茨城県のおいしいそば屋

茨城県の中でも此処つくばは国や民間、ベンチャー等様々な研究機関が集結しているエリアである為か所謂「進んでいる」「先端を行っている」「外国の様な」「お洒落な」など聞いてるこっちが恥ずかしくなるような形容をして頂く事も多い。しかしそれはごく一部の限られたエリアの話であって、実際には車が無ければ生きていけない田舎町である。

今回訪れたのはそんな市内から少し離れた田園風景が広がる自然豊かな場所で店を営む「手打ちそばいちい」さん。以前から気になっていた店である。
コロナ禍の直前、この店のはす向かいにオープンした小さなカフェで熟練バリスタが淹れる美味しいコーヒーを啜りながら20台は止められると思しき広い駐車場へオープン前から次々と吸い込まれていく車の列を眺めながら「この蕎麦屋はきっと美味いに違いない」と直感した。金砂郷産の常陸秋蕎麦を使用した外二(そば粉十割に繋ぎ二割)という珍しい蕎麦を提供し続けている、地元に愛される隠れた名店である。

胃袋も準備万端、メニュー表に大きく掲げられてはいないがこの辺ではあまり見かけない数量限定の「釜揚げせいろ(十割)」と「蕎麦生麩田楽」を目指していざ出発!

少し早めに到着したので開店時刻まで車内で待機する。大きな和風建築の一軒家。そして広々とした駐車場。換気の為に開け放たれた窓という窓から鍋や食器、椅子を動かす音、仕込みだろうか水道水や忙しく立ち働く人の物音が漏れ聞こえてくる。爽やかな秋晴れのこの日、何とものどかなひと時である。
ほどなくして開店準備が整ったのか、時間前だというのに「少し早いけどどうぞ~!」とおかみさんが店内へ招き入れてくれた。ジャズが流れる店内。真っ先に目に飛び込んで来るのは2窓の巨大な窓から見える青い空に浮かぶ白い雲と筑波山、そして美しい田園風景である。1枚の大きな絵画を観ているようで息を呑む美しさである。

運ばれて来た温かいそば茶を頂きながら早速釜揚げせいろ(十割)を注文する。が、「すみません。釜揚げは土日のみの予約メニューで今日は出せないんですよね…。」なんと!レギュラーメニューでは無かったのか?!あ~下調べが甘かった。が仕方ない。ここはシンプルにせいろを注文しよう。一瞬絶句した後「因みに釜揚げはどんな麺でどんな味がするんですか?全然食感も違うんでしょうか?つけ汁はどんな感じですか?」と質問すると釜揚げせいろにこんなに食いついてくる客が余程珍しかったのか、親切に「ホントに美味しいんですよ~!私達も賄いで食べるんですけど柔らかくてもう全然せいろとは別の食べ物ですよ」と笑顔で答えてくれた。そして「そんなに食べたかったら賄いの釜揚げ、味見出来るかどうかおかみさんに聞いてきてあげる!」とまで言って下さって。「いえいえ大丈夫です。改めて今度ちゃんと予約して食べに来ますから」と言うか言わないうちに「おかみさ~ん!」と奥へ消えて行き代わりに奥からおかみさん登場。「お客さん釜揚げ食べたかったんだって?ごめんなさいね。十割の釜揚げは土日しか無いのよ。でも賄いので良ければ味見してみる?十割じゃ無いから細麺だけど私はこっちの方が好き。十割のは賄いの3倍の太さだからまた違う感じなんだけど…。普通のそばつゆと大根おろしに柚子とポン酢をかけて付けて食べるのと2パターンあるけど、どっちにする?」とても親切なおかみさんの申し出に恐縮しながらも「ではポン酢の方でお願いします。それとこの分もきちんとお支払いしますのでお値段おっしゃって下さい。」と申し出ると「うーん、賄いだから売った事無いし、初めてだからねぇ…。じゃあ今回はせいろと同じ値段でどうですか?それと食べてみてお腹いっぱいだったら無理して注文したせいろ食べなくて良いからね。キャンセルしても良いからね。先ずは釜揚げ持ってくるから。」「有難うございます。では釜揚げ頂いた後にせいろと蕎麦生麩田楽も頂きますので宜しくお願いします。」こんな会話が交わされた後、釜揚げが到着する迄の間じっくりとメニュー表に目を通す。とても充実したラインナップ。特にランチではセットメニューが多く王道の天せいろや天茶漬けセット、焼肉丼セットまである。温かい天婦羅蕎麦や牡蠣蕎麦、生姜蕎麦などは寒いこの時期魅力的だしおろし蕎麦をはじめ茄子の揚げ出しぶっかけやトマトせいろ、キムチ蕎麦など変わり種の蕎麦も楽しめる。昼時に差し掛かり近所の常連客が次々と入店。年齢層は比較的高めで一人客、家族連れ問わず皆天麩羅のセットを注文している。この店は天麩羅推しなのだろう。(梅干の天麩羅もある!)皆が頼むのだから、きっと美味しいに違いない。


そうこうしているうちに前述の釜揚げせいろが到着。白濁しているがさらっとした温かい蕎麦湯に浸かった麺は細く柔らかでつるっと喉越しが良い。陽に透かすと薄緑にも見えるが全体的に少し茶色みを帯びており、薄赤茶の小さな星が確認出来る。蕎麦湯だろうか、顔を近づけると温かい湯気と共にふわっと蕎麦の香りが微かに立ち上って来る。甘めの大根おろしに酸味を抑えた自家製ポン酢を加え、柚子の香りと共に釜揚げ蕎麦を一気に啜り上げる。実に優しい味である。角が取れて柔らかい蕎麦はするすると喉を滑り落ちてゆく。これはきっと風邪で食欲が無い時や病み上がりにもうってつけの食べ方だと思う。蕎麦が苦手な子供でもこれなら食べられそうな気がする。途中きゅうりの糠漬けで口直し。今度は別添えで付いてくる本わさびと葱を蕎麦にちょこっと乗せて大人の味を堪能する。もう止まらない美味さ!是非ともレギュラーメニューに加えて欲しい逸品である。

頃合いを見計らって蕎麦生麩田楽と共にせいろが届く。上品な甘さの黒胡麻味噌が柔らかい生麩に良く馴染む。粗く挽いた蕎麦の粒々が生麩の食感にアクセントを加え蕎麦の香りと共に田楽味噌の香ばしさをより一層引き立てている。口直しには最高の一品である。


一方のせいろは釜揚げと打って変わってしっかり冷えた歯応えのある蕎麦。不揃いな細麺ではあるがそれがかえって喉越しにアクセントを加え、ねっとりと円やかでありながら鼻に抜けるピリッとした本わさびの辛さを上手く引き立てている感じ。蕎麦の香りはあまり感じられないが、薄緑色の麺の奥には赤茶の星が点在している。しっかりと出汁の効いたつゆは本当に美味しい。黒々してはいるが辛過ぎず甘みもあるのでちょこっと乗せた本わさびや葱とのバランスも良い。最後につゆを少しだけ残し、そこに蕎麦湯を加え本わさびを溶かし込んで葱を浮かせれば〆のスープ完成である。最後にそば茶ゼリーの黒蜜掛けがデザートとして出されるのだが予期せぬサービスに嬉しくもありお腹が破裂しそうでもあり…。

唯一つ残念なのはせいろで供された漬物の小皿が欠けていた事。たまたまだったのか?美味しい蕎麦を頂いた後だったので余計目についてしまった。改善される事を願い次回に期待したい。

魅力的なメニューが豊富な上とても親切な対応をして下さる「いちい」さん。決して安くはないがそれに見合うだけの満足感をきっと味わう事が出来るであろう。次は天婦羅と十割の釜揚げせいろを頂きに再訪したいお勧めの店である。

(レポート 玄)

 

【 店の電話番号 】
029-857-4140 (050-5487-3066)
【 住 所 】
茨城県つくば市金田2177-2
【 アクセス 】
車(TXつくば駅から車で約10分)
TXつくば駅からバスで約20分
つくバス 金田西ていりゅうじょ徒歩5分
【 営業時間 】
火曜日~日曜日 11:30~20:30(ランチは11:30~15:00)
【 定 休 日 】
月曜日(祝日の場合は営業、翌火曜は定休)
【ひとり分の平均的な予算】
900円~1800円位
【 予 約 】

【クレジットカード】
【 個 室 】

【 席 数 】
約50席(4人掛けテーブルが3つ、座敷に4人掛けテーブルが4つ、6人掛けテーブルが1つ、もう一つの座敷(個室?)にもテーブル席有
【駐 車 場】
有(約20台)
【 煙 草 】
【アルコール】
【店のホームページ】
https://gg2k300.gorp.jp

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