千利庵 (山形県白鷹町) 「隠れそば屋の里」にある蕎麦屋
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この日、私は山形県長井市に出張しておりました。職場の近くに、有名なお蕎麦屋があるということで、お昼休みに職場の友人と二人で、そのお店に行くことにしました。このお店がある白鷹町は「隠れそば屋の里」と呼ばれています。すぐ近くには、最上川が流れており、朝日連峰がそびえています。
最寄りの駅は「蚕桑(こぐわ)」駅です。無人駅なので、タクシーも停まっていませんので、徒歩ですとお店まで30分ぐらいはかかります。「長井」駅からタクシーに乗車されるのがお勧めです。「長井」駅から車で国道287号線を約15分走ると、左手に大きな看板が見えてきます。その看板の手前の道を左折して、真っ直ぐ進みますと右手に「千利庵」と書かれた紫紺色の幟が見えてきます。
駐車場があり、30台ぐらい駐車できるスペースがあります。お店の外観は、女将さんの実家をお店に少し改装されたものだそうで、いかにも田舎のお家といった感じの古民家風の構えです。金曜日の開店時刻の10分前に到着したのですが、既に1組の中年のカップルが並んでいました。待っている間、店主がそばを打っているのを窓ガラス越しに見学することができました。
オープンの時刻となり、女将さんが、「蕎麦」と書かれた紺色の暖簾を出してこられて、私たちにご挨拶され、お店の中へと案内していただきました。靴を下足箱に入れて、障子を開けると、店内は広々とした座敷でした。テーブルが置かれ、座布団が敷いてありました。私たちの後にも、続々とお客さんが入ってきました。
このお店のメニューは「もりそば」(800円)と「おかわり」(600円)のみで、つなぎが入っていない十割蕎麦です。「大盛り」はありません。「寒ざらしそば」が美味しいと聞いていたので、女将さんに尋ねましたら、「寒ざらしそばは、毎年3月以降にならないと食べられませんよ。」と教えていただきました。店内が混んでいる時に、「もりそば」を食べ終えてから、「おかわり」を注文すると、時間がかかると聞いていましたので、「おかわり」も一緒に注文しました。
このお店の蕎麦は、全て福島県山都町産の在来種です。現地の雪室で貯蔵された蕎麦を仕入れる前日に挽いてもらうので、常に鮮度の良い蕎麦を食べることができるのだそうです。
ネットで調べたのですが、雪室とは冬期に降り積もった高密度の雪を送風機により、雪の冷温で低温貯蔵する施設のことです。冷蔵庫でも低温で貯槽できますが、蕎麦の実は乾燥してしまいます。雪室では、温度は5度、雪の水分で湿度は70%に保たれ、梅雨の高湿度や夏の高温による変質からそばの実は守られ、年間を通じて収穫時期に近い本来の風味が保たれるのだそうです。
5分後に女将さんが、注文した品を持ってきてくれました。蕎麦は、せいろではなく、お皿に盛りつけられていました。そばの外観は、薄い灰色です。麺の太さは細く、長さは長く、量はおかわりするのに丁度いいボリュームでした。麺はできたてなので、瑞々しく断面には角がありました。ホシもありました。
一口目は、細麺を箸で3本つまみ上げて、そのままいただきました。蕎麦には、ほんのり甘さを感じました。麺の舌触りは、つるつるしており、麺のコシはしっかりしていました。二口目は、そばの上に山葵を少し乗せて、そのままいただきました。山葵の辛味が鼻にツーンと抜けていくのと、麺が冷たく、しっかりしており、十割蕎麦なのに噛み応えがあり、そばのおいしさを感じることができました。
つゆはアゴ(飛魚)、鰹節、昆布の出汁を使っているとのことでした。猪口に入ったつゆを味見してみました。汁を舐めてみた印象は、濃い目のつゆで、鰹と昆布の出汁が効いていました。
いよいよ、そばに山葵を乗せて、そばにつゆをつけて、一気にそばを口の中に入れました。麺がツルツルしているせいか非常にのど越しがよく、つゆの香りも口の中に広がっていきました。
女将さんが「おかわり」と「そば湯」、「おかわり用のつゆ」を持ってきてくれました。十割蕎麦なので、すぐに食べないと伸びてしまうと思ったので、おなかも空いていましたので、一気に平らげました。味卵と漬物が付いていました。味卵は、白身部分までしっかり味付けされており、半熟の黄身はトロトロで、絶品でした。漬物もおいしくいただきました。
女将さんが持ってきてくれた半透明の蕎麦湯をつゆに入れて飲んだのですが、飲んだ印象はつゆの味が程よく、さっぱりとした味わいでした。
この店の店主は、そば打ちを独学で学ばれたそうです。早朝から打ち始めて、1日50食が限度だそうで、11時から14時までの営業時間なのですが、昼過ぎには閉店になることもあるそうです。毎日、試行錯誤しながら、打たれたのでしょう。自己研鑽した結果、こんなにもおいしい蕎麦が打てるようになられた店主の職人魂には、敬意を表したいと思いました。
勘定を済ませて、お店を出た後、友人が「次は、寒ざらしそばを食べたいね。」と満足げに語ってくれました。「自分もぜひ食べてみたい。」と思いました。
私としては、お店の雰囲気、店主の職人魂、「雪室そば」の味等を総合して、大満足のお店でした。
(レポート提出/いり番茶)
【 店 名 】千利庵
【 読 み (ひらがな)】せんりあん
【 店の電話番号 】0238‐87‐2087
【 住 所 】山形県西置賜郡白鷹町広野1656
【 アクセス 】フラワー長井線「蚕桑」駅より徒歩30分
【 営業時間 】11:00~14:00(蕎麦が売切れ次第閉店)
【 定 休 日 】水曜日
【ひとり分の平均的な予算】昼 1000円
【 予 約 】不可
【クレジットカード】不可
【 個 室 】無
【 席 数 】 30席(全て座敷テーブル)
【駐 車 場】 有
【 煙 草 】禁煙
【アルコール】有
【店のホームページ】有