュウギュウ押し込められて座りました。
いざ、舞台が始まると、これ以上ない「かぶりつき」なだけに、役者さんのツバは飛んでくるわ、撒き散らした水はかぶるわ、舞台から舞い上がるホコリで咳こむわで、大変。
でも、演技は思った以上に熱が入っていて驚きました。
1970年から80年代、すごいエネルギーが、みなぎっていた時代だったんだなあと、色あせかかっていた記憶が鮮明に蘇りました。
最後には、唐さんご本人も舞台に登場して、短いご挨拶をなさいました。
唐さんのお顔、拝見できてうれしかったです。
私は、70年代のはじめは故郷の長野県にいたのですが、ときどき上京して写真展などを見てまわりました。
銀座の、あの、狭いニコンサロンで、森山大道さんや中平卓馬さんのモノクロ写真を、ドキドキしながら見たことを思い出します。
ダイアン・アーバスの写真に出会って、魂を持っていかれたのも、あのころでした。
実は、唐さんの舞台を観る前日、とても不思議な出来事を体験したのです。
Facebookに書いたのですが、常識では説明できない出来事で、でも、勘違いや幻聴ではなく、たしかに体験したのは間違いないのです。
いろいろ考えて、もう一度、正座して、これからの日々を生きたいと思いました。
ここのところ、仕事が山積みすぎて、いくらやっても遅れが取り戻せないので、ちょっと、しんどくなっていたのですが、そういう気持ちを、唐さんの舞台と、その前日の体験が一掃してくれました。
虎之介は、がんばります。
がむしゃらに、精一杯やります。
これから発表する仕事、楽しみにしていてください。
2019年3月30日
先日、青森に行ったので、久しぶりに、押野商店の甘納豆、買いました。
青森駅からタクシーに乗って、10分弱。古色蒼然とした住宅街のただ中に、押野商店、ありました。
もう15年くらい前になるけれど、この店で、そら豆の甘納豆を買ったんです。
「えっ!」と思うくらい大粒の甘納豆で、びっくりしました。美味しいしね。
でも甘納豆よりも「えっ!」と思うのは、この店のたたずまい。
見事ですよね。2019年の風景とは信じられないほど。もちろん現役のお店です。
15年前に来たときと、何も変わっていませんでした。
このあと青森駅に戻って、跨線橋を渡っていたら、通路の壁面に、昭和の時代の青森駅のモノクロ写真が貼ってありました。
これも懐かしい。
僕が初めて青森駅から青函連絡船に乗り換えて北海道に渡ったのは、今から47年くらい前。この写真のような、雪の季節でした。
今では駅の様子も、すっかり変わってしまって、以下のような眺めです。
雪の青森駅のモノクロ写真を見ていたら、あのころ、暇さえあれば一晩中暗室にこもって、写真をプリントしていたことを思い出しました。朝がくるまで夢中になって暗室作業、していました。楽しかったです。
フィルムがデジタルに変わってから、その場で映像を確認できるので、「写っていないかもしれない」という緊張感がなくなり、「どんなふうに写っているだろうか」と、仕上がりを待つドキドキ感もなくなって、写真のいちばん面白かった部分が、どこかに消えてしまった気がします。
フィルムで撮影する楽しさは、デジタルでは味わえないけれど、でも、今、あの暗室作業に似たワクワク感を、ちょっぴり味わえる楽しいこと、ひとつあるんです。
それは、蕎麦の「返し」の仕込み。今夜も、何種類もの醤油を使い、いろいろなパターンで、テストの「返し」を、小さな壺にたくさん作りました。
作業としてはシンプルで、醤油と砂糖を使い、それぞれの量と、温度と、組み合わせを変えたバリエーションを何通りも作ります。単純なんだけど、ちょっとの加減で、その味は大きく変わります。華やかだったり、荘厳だったり、和音のような味わいを持っていたり、ときには失敗したり・・・。
実際に時間をかけて作ってみないと、完成の状態はわからないのです。「やや甘めで、キレが良くて、ほどの良いコクが出るのかな」と想像して仕込んでも、微妙にズレが生じてしまう。そこが面白いのです。偶然が生み出す、驚きの美味しさなんていうのも、ごく稀に、出現します。
この「返し」作りの際に味わう期待感と達成感、ときどきの挫折感が、暗室作業に、よく似ているんです。
たとえば暗室でフィルムを現像する場合、撮影してきたトライXなどのモノクロフィルムを、D-76なんていう現像薬で現像するのですが、現像液の濃度、鮮度、温度、時間、攪拌の強さによって、まったく異なった仕上がりになるのです。
現像が仕上がってみないと、どんな映像が現れるのか、わかりません。リスクと背中合わせのワクワク感が、今のデジタル写真にはない楽しみでした。
そして仕上がったネガフィルムの濃度により、印画紙にプリントしたときの黒の深さとか、グレーのトーンの美しさなど、見た目の印象はまったく違ったものになります。印画紙に再現したいトーンから逆算して、撮影するときに露出をどのくらい切り詰めれば良いかなど、そんなことをあれこれ考えながら、ズッシリ重みのある一眼レフを操作して撮影するのが、何度やっても飽きない楽しみでした。
今、蕎麦の「返し」の仕込みをしながら、ちょっと気持ちが高ぶるのは、読み切れないものを読もうとする、暗室作業に似た緊張感が味わえるからなのかもしれません。
また、モノクロフィルム、使ってみようかな・・・。
写真の話になると、つい長くなってしまいます。
蕎麦の話でなくて、ごめんなさい。
2019年3月28日
雑誌の締め切りや認定試験のイベントなどがいくつも重なって、ブログ、書くことができずにいました。
やっと少し余裕ができたので、最新のお知らせを書きます。
雑誌のひとつ「RiCE」という、食とファッションの雑誌が発売になりました。
今回は、蕎麦特集で、片山虎之介が記事を書いています。
この雑誌は、日本語の記事のとなりに、英語に翻訳した記事も載っていて、外国の方にも読んでいただけるように出来ています。
片山が書いた記事か18ページ、それに蕎麦のソムリエや蕎麦鑑定士の講座をレポートしていただいた記事が8ページあって、合計26ページが、私の関係記事になっています。
今までの蕎麦の記事とは、まったく切り口の違うものになっています。とても面白いので、ぜひ、ご覧ください。
蕎麦の世界の現状、極めてリアルな現実について書いています。
それと、これからむかえる蕎麦の新しい世界がどうなるのかということも。
蕎麦の世界には、激動の時代が始まっています。
まずはこの雑誌『RiCE』で、そのことを皆さんに、お知らせします。
このあとは、柴田書店の『そばうどん』に、いろいろな記事を書いています。
こちらは、あと一ヶ月ぐらいしたら発売になります。
テレビなど、メディアへの出演も、いろいろ予定しています。
皆さんに蕎麦の素晴らしさをお伝えすることができて、うれしいです。
全国の書店、またはAmazonで購入できます。
2018/12/30
12月30日です。
今年も、一年を無事に過ごすことができました。
無事と言っていいのか、言えないのか。いろいろなことがありましたが、ま、いいです。
「何もなかったことにしましょうと、きょうも、日がくれました」と、私の大好きな、歌う詩人の、懐かしいフレーズが、いつもこのころになると、頭をよぎります。
たくさんの方々に支えられて、一年を乗り切ることができました。今年、一緒に、同じ道を歩いてくださった方々に、心からの感謝を込めて、お礼を申し上げます。
ありがとうございました。
来年、もしも歩幅が合ったなら、また一緒に歩いてください。
いつ、どうなってしまうかわからない私たちの命ですから、与えられた今という貴重な時間を、楽しみたいと思います。
ここのところ何人も、これからずっと一緒に歩いて行けると思っていた人たちが、遠くへ旅立ってしまったので、そんな思いを強く感じます。
蕎麦は、いいですね。蕎麦は人をつなぐと、聞き飽きるほど聞きましたが、これは真実です。蕎麦にかかわっていることで、出会えなかったはずの人とも出会えて、やれるはずのなかったことも、成し遂げることができます。
きょう、12月30日、ある人に手紙を書きました。この手紙が、その人と私を結びつけてくれたなら、来年は、「こうしたい」と思っていた仕事が、できるようになる可能性があります。
また、新しい友人との出会いが、たくさん、たくさん、待っているに違いない2019年を生きるのが、とても楽しみです。
みなさんにも、どこかで、お会いできるとうれしいです。
どこかで、お会いしたなら、「書いたり書かなかったりしている虎視眈々、ときどき読んでますよ」と、あたたかい言葉をかけてください。
あなたの2019年が、すばらしい年になることを願っています。
良いお年をお迎えください。
2018/09/09
新しいサイト『蕎麦Web増刊号.jp』をスタートさせます
暑さに加えて、豪雨と地震、なんとも厳しい夏でした。
夏の終わりと同時に、新しいサイトを立ち上げます。
新しいサイトの名前は『蕎麦Web増刊号.jp』といいます。「そばウェブ ぞうかんごう ジェーピー」と読んでください。
リンクを貼っていますので、それをクリックしていただき、ご覧いただくとわかるのですが、片山が膨大な量の文章を書いていきます。文章が中心のサイトになります。蕎麦のことを勉強なさりたい方は、ぜひ、ご覧ください。
創刊記念特集として、「美味しいそばの基礎知識/片山虎之介のそばの学校」という記事をアップしていきます。
今、私は、「片山虎之介のそばの学校」というサイトを運営し、3つの資格を認定する3つの講座を運営しています。「蕎麦のソムリエ講座」、「蕎麦鑑定士」養成講座、「日本蕎麦伝統技能保持者」の認定制度です。
これらの講座に加えて、今回スタートする『蕎麦Web増刊号.jp』には、たくさんの蕎麦の知識を書き込んでいきますので、これらの講座にご参加くださる皆さんは、大変なそば通になることでしょう。
私が運営しているサイトは、いくつもあります。まず『蕎麦Web』そして今回、加わった『蕎麦Web増刊号.jp』、このごろ検索でトップに現れることも多くなってきた『日本蕎麦保存会jp』、蕎麦鑑定士の公式サイトである『日本蕎麦.com』、3つの講座をまとめた窓口が『片山虎之介のそばの学校』。私自身の個人サイトである『片山虎之介の旅』と『虎の散歩』いうのもありました。そのほかにも公表していないサイトがたくさんあります。
これらのサイトを進めながら、さらにブログをもう一本というのは、なかなか難しい状況になってしまいました。ですからここにブログを書く間隔が、やや長くなるかと思います。『蕎麦Web増刊号.jp』や『日本蕎麦保存会jp』に書く文章を、ブログの続きと思って、お読みください。無理やりの勝手なお願いですみません。
ということで、『蕎麦Web増刊号.jp』でお会いしましょう!
がんばりますので、応援、お願いいたします!!
片山虎之介
2018/08/05
最後の晩餐に食べたい蕎麦
ブログの更新、すっかりご無沙汰してしまいました。
毎日、書きたいなどと言っていて、やっぱりそれは僕には無理なのだということが、よっくわかりました。毎日書くには、さらにこれ以上、徹夜を増やさなければならないので、撤回します。
無理なく時間がとれたときに書いていきますので、気が向いたら、遊びにきてください。
さて、この猛暑、蕎麦にも大きな影響を与えています。
日本蕎麦保存会で栽培している夏ソバの畑も、地域によっては全滅の状態です。
全滅とは言っても、収穫できなかったという意味ではなく、味の面で全滅ということです。
暑さは、きちんと対処しないと、味を殺します。壮大なゴミの山を作ってしまいました。
でも、別の地域の畑では、うまい具合に管理ができて、こちらはOKだったので、なんとかカバーできたのですが、天候ばかりは、努力だけでは対応しきれないので恐ろしいです。
この異常な天気が、いつまで続くのか。というより、今後、これが常態になっていくのでしょうか。
仮にそうだとすると、蕎麦にとって、非常に大きな不安要素になります。
縄文時代にはすでに大量栽培されていたという痕跡が発見されているソバですが、今、私たちが生きているこの時代が、歴史的な転換期になる可能性も出てくるのです。
昔ながらの本当に美味しい蕎麦を栽培することが、どんどん難しくなっています。
現在から未来への変化を考えたとき、蕎麦という食べ物は、今が、いちばん美味しい時期になるかもしれません。AIが進化しても、コミュニケーションの技術が、どんなに発達しても、それによって蕎麦が、今より美味しくなるとは思えません。
今、最高に美味しい蕎麦を味わうことのできる私たちは、幸せものなのです。
この世に別れを告げる間際の、最後の晩餐には、鯖だしの甘汁を合わせた「かけそば」を一杯食べたいと思っている僕にしてみれば、日々、味わうことのできる蕎麦は、ほんとうに一期一会の賜り物なのです。
これから朝までの間に、醤油の経時変化の様子をチェックした結果を踏まえて、新メニューを2本、組み立てます。
どんな蕎麦を生み出すことができるのか、眠たいけれど、とてもワクワクする仕事なのです。
では、また、時間がとれたときに、お会いしましょう。
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2018/05/22
ソバ畑の観察日記
なんだか、小学校の夏休みの宿題を思い出しそうなタイトルですが、毎年、「ソバ畑の観察」が僕の大きな楽しみになっています。
あちこちで栽培している、何枚ものソバ畑の、その時々の状態を、こんなふうに写真に撮っておきます。
時間経過とともに、撮った写真の中の実の様子が次第に変化していって、やがてしっかりしたソバの実になってくれるのを見るのは、無上の喜び。何度見ても、胸が高鳴る感動を覚えます。
ファインダーの中に展開する、この風景は、僕にとって、すばらしい命の絶景なのです。この一粒一粒が、生きていて、未来に子孫を残す力を持っています。未熟のままで枝から離されてしまった、ここに写った実たちは気の毒ですが、この実の仲間たちは、畑の土に、しっかりと根をおろし、刻々と成長を続けています。
じっと見ていると、実の一粒一粒が、何かを考え、何かをつぶやいているように見えてきます。小さな、草の香りのするつぶやきが、さわさわと、聞こえてくるような気がします。一粒一粒に、名前をつけてあげたくなります。愛おしい粒たちです。
ファインダーの中の、この風景、同じ時期であっても、畑のある場所によって大きく異なります。播種時期によっても、大きな違いがあります。特にこのぐらいの大きさの頃は、それぞれの畑の違いが、はっきりと認識できて、とても面白いのです。
栽培している品種によっても違いますし、畑の土の状態によっても、まったく違った風景になります。
やがて収穫期がきて刈り取ったら、ずっと見続けてきた実たちを製粉して、蕎麦に打って、食べて見ます。畑によって、美味しい、美味しくないの差があるのが、はっきりわかります。
ですから、何年も、この作業を続けていると、この写真を見ただけで、収穫後の味がどのようになるのかが、なんとなく想像できるようになってきます。
その読みが、いつも当たるとは限りません。まったく予想外の味になることも、あります。でもそれは、予想外に味が乗らなかったという結果だけではなく、予想をこえて美味しくなったということもあるのです。その年の天候や、晴れて暑い日が、成長期のどこの段階でこの実と遭遇したのか。そういうことで味は大きく変わるので、予測すること自体に、超難問のクロスワードパズルに挑戦するような面白さがあるのです。
さて、今年のソバ畑の観察日記は、どう展開するのでしょうか。
いよいよ、その時期が始まります。
吉と出るか、大吉と出るか。
それ以外の結果は、考えないようにします。
カメラにマクロレンズを付けて、愛しい実たちが待っているソバ畑に、出発しましょう。
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2018/05/20
夏のデスクトップ用写真、撮りました
僕のパソコンのデスクトップの画像は、季節ごとに撮った、我が家の1号、2号の写真を使っています。
きょうは日差しと風が気持ちよかったので、1号、2号を連れてドッグランに行きました。
そこで夏らしい写真が撮れたので、これからしばらくは、この写真がパソコンを開くと出てくるようになります。
デスクトップの画像のように、何度も繰り返し見てもいやにならない写真は、それなりの撮り方というものがあるようです。
ぱっと見たときに、「おっ!」と注意を引きつけて、強く印象に残る写真は、何度も見ていると鼻についてきます。
何かを強調することのない構成で、いくつかのテーマが、バランスよく散らばっている・・・そういう写真が、僕にとっては、長く見るには適した映像になるようです。
気分によっては、僕の大好きなアーバスの写真の中で、おとなしいものを選んでデスクトップに使ったりすることもあるのですが、これは長続きしません。
彼女の写真は、見る者に緊張を要求しますから、それでも対応できる、気分が高揚しているようなときにしか使えないですね。
で、やっぱり普段の、てれっとしているときは、こんな写真がいいです。
きょう撮った写真が、上にある、木立ちを背景にした写真。
下にある、海辺の写真は、去年、大好きな海岸に行ったときに撮った、去年の夏用デスクトップの写真です。
ちょっとあわただしくて、数日、ブログが書けなかったので、おまけとしてアップしました。
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2018/05/13
醤油の力が蕎麦の味を飛躍させる
蕎麦つゆにとって、出汁はもちろん大切だけれど、それは黒子。
表舞台に立って大見得を切るのは、醤油です。
よく蕎麦と蕎麦つゆは、車の両輪だとか、二人三脚だとか言われます。
このふたつが美味しくなければ、蕎麦の味は高みに到達しないのですが、難しいのは、両者のバランスです。
蕎麦の主張が強ければ、蕎麦つゆも、それをサポートする力加減を見極めなくてはなりません。
また、蕎麦の力が弱いならば、蕎麦つゆが、足りないところを補ってあげる必要があります。
蕎麦を差し置いて、出しゃ張る蕎麦つゆも困りますが、蕎麦が助けを必要としているのに、知らぬ存ぜぬの蕎麦つゆでも、相棒の価値がないということになるのです。
醤油は、多くの蕎麦屋さんで、同じようなものを使っています。
これは安定供給も大切であるし、品質がブレないということも重視しなければならないから。
その理由はわかりますが、「醤油の力が蕎麦の味を飛躍させる」という、このタイトルの意味を、もう一度、考えみてください。
蕎麦の麺の味というものは、通常、さほど強い主張があるものではありません。中には、とても強いパワーを持っていて、麺の味だけでひとを感動させる蕎麦もありますが、今回のお話の中では、そういう蕎麦は例外としておきましょう。ある意味、特殊な蕎麦だからです。
一般的にお店で供する蕎麦は、もっと穏やかな味です。
それに比べて、醤油、みりん、砂糖、出汁などを合わせ、さらに濃縮させた蕎麦つゆは、とても強い味です。
ですから、蕎麦と蕎麦つゆの組み合わせを考えたとき、その味を決定付けるのは、蕎麦つゆだとも言えるのです。
蕎麦つゆで、大見得を切る主役は、醤油です。
醤油の選び方、ほかの多くのお店と、同じでいいですか?
あなたのお店の味は、どこにありますか?
蕎麦つゆの味で、お客さんが来てくれるとさえ、言えるのです。
醤油の味の個性とか、選び方、もう一度、見直してみませんか。
醤油は、あらためていうまでもなく、和食のベースとなる調味料です。
醤油の文化は、地域ごとの独自性、使い方の技術、歴史など、驚くべき広がりを持っています。
今の蕎麦つゆの作り方以外の、醤油、みりん、砂糖、出汁の組み合わせや、温度のコントロール、寝かせ方を、どのくらいご存知ですか?
蕎麦を美味しくできる可能性を、捨てないでください。
日本の蕎麦は、もっとずっと美味しくなります。
できるのだから、美味しくしましょう。
特に、若い蕎麦職人の方、自分の目で、舌で、蕎麦を味わってください。そして、考えてください。
「私が作る蕎麦は、もっと美味しくできるはずだ・・・」と。
きょうの写真は、昨年の秋に訪ねた、ある小さな醤油蔵の様子です。
とても小さな蔵なのですが、歴史は古く、醤油作りのノウハウは、しっかり蓄積されています。
この蔵に、「こういう醤油が欲しい」と僕が考える、理想の醤油を作っていただきたいと、お願いしました。
何年もかかる仕事なのですが、ご主人に、ご快諾いただきました。
木桶ひとつだけですが、その醤油として育てていただくことになりました。
ありがとうございます。
ここから、新しい可能性の扉が開きます。
完成が、とてもとても、楽しみです。
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2018/0512
干し椎茸に夢中です
蕎麦の美味しさの要素のひとつに、出汁の魅力があります。
「蕎麦」といっても麺のことを指すだけではなくて、蕎麦を食べるときには、当然、蕎麦つゆや、薬味なども、「蕎麦」の味に組み込まれるわけです。
「最初に、まず、蕎麦だけ味見して・・」というのは、まさにイントロダクションの部分で、蕎麦の麺そのものの味を楽しんだあと、そこからさらに本編の壮大な物語へと進んでいくのですね。
そのときに要となるのが、出汁の味です。
出汁って、黒子の役割で、派手に、しゃしゃり出ないけれど、これがなかったら、物語は成り立たないという重要な役どころです。
出汁のことは、ずっと研究し続けているのですが、これが面白い。そして難しい。さらに、やればやるほど、わからなくなっていきます。
面白いものって、そういうものですね。入り口は簡単に入れるのだけれど、奥に行けば行くほど、広くて、暗くて、複雑で、手に負えなくなってくる。
出汁は、その典型だと思います。
節系の出汁も面白いけれど、今、野菜系の出汁に、のめり込んでいます。
「精進」と言ってしまうと、わかるようで、かえってわからなくなる。僕がたどっている道筋は、いわゆる精進料理とは、求めるゴールがちょっと違う場所にあるのだと思います。
で、きょうは、静岡の知人が特別に作ってくれた干し椎茸と、取り組んでみました。
ざるに乗せて写真を撮ると・・・思わず、その美しさに見とれてしまいました。
在来種のソバの実(玄そば)も、見事なデザインだと思うけれど、干し椎茸、素晴らしいですねえ。うっとりしちゃいます。
この干し椎茸、蕎麦でいえば「手刈り・天日干しの在来種」みたいな、手間暇かけた貴重品なんです。
これを、水で戻して使います。
鰹節とも、昆布とも、また違った味の世界に旅することができます。
ああでもない、こうでもないと、長い試行錯誤が続きますが、この積み重ねは、やがて蕎麦のおいしさとして結実することでしょう。
そういえば、銀座で行った「蕎麦のソムリエ講座」で、ある女性の受講生の方が、「蕎麦屋を開くのだけれど、椎茸出汁のことを教えて欲しい」とおっしゃいました。
「ほうっ!」と驚いて僕は、逆にいろいろ質問しました。
なぜ、椎茸を使おうと思ったのですか?
その店では、どういう味を打ち出そうとしているのですか?
そもそも、どこから、そういう発想が出てきたのですか?
とても興味深かったのです。
答えは、明快でした。
その女性は、長野県は木曽の開田村の出身だったのです。
おばあちゃんの作ってくれた蕎麦が、とても美味しかったので、その味を出したいとのこと。
なるほど、100%の納得でした。
開田の蕎麦、僕も昔、食べたことがあります。
すごく、美味しかったです。
まだ、開田在来が生き残っているころです。
今はもう、あの味は、時の彼方に消えてしまっていますが。
開田の蕎麦なら、椎茸出汁、ありですよね。
それを東京でやるとのこと。
いいですねえ。楽しみです。
店がオープンしたら、ぜひ、うかがって、楽しませていただきたいと思います。
四方を山に囲まれた開田村では、塩が貴重だったので、乳酸発酵の「すんきそば」が生まれたことは、蕎麦好きの方なら、ご存知ですね。
これが、おいしい。
鰹節や、信州でよく使われる煮干しも貴重品だったでしょうから、椎茸とか野菜系の出汁は、活用されたことでしょう。
日本の蕎麦の土台には、こういう出汁もあるんです。
野菜系の出汁、極めたいものです。
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2018/05/11
パクチーそば、虎は大好きです
きょうのお話ですが、新潟にある、かなり変わっていて、魅力的な蕎麦屋さんの記事をアップすることにします。これからも、このコーナーで、ときどき片山がおすすめの蕎麦屋さんの記事をアップしますので、日々の与太話と一緒に、楽しんでください。
「パクチーそば、虎は大好き/蕎麦DAYS」
新潟市の外れにある『蕎麦DAYS』という蕎麦屋さんです。この店の人気メニューは、パクチーを使った蕎麦。これがおいしいのです。
パクチー大好きな僕としては、放っておけない店。いいですねえ、こういう規格外の蕎麦屋さんは、大好きです。
左の写真をクリックすると、記事ページに飛びます。「おいしい蕎麦屋、食べ歩きレポート」のコンテンツの新潟県のところからも入れます。
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2018/05/09
「蕎麦鑑定士」、ようやくスタートしました
蕎麦鑑定士の受け付け、やっと始めることができました。
すっかり、遅くなって、ごめんなさい。
今年から、蕎麦鑑定士の管理は、日本蕎麦保存会ですることになりました。
しっかりがんばって、受講して意味のある講座にしますので、皆さん、ご参加ください。
今年から、48種類の食味体験の内容も変えます。
日本蕎麦のバリエーションって、いっぱいあるんですよ。
その中から、今年は、在来種を中心に、12種類の個性際立つ蕎麦を味見していただきます。
内容をご紹介すると、次の通りです。
ご存知ない方が誤解するといけないので説明しておきますが、この中で「常陸秋そば」「キタワセソバ」「信濃1号」は、在来種ではありません。
【品種による蕎麦の味の違いを知る。すべて生粉打ち】
「丸岡在来」(福井県)、丸抜きからの製粉
「今庄在来」(福井県)、殻付きで製粉
「大野在来」(福井県)、丸抜きからの製粉
「あわら在来」(福井県)、殻付きで製粉
「奈川在来」(長野県)、殻付きからの製粉
「常陸秋そば」(茨城県)、丸抜きからの製粉
「キタワセソバ」(北海道)、丸抜きからの製粉
「信濃1号」(長野県)、丸抜きからの製粉
「対馬在来」(長崎県)、丸抜きからの製粉
「会津在来」(福島県)、丸抜きからの製粉
「横田こそば」(島根県)、殻付きからの製粉
「高遠在来」(長野県)、殻付きからの製粉
これって、実は、すごいことなんですよ。
在来種の蕎麦というのは、とても主張が強いので、その持ち味を引き出すのは、難しいことなんです。単純に石臼で挽けばいいというものではないのです。
まず、その蕎麦が、どんな状態であるかを把握して、それにあった製粉をして、個性を引き出す打ち方をして初めて、この食べ比べは意味を持つのです。
こういう蕎麦を生かせる人は、なかなかいません。
いろいろな在来種を扱って、知り尽くしていて、味覚が鋭敏で、味を組み立てるセンスの良い人。こういう人が担当しないと、これらの蕎麦は、素顔を見せてくれないのです。
在来種を生かす技術というのは、在来種を食べる機会が少なくなるほどに忘れられていくし、在来種の蕎麦そのものが栽培されなくなったら、それを生かす、この食文化は消滅します。
ということは、日本蕎麦本来の味が、忘れられ、消えてしまうということ。だって日本の蕎麦は、昔はすべて在来種だったわけですから、そこに日本蕎麦本来の味というものがあるわけです。
江戸時代は、江戸の町でも、すべて在来種の蕎麦を使っていて、その味をきちんと引き出すことのできる職人が、たくさんいたのです。
いわば在来種は、江戸の昔の味のタイムカプセルなのです。
でも、今の蕎麦職人は、この蕎麦を扱えないから、その美味しさが引き出せない。悲しいことです。
こうした蕎麦の食文化を、ちゃんと次の世代に伝えたいと思って活動しているのが、日本蕎麦保存会です。
蕎麦を愛する方、日本蕎麦保存会にご期待ください。
蕎麦の世界は、へんなことが、いろいろあります。
どうも、ここは、そういうところらしいのです。
だから、なおさら、日本蕎麦保存会は、踏ん張らなくちゃいけない。
そう思って、生きてます。
僕たちに、皆さん、前に進む力を与えてください。
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2018/05/05
「食べて学ぶ そばの学校」スタートしました
先日、「日経トレンディ」という雑誌の依頼で、立ち食いそばのチェーン店の、そばを食べ比べました。
僕は、立ち食いそば屋さんには、よく入ります。
立ち食いそば屋さんの魅力は、なんといっても立地の良さにあると思います。
小腹が空いたなあ…と思ったとき、目の前にあるのが、こういう店なんですね。
さっと入って注文すると、さっと出てくる。見習いたいですねえ、原稿書くのが遅い僕としては。
味もなかなか美味しい店が多いし、工夫もしてるし、やる気もある。立ち食いそば屋さん、僕は好きです。
4つのチェーン店の味を比べたのですが、店によって、かなりの違いがありました。がんばって蕎麦の味を出しているところもあれば、廉価で提供することに徹して、驚くほど安い店もあります。
値段がいくらであるかを抜きに、単純に味だけを比べるわけにはいきません。それぞれの店が、自分の立ち位置をしっかり認識して、がんばっていました。
評価の結果は、「日経トレンディ」2018.6月号、「外食チェーン特集」に掲載。発売中です。
今回、食べ比べた店とは別のチェーン店で、僕が通っているところがあるのですが、最近、その店から、ちょっと足が遠のいています。
なぜかというと、たぶん鰹節の値段が高騰しているので、何かしているのですね。汁の味が変わってしまったのです。
出汁を変えると、それをカバーするために、しょっぱさと甘さを変えて、さらに味の強さ(濃さ)も変えて、味の魅力を保とうとする。そういう作業が必要になってきます。でも、それは難しい。やっぱり「ちょっと違うぞ」と、思ってしまうのです。
こうなると、その店の味に惹かれて通っていた僕としては、つらいものがあります。
ふと気がつくと、あの店ではなく、別のこの店に入る回数が多くなっている。こんな具合で、蕎麦屋さんの栄枯盛衰があるのですね。
蕎麦は、美味しさを、何が何でも死守していただきたいと、わがままな客の僕としては、思うのです。
それで、今回スタートさせた「食べて学ぶ そばの学校」は、まさにその「美味しさ」をテーマにした講座なのです。
蕎麦の美味しさとは、何なのか。
しっかり出汁をきかせた「美味しさ」と、醤油、砂糖で出汁の不足した魅力を補おうとした「美味しさ」は、どこが違うのか。
これはとてもデリケートな問題で、答は、味の感覚を研ぎ澄まして、舌で探り当てるしかありません。
わずかな違いだけれど、この差が「美味しい」と「美味しくない」の分岐点になる、とても大切なところなのです。
決して譲れない、この「美味しさ」の秘密を、しっかり理解していただきたいとの思いで、「そばの学校」には、「食べて学ぶ」というコンセプトを設定したのです。
立ち食い蕎麦屋さんの食べ比べをしたから、こんなことを考えたわけではないんですよ。ずっと前から、このことは、いつも大きな課題として、僕の目の前にありました。
今回、それを、思い切って形にしました。
参加してくださる皆さんには、ほんとうに美味しい蕎麦を召し上がっていただきます。
絶対、参加しないと損ですよ。
騙されたと思って(騙さないですけど)、一度でいいから、「食べて学ぶ そばの学校」の「食べる教材」、召し上がってみてください。
蕎麦という食べ物に対する認識が、ひっくりかえる人は少なくないと思います。
こう言っても、なかなか皆さん、動いてくれないんですけどね。
蕎麦は、今、大きな曲がり角に差しかかっています。
というより、崖っぷちに、片足落としていると言ったほうがいいかもしれません。
ここから先に行きたい人は、「食べて学ぶ そばの学校」の門を叩いてください。
一緒に行きましょう、未来へ。
「美味しさの秘密」を知れば、崖っぷちなんて、怖くないです。
新しいサイト『そば打ち教室、食べて学ぶ そばの学校』にリンクします。
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2018/05/01
やってくれました、危機一髪!
南青山の「蕎麦のソムリエ講座」を終えて、帰ってきたら……ありゃあっ!! です。
2号ちゃん、なんてことをしたんですか!?
犬のベッドに敷いてあった暖房用の電気座布団、こんなことになってました!!
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まさに危機一髪。
プラグがコンセントに差し込んであったらと思うと、ゾッとします。
ああ、気をつけなくちゃね。
つい一週間ほど前に撮った写真が、あやうくメモリアルになっちゃうとこだったじゃないですか。
人間が気をつけなくちゃ、いけませんね。
犬を飼ってる皆さん、くれぐれもご注意ください。
大事に至らなくて、ほんとによかったです……!
しばらく動揺して、足が地につかない感じだったけれど、なんとか気持ちを落ち着けて、きょう開催した講座の諸々の整理をしました。
南青山の「蕎麦のソムリエ講座」は、おかげさまで楽しい時間になりました。
前回の講座から、まだ2週間しかたっていないことと、GWの真っ最中なので、参加者はいつもより少なめだったけれど、とりわけ熱心な人が集まってくれました。
栃木在来の、玄挽き、粗挽き、一本棒。皆さん、見事な蕎麦切りに仕上げていました。
今回、初めてご参加いただいたYさん、蕎麦打ちは今まで経験がないとのことでしたが、驚くほど飲み込みが早くて、ベテランの人たちが打っているところをじっと見ていて、そのあと自分で打つと、手も足も、的確に動かしていました。
この方は、自分の体の動かし方と、その効果を、高いレベルでコントロールできる人なんだなあと思い、何かスポーツをなさっていますかとたずねると、空手をやっていますとの答。なるほど、さもありなん。こういう方が手馴れると、すごい蕎麦を打つ可能性が高いですね。
背の高い方なので、南青山で使っている延し台の高さが合わず、両脚を左右に富士山のように広げて、木鉢の作業をなさっている後ろ姿が忘れられません。
写真、撮っておけば、よかったなあ……失敗でした。
Yさん、またお会いしましょう。
剛柔流 空手二段の、瞬殺、菊練りを、また見せてください。
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2018/04/30
明日は講座で、栃木在来の、玄挽き、粗挽きを打ってもらいます
明日は、東京・南青山で開催の、そば打ち教室「蕎麦のソムリエ講座」の日です。講座の準備で、いつも前日は徹夜になるのですが、きょうはできれば少し眠りたいと思っています。が、もう0時になるところですし、さてさて、どうなることでしょう。
下の写真は、前回、4月17日に開催した、南青山での講座の様子です。このときのそば粉は、福井の在来種を使いました。とてもおいしいそばでした。
一日の講座を第一部と第二部、二回に分けて行っています。これは第一部の様子。このあと、ベテランの皆さんが集結する、第二部があります。
名人、達人がひしめきあう講座です
この「蕎麦のソムリエ講座」は、そば打ちを楽しみながら、そば全般に詳しくなっていただく講座です。そばは、打ってみたり、食べてみたりしないと、その本質は理解できません。この講座にご参加いただいている方は、ベテランになると50回近く通っている方が、大勢おられます。そういう方は、もう、すっごい達人で、ほとんどの日本蕎麦を打ち分けることができます。粗挽き、細切り、生粉打ち、湯捏ね、なんでもござれで、プロでも、ここまでできる人は、なかなかいません。これからさらに回を重ねると、名人軍団みたいになりそうで、こわいです(笑)。
そば粉も、いろいろなものを使います。どれも極上の、さらに極上の粉で、普通に流通しているそば粉とは違うものです。日本蕎麦保存会のそば粉です。
それぞれに強烈な個性を持ったそば粉なので、加水率も、45%程度のものもあれば、60%を超えるものもあります。
それを、何も言わずに渡しても、この名人軍団は、おいしい蕎麦に打ってしまうから感心します。普通にそばを打っている人には、まずできない技だと思います。
さて、明日は講座で何をするかというと、栃木在来の玄挽きの粗挽きを、九一で打ってもらいますが、やる気のある受講生は、これを生粉で打ちます。
普通では考えられないことですが、蕎麦のソムリエの軍団は、この難しい粉を生粉打ちで、なんなくこなしてしまうのです。
僕は、講座の内容をSNSにアップすることを禁止しています。だから、この名人軍団は、知られざる名人たちなのですが、みんな、自分たちが、常識はずれの名人であることに気づいているのか、いないのか、とにかくそば打ちを楽しんでいます。
いいですねえ、こんなふうに、夢中になれる人。明日は、この手強い粉を、みんなが、どんな蕎麦切りに仕上げるのか、とても楽しみです。
上手に打てば、下の写真のような蕎麦切りに仕上げることができる粉です。独特の甘みと、芳醇な香りが特徴で、張りのある麺になります。一本棒で打つので、歯が気持ち良くなるようなモチモチ感も加わって、これほどおいしいそばは、おそらく、ほかのところで食べたいと思っても、残念ながら無理だろうと思います。
蕎麦のソムリエ講座が大きく進化します
「蕎麦のソムリエ講座」、まもなく大きく進化します。今、その準備を進めています。同時に、「蕎麦鑑定士」の講座や、「日本蕎麦伝統技能保持者」の講座も、一気に三段くらいジャンプする感じで、さらに面白い講座に変身します。
あと少しだけ、お待ちください。準備ができしだい、発表しますので。
僕も、早く話したくて、ウズウズしているのですが、うーん、もうちょっとの辛抱です。
日本蕎麦保存会の、三つの蕎麦講座、「蕎麦のソムリエ講座」「日本蕎麦伝統技能保持者」「蕎麦鑑定士養成講座」に、ご期待ください。
あと少し、待ってくださいね。
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2018/04/29
一本のオリーブオイルで、こんなに楽しめるなんて
個性的なオリーブオイルが手に入ったので、きょうはサラダ作りを、あれこれ試してみました。
商品名は「サハリ エキストラバージンオリーブオイル」。スペインはグラナダの在来品種「ルシオ種」100%で作られていて、とても貴重なオリーブオイルとのこと。産地に育つオリーブの木そのものが少なくて、大量に作ることができず、あまり流通に乗らない商品です。
「幻の・・・」とか、「10個限り」とか、「今しか買えない」などと言われると、ついつい手を伸ばしてしまいがちですが、「樹木数の少ない希少種」とうたわれたこのオリーブオイルは、掛け声倒れではなく、確かに「おっ!」と思わせる、おいしさがありました。
白いスプーンにとってみると、黄緑の美しい色をしています。
これを口に含むと、うーん、緑の草の味と、ほのかな甘さ。草とイチゴとナッツをブレンドしたような香りがからみあって、舌の温度による変化なのか、次々に表情を変え、思わず意識が吸い寄せられて、目を閉じて味わってしまいます。
インパクトが強いわりに、油っぽさが希薄。これならきっと、おいしいサラダができるに違いないと、冷蔵庫にあった野菜を引っ張り出して、いろいろな組み合わせを試してみました。
パプリカの甘みと、大根のみずみずしさ、それに、からし菜をさっと湯通しして、ピリ辛でしめる。
このオリーブオイルが、もともと持っている要素を増幅させる感じで、野菜を組み合わせます。
そこに香辛料を数種、香り付け程度に抑えて加えます。塩は、油っぽさが希薄とはいっても、やはり高純度のオリーブオイル。塩角が隠されるので、意外に多く入ります。
結果は、野菜の持ち味を、ひときわ強く感じさせる、すばらしいサラダができました。
さっぱりしていて夏向き。これなら蕎麦にも似合うかも。暑い日の楽しみが、ひとつ増えました。
一本のオリーブオイルで、こんなに楽しめるなんて、うれしい出会いでした。
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2018/04/28
そばが打てなくちゃ、お嫁に行けない
僕は、一足先に帰ってきてしまったけれど、三平さんたちは、きょうも釜石でそば打ち教室です。きょうは釜石市の箱崎仮設ですね。そば打ちに参加してくださった地元の方々の笑い声が聞こえてくるような気がします。
先日の、鵜住居生活応援センターで行った、そば打ち教室での出来事なのですが、ご参加いただいた皆さんの中に、僕のお姉さんぐらいのお歳のご婦人がいらっしゃいました。女性の年齢というのは、僕にはどうも、よくわからないので、だいたい僕に姉がいたら、このぐらいの歳かなという判断での推測です。
その女性は、そば打ちは手馴れた感じで、麺棒を操る手の動きを見ただけで、「あ、これは相当、上手な方だな」とわかるほど。さっさと自分の分のそばを打ってしまうと、後から打ち始めた若い女性に、「あ、そうじゃなくて、麺棒に巻くときは・・」と、積極的にそば打ちを教え始めました。その教え方もツボを心得たもの。そば打ちの達人でなくては、こういう教え方はできません。
小柄な女性なのですが、小さな手で、直径4cmの太い麺棒を自在に操ります。一生懸命教えてくださる姿が、なんだか可愛いらしくて、教えていただいている若い女性も、それを見ている僕も、思わず笑みがこぼれてしまいます。
「お母さん、そば打ち、お上手ですね。どこで習われたのですか?」と、僕がたずねると、女性は「母親が打っているのを見て、覚えました」とのこと。
僕は驚きました。
ここ釜石付近は、そばを打つという習慣は、ほとんどないところなのです。
海沿いの地域なので、食べ物は海の幸で事足りているからなのか、今まで地元の皆さんに「おうちで、そばを打つ習慣はありますか?」と、お聞きしても、まず「そばは打たないなあ」という返事が帰ってきていました。
ですから母親のそば打ちを見て、その技を受け継いだという方は、いるはずがないと、僕はあきらめていたのです。
それが目の前にいらっしゃる・・・「お住まいは、どちらですか、釜石ですか? お生まれは?」
問いかける僕に、女性の答は「生まれは茨城です。茨城から釜石にお嫁に来ました」とのこと。茨城県のお生まれなら納得できます。なにしろ、あの常陸秋そばの産地なのですから、そばが打てなくては、お嫁に行けない土地柄だったのでしょう。何十年前の話なのでしょう。あとで、じっくり、お話しをうかがいたいものです。
女性の打ち方は、一本棒・丸延しです。これこそ正真正銘の伝統技術の継承者。僕たちの大先輩です。昔から結婚などで、こんなふうにして、ある地域のそば打ちの技術は、他の地方へと伝播していったのでしょう。こういう方が、日本蕎麦保存会のそば打ち教室に申し込んできてくださったということは、奇跡が起きたとしか思えない出来事です。
次回からは、この女性に、そば打ちの講師になっていただいたほうが、いいのではないか。そうしたら本物の、釜石のそば打ち教室になるぞと、僕は勝手に考えて、ひとりニコニコしていました。
そばを打てないと主婦は務まらなかった
女性が、そばを打てなかったら、お嫁にいけなかったというのは、誇張でもなんでもなく、事実なのです。
なぜ、そば打ちがそんなに重要なのかというと、そばは作るのに手がかかるため、昔から自分たちで食べるためというより、大切な客人をもてなすための、ご馳走でした。
農家の方々は、日常的にそばを食べる際は、簡単に作ることができる「そばがき」などを食べて、冠婚葬祭などのときにだけ、おとずれる親戚や村の人たちをもてなすために、そばを打ったのです。
お嫁さんがそばを打てないとなると、「あの家では、客をもてなすこともできない」と笑われてしまいます。これは、家の恥です。
ですから嫁入りして一家の主婦となるには、どうしても、そば打ちを習得することが求められたのです。
鵜住居生活応援センターで行った、そば打ち教室に来てくださった、この女性、写真で後ろ姿だけ、お見せしますね。一番手前の、マスクをした女性が、その方です。明るくて、きれいな模様のシャツを着た、おしゃれな女性です。いつか、この方が講師として、釜石のそば打ち教室で、そばを打っている写真を、お顔の見える状態で、ここにアップしたいものです。
この女性の打ったそばの味も、非常に興味があります。
釜石に行く楽しみが、いっぱいできました。
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2018/04/27
釜石から帰ってきました
昨晩の21時に、岩手県の釜石から夜行バスに乗り、今朝、池袋に帰ってきました。
釜石で、日本蕎麦保存会が有志の皆さんと力を合わせて、地元の方にそば打ちを習っていただく、そば打ち教室を開催しました。そのお手伝いに行っていました。
釜石は、ご存知のように、2011年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震と、それによって発生した大津波で、大きな被害を受けたところです。
海に向かって開けた町の大半は壊滅し、瓦礫の山となりました。
たくさんの犠牲者も出ました。
あれから7年が経ちます。
震災直後から、私たち『蕎麦Web』の仲間は、支援活動を行ってきました。
北海道に住んで、日本蕎麦保存会の北海道支部を背負っていただいている三平廣幸(みひら ひろゆき)さんは、すぐに被災地に飛び込み、様々な活動を献身的に続けてきました。
その後は、毎年、10日から2週間、会社を休んで三陸地方に赴き、そば振る舞いを行っています。北海道や関東地方からも、志を同じくする多くの仲間が、交代で、この活動に参加しています。
三陸の皆さんは、このそばを味わえることを楽しみに待っていてくださるのですが、それなら地元の皆さんに、そば打ちの技術を習得していただいて、自分たちで、食べたいときに打っていただいたほうが良いのではないかということになり、今年から、そば振る舞いと同時に、そば打ち教室を開催することにしました。
その事業を日本蕎麦保存会として、さらに規模を拡大して行うことになり、僕も釜石に出かけたのです。
詳しい説明は、『日本蕎麦保存会.jp』の記事に書きましたので、そちらをご覧ください。
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復興は進んだように見えるのだが
震災直後は、正視できないほど無残な姿だった町も、今では整備され、建物もだいぶ増えて、一見、復興はかなりのところまで進んでいるように見えます。
でも、実際に、ここに暮らす皆さんの生活に入っていくと、そんなに簡単なものではないということが、良くわかります。
たとえば「本日の一枚」、この写真ですが、なんの写真か、おわかりになりますか?
津波で船を流され、海辺の作業場を失った漁師さんは、今、山の高いところに家を移し、海辺ではなく、山間部の林の中に作業場を作り、ここで魚の加工作業を行っています。
日常生活の流れが、以前とはまったく変わってしまい、効率化とは縁遠い仕事の仕方になってしまっています。
すべてにおいてこういう無理が、解決されないまま続けられています。
この漁師さんは、明日はウニの解禁日なので・・・明朝、つまり今朝ですね、3時には海に出るのだと言いながら、私たちに泊まっていきなさいと、さかんにすすめてくださいました。
皆さん、大きな不安をかかえて、毎日を過ごしています。
こうした方々に、おいしいそばを打てるようになっていただき、周りの皆さんと楽しい時間を過ごしていただいて、少しでも笑顔の時間が増えてくれるといいなと思って、今回の活動を行いました。
僕の力なんて、ほんとうに微力ですが、何人もの人が力を合わせて活動することにより、状況は少しずつ変わっていきます。
少しずつ、少しずつ、少しずつ、前に進んでいきましょう。
片山虎之介/2018/04/27
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2018/4/24
タイトルの「虎視眈々」について
『日本蕎麦保存会.jp』や『蕎麦Web』を運営している片山虎之介です。
僕は、(一社)日本麺類業団体連合会と、全国麺類生活衛生同業組合連合会という、お蕎麦屋さんの団体が発行している『麺』という業界誌に、毎月、連載を書かせていただいています。そのタイトルが「虎視眈々」なのですが、それを転用して、この記事のタイトルを「虎視眈々」にしました。『麺』に連載している「虎視眈々」は、もう95回を数えます。8年近くにわたり、毎月、組合員のお蕎麦屋さんなどをレポートさせていただいています。
この団体と、僕が運営する『蕎麦Web』は、力を合わせて「蕎麦鑑定士」という資格の認定講座を行っています。毎年、2月ころに、受講生の皆さんに東京に集まっていただき、48種類の日本蕎麦の味見をしていただくという、他に例のない講座を行います。受講生の方々は、これが楽しみで、日本全国から受講に集まってくださいます。
もともと、この講座は、2010年に僕が「蕎麦Web検定大学」としてスタートさせた講座が、あまりにもお申し込みくださる方が多くて、ひとりの手にはおえなくなったので、2012年に日本麺類業団体連合会さんにお願いして、一緒に運営していただくことになったものです。おかげさまで今は、「蕎麦鑑定士」養成講座の名称で、蕎麦を愛するたくさんの方が受講してくださっています。
この「虎視淡々」には、ホンネを書きます
僕は、文章を書いたり、写真を撮ったりするのが仕事です。一般の雑誌など、公の媒体に書く記事は、どうしてもタテマエで固めないといけないことが多くなります。これは仕方のないことなのですが、自分の中にあるホンネをいつも喉元で抑えながら記事を書いていると、ものを書く作業に、だんだん疲れてきます。
ですから、この『日本蕎麦保存会.jp』に書く「虎視眈々」では、ホンネを書きたいと思っています。毎日、僕の身の回りに起こっているさまざまな事を、この体で感じたそのままに書けたらいいなと思います。
100%ホンネだけで書くというわけにもいかないとは思いますが、まあ、遠回しにとか、比喩や暗喩を使ったりとか(笑)、そこはいろいろなテクニックを使って、お伝えすべきことは伝わるように書いていくつもりです。
できれば、毎日書きたいと思いますが、物理的に難しい日もありますので、ときどき、お休みさせてください。僕は三日坊主のことが多いので、もしかしたら、結構、短い期間で休止宣言など出すことも、ないとは言えませんが、そんなときは「ああ、やっぱりな」と、どうか大きな心で見守ってください。m(_ _)m
早速、明日ごろから書き込むのが難しくなります。また、その事情は後日報告しますが、3〜4日、音沙汰なしになるかもしれません。でも、そのあとまた書きますので、ちょっとだけ、お待ちください。
で、ここまでは、「虎視眈々」スタートのご挨拶でした。
在来種そば連絡協議会のこと
きょうの話題は、「在来種そば連絡協議会」のことです。
在来種そばの生産者と、在来種そばをメニューに載せたい、やる気のある蕎麦屋さんを結び付けたいという気持ちから「在来種そば連絡協議会」を発足させたのですが、予想以上にたくさんのお申し込みを頂戴して驚いているところです。
すでに生産者や蕎麦屋さんだけでなく、製粉会社や自治体からのお申し込みを、いくつも頂戴していて、これは腹をくくってやらなければと、決意をあらたにしているところです。
申し込んでくださる皆さんは、それぞれ蕎麦に対して強い思い入れをお持ちで、「おいしい蕎麦を作りたい」という一途な思いは、こちらの胸を熱くさせます。そういう方々と出会える機会が得られることは、僕が、この仕事を続けている大きな理由です。
何かに熱中できる人、大好きです。
また「在来種そば連絡協議会」の進展の様子なども、この「虎視淡々」の中でお伝えしていこうと思います。
おいしい蕎麦、楽しみましょうね。ご一緒に。
片山虎之介/2018/04/24
(本日の一枚です。パソコンのデスクトップ用に撮りました)