民芸茶房 鷦(島根県松江市)出雲路に臼挽く暮れやみそさざい 色黒で味わい深い乱切り蕎麦
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国宝松江城から徒歩5分、城下町として栄えた水の都松江の中心部。宍道湖から中海に流れる大橋川沿いの松江大橋の袂でかつては京店商店街としてにぎわいを見せた通りにある洋装店の傍らに出雲そば食事処の暖簾が見えた。暖簾に誘われて奥に進むと看板に手打ち出雲蕎麦隠れ家鷦庵とあるが何庵なのか読めない。
その下に食事喫茶は奥ですとの赤表示。奥へ進むと民芸品と陶器がずらりと並ぶギャラリー。間違えたかなと見廻していると洋装店の女将さんからそのまんま真っすぐ入ってくださいとの声。
ギャラリーの奥に蕎麦屋の暖簾を見つけやっと店内に入る。中に入ると古民家を解体再利用したのかむき出しの太い小屋組みに泥壁。明治から昭和にかけての民芸品が飾られ、表の民芸品店の延長といった雰囲気。テーブルが5つで24席、カウンターが4席の計28隻の落ち着いた雰囲気。11時30分ということで客はまだなく奥から2つ目のテーブルに座った。注文を聞きに来たのはこの店の主人、松江のそば屋では一番若手と聞いている。
まず店名の鷦の読みを聞くと「みそさざい」で「ささき」と読む、鶴は画数が多いのでこの字にしたとのこと?。後で検索するとササは小さいの意、キは鳥を表す接尾語でつまりササキ(若しくはササギ)は小さい鳥を意味し佐々木の源であったとみられる。
この店の蕎麦粉は北海道から玄蕎麦を仕入れ外で製粉をお願いしているとのことで麺は二八の手打ち。早速11種類の蕎麦メニューの中から割子そばをお願いした。
後から2組サラリーマン風の客が来店。言葉で県外からの客と分かった。
一組は割子そばを注文し、私の隣のテーブルのもう一組は割子蕎麦とシジミ御飯のささきセットを注文し店の名前が気になったのかスマホで検索開始。
注文の割子蕎麦が運ばれ上段の薬味を下ろして二段目の蕎麦を覗くと、蕎麦の香りとともに角の立った色黒の麺が現れたがホシがない。見るからに麺のコシとツルリとした触感が伝わってくる。ホシが無いのは丸抜き粉、色が黒いのは甘皮粉を多くブレンドしているからかなどと分析をしながらまず一箸取ってそのままいただく。
滑らかな舌触りとともに甘皮部分の香と甘みが口の中にふわーっと広がる。想像どおりの蕎麦フレーバーに魅せられ二箸三箸汁をかけずに風味を楽しむ。歯ごたえは少し重いが噛めば噛むほど甘さが増し風味も広がり喉越しもやさしい。二枚目からは汁をかけていただく薬味は入れない。汁を少し舐めてみると返しの寝かせ具合もいいようで醤油の香りが心地よく鼻に抜け、再仕込み醤油のまろやかな味わいが広がる少し甘めの汁である。
汁を少しかけ一箸、蕎麦の香りと醤油の香りが口の中で一体になりスッピンの蕎麦とはまた違った艶のある奥の深い味に変化していく。三枚目は薬味を入れていただく。鰹節、ネギ、のり、麺と汁の風味が融合したこれまでとは別の賑やかな味に引き込まれてあっという間に完食。
この店の割り子蕎麦を食べて印象に残ったことは麺が短く不揃いということである。私もよく蕎麦を打つが旨い蕎麦の条件の一つに太さの均一性を言われるのだが、それを覆すような挑戦的な蕎麦である。
今回の蕎麦は丸抜き挽きぐるみの田舎風、噛んで味わう蕎麦である。江戸蕎麦のように喉で噛んで味わう蕎麦ではなく、しっかりと歯で噛めば噛むほど味わい深い蕎麦である。蕎麦七寸というがそれにも満たない長さで太いのは割りばし大、細いのは竹串大と不揃いだが硬茹でにすることで柔硬の差があまり出ない。
口の中での細麺、太麺の触感が意外と変化があっておもしろい。細い蕎麦はそこそこ噛んで喉に送り込み、太い蕎麦はしっかり噛んで風味を楽しんだ後に名残を惜しみながら喉に運ぶ、そしてまた一箸といった具合に箸が後を引く味わいにつながっている。もし計算した太さの加減であるのなら蕎麦通の舌を、いや心を捕らえること間違いない。
蕎麦とは不思議な食べ物である。「明日の蕎麦は今日の蕎麦に非づ」、今日のこの蕎麦に敬意を払いながらいただいた、まさに一期一会の一品であった。
後日電話で十割蕎麦がメニューにないのはと伺ったら十割は切れるからやらないとのことであった。十割しか打たない私にとっては是非挑戦していただいてメニューに加えてほしい想いである。
次回訪れる時は太打ちの生粉打ち割り子をつまみに純米の地酒に酔ってみたい。
(レポート提出/ 蕎麦仙人)
【店名】 民芸茶房 鷦
【読み(ひらがな)】 みんげいさぼうささき(鷦=みそさざい )
【 店の電話番号 】18512-21-2266
【 住 所 】 島根県松江市末次本町22
【 アクセス 】 JR松江駅から路線バス8分大橋北詰下車徒歩1分
JR松江駅から約1.2km徒歩15分
一畑電車松江温泉駅から約950m徒歩13分
【 営業時間 】 9:00~18:00 日曜営業
【 定 休 日 】 なし(年末年始休み)
【ひとり分の平均的な予算】~1000円 夜~1000円
【 予 約 】 可
【クレジットカード】可(JCB、AMEX)
【 個 室 】 なし
【 席 数 】テーブル24席 カウンター4席 計28席
【駐 車 場】 不明
【 煙 草 】 禁煙
【アルコール】 有
【店のホームページ】 http://www2.crosstalk.or.jp/mingei-sasaki/
【地図にリンク】https://goo.gl/maps/59zKfnEubgH2