手打ちそば 東風(島根県松江市)「東風吹かば蕎麦のかおりや嫁が島」そば通が通う店
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JR松江駅から徒歩約10分。新大橋通りを南へ国道9号線突き当りの交差点に面した3階建のビルの1階に東風はあった。以前私の蕎麦仲間から松江に行ったらこの店の蕎麦を一回は食べておいたほうがいいと言われていたので出張に併せて寄ってみた。
営業中の木札が入り口の戸に未曾有さに立てかけられ、藍染めの少し色褪せかけた暖簾には八雲が二つ神話の国出雲らしい。
戸を開けて暖簾をくぐると少し暗めでレトロな雰囲気の店内でまず目を引くのが使い込まれた歴史感のあるカウンター。そして客席の狭さ。カウンター6席と2人掛けのテーブルが2つ、10人で満席の小さな店である。カウンター内の隅には50リットルほどの大きなガス釜がある。棚には各地の日本酒が置かれている。
奥さん思われる女の方に笑顔でカウンターに案内され中ほどに座る。この店を訪れた理由をお話し、行列ができるほどの店で外に並んで待たなければ食べられないと聞いて来たが昼時だというのに先客はいないのはと尋ねると、主人曰く、土曜祝日等は多いが普段はこんなものです。今日は雨も降っているからとのこと。
早速メニューを見ずにザルの十割を注文したがザルは挽ぐるみの二八で新ソバではないとのことであった。割り子、おろし、とろろは十割とのことであったが、蕎麦の味が一番わかるザルを注文した。今年は国内産蕎麦が不作で粉屋さんも国内産玄蕎麦の確保が大変らしくほしい蕎麦粉が手に入りにくいとのこと。
釜の前で生蕎麦用のタッパーから一人前の蕎麦を手に取り沸騰した大量の湯の中にそっと滑らせやさしくかき混ぜ約20秒?ほどですくい揚げ、水にさらし洗い〆る。しっかりと水を切り出来上がり。ザルとはいっても少し底のある皿に盛りつけた皿蕎麦である。
皿も特注品のようでセンスが良い。挽きぐるみと聞いたので全層粉で色黒を想定していたができてきたのは色白。殻ごと挽いてはいるが甘皮部分の末粉は極力除かれていると思われる上質粉ならではの独特の透明感と切れのある角立ち、適度なホシ、やや細めでほぼ均一に切られた長い麺線。仕事の正確さがうかがえる一品である。
早速一口分取ってすすりこむ、挽きぐるみのザラつきを感じながら口の奥へ、甘皮部分は少ないが澱粉部分が多いため口に入れてすぐにくる風味は少ないが奥歯で噛んだ時のプリンとした歯切れの良さと甘み、そしてほのかな蕎麦の香りが口内に広がる。そしてザラツキ感を残しながら喉を降りてゆくときの蕎麦独特の感触がまたいい。
次に汁を少し口に含む。カツオと昆布のうまみに返しの醤油の香りが品よく調和した少し甘めの汁である。一箸麺の先を汁に浸けすすりこむ。やや細くて表面にざらつきのある麺にほどよく汁が絡み先ほどとは別なものに変化していくのがわかる。薬味はさらしネギとワサビのみでシンプル。出汁の旨味と醤油の香り、蕎麦の香りと甘み、麺の歯切れと喉越しのザラツキ感、薬味の香り、喉を越した後の爽快感。
それぞれの変化を楽しみながら最後の一本まで味わった最高の一品でした。
あらためてメニューを見ると、冷が割子、ザル、おろし、とろろ、温が釜揚げ、釜揚げとろろ、磯のりの二八とザル以外は十割がありその日の気分でいろいろ楽しめそうだ。
帰省後友人にこの店の主人は出雲蕎麦の激戦区の出雲大社界隈で修業をしたと聞いて納得。
石臼手挽き挽きぐるみ十割そばも出すそうで蕎麦に対する熱い情熱がうかがえる。また木、金、土曜は夜も営業で島根の地酒が楽しめる。機会があれば、ではなく是非この手挽き十割蕎麦を肴に地酒をゆっくり楽しんでみたい。
(レポート提出/蕎麦仙人)
【店名】東風
【読み(ひらがな)】こち
【 店の電話番号 】0852-67-2618
【 住 所 】島根県松江市雑賀町237-3
【 ア ク セ ス 】松江駅南口から徒歩で約10分
出雲空港から松江駅まで連絡バスで約30分
【 営 業 時 間 】月~金曜日11:30~15:00 木金土曜日17:30~21:00
【 定 休 日 】毎週日曜日、月曜日
【ひとり分の平均的な予算】昼1,000円~ 夜1,000円~
【 予 約 】可
【 クレジットカード 】不明
【 個 室 】無
【 席 数 】10席
【 駐 車 場 】4台
【 煙 草 】禁煙
【 アルコール 】有
【店のホームページ】無
【地図にリンク】https://goo.gl/maps/8nx3bTyGDSp