そば処 椿野 (茨城県つくば市)  釜揚げで頂く黒挽き十割蕎麦は絶品!とろりと絡む胡麻だれの香りに暫し酔いしれる

茨城県のおいしいそば屋

つくば市内から少し離れた住宅街の中に佇むごく普通の一軒家。太陽の光を浴びてキラキラと輝きを放つ目の前の田んぼからは静寂を切り裂いて蛙の声が(稀に潰れかかった変な鳴き声も交じりつつ)大小折り重なるように辺り一帯に鳴り響く。のどかで自然豊かなこの場所で「椿野」さんは暖簾の無い小さな蕎麦屋を営んでいる。

この日は夏日。カラッとしていながらも日差しは強く朝から途轍もなく暑い。
こんな日は冷たい蕎麦をつるっと手繰りたくなるもの。ドライブがてら少し足を延ばして以前から気になっていた「椿野」さんを訪れてみる。


開店と同時に入店すると、先ず目の前に現れるのはこの店のシンボルであろうか?薪ストーブである。天井は高く白と茶で統一された明るい店内に静かに流れるクラシックのピアノ名曲集を聴いていると、此処が蕎麦屋である事を忘れてしまいそうになる。レジ前の小さな飾り棚には動物の置物やコップ、豆皿、絵葉書など作家さん達の作品が展示されており購入も可能。アットホームな雰囲気漂うギャラリーカフェとでも言おうか…今風の和モダンな室礼である。

この日は一番乗りでの入店であるが、後から近所の夫婦連れや予約客のビジネスマン、新入社員のグループであろうか?少し早めのランチを頂きに続々と入店しあっという間に席が埋まる。殆どの客が日替わり小鉢、天ぷら、そばorうどんを選べる1200円のランチセットや同じく1200円でそばorうどんと小丼(親子丼or野菜天丼or豆腐丼)が選べるセットを注文している。大盛も各265円でオーダー出来る事からどうやらビジネスマンの利用客が多いようである。


この店で提供するのは常陸秋蕎麦の二八蕎麦である。たまに調整的に福井の蕎麦粉を少しブレンドする時もあるらしいのだが、今ではそれも殆どしないという。二八が切れたら数量限定で十割を提供。他にも殻ごと製粉した太めの「黒挽き十割」という蕎麦があるのだがこちらも非常に興味をそそられる一品である。温かいそば茶を頂きながらメニュー表を吟味し、黒挽き十割への未練を残しつつも先ずは「山菜天ぷらセット」を十割蕎麦に変更してもらい、それと単品で「エビとアボガドのわさび醤油和え」を注文する。

程なくして運ばれて来た十割蕎麦は中細で瑞々しくつるっと喉越しが良い。適度な硬さでスパッと切れる歯応えも悪くない。殆ど香りを感じない白っぽい麺ではあるが、その中には所々僅かに薄茶の星が確認出来る。つゆは少なくほうじ茶位の色味であるが、出汁は効いていてどちらかというとしょっぱめである。イメージするなら市販の麺つゆのストレート位の濃さで駅の立ちそばのあのす~っと惹きつけられるような香りを持ったつゆに近い。

特筆すべきは付け合わせの薬味でこの店ではネギと共に供されるのは本わさびの1.5倍の辛さを持つと言われる「山わさび」なのである。ローストビーフの付け合わせに添えられるあのホースラディッシュである。痺れるようなピリッとした辛さのこの白い山わさび、これがこの蕎麦とつゆには不思議と良く合い後引く美味さなのである。
抹茶塩で頂く山菜天ぷらは衣が薄くサクッと軽い口当たりでほんのりとした苦みが春を感じさせる一品である。


乳白色でさらっとした蕎麦湯を呑んで一息つくが、やはりどうしても黒挽き十割の釜揚げが気になって仕方がない。お腹に少し余裕もある事だし、今日の夕飯を今食べたと思えば良いか…と自分を納得させ「釜揚げの黒挽き十割」を「胡麻だれ」で追加注文する。季節柄釜揚げもそろそろ提供が終わりを迎える頃だろう。ご縁があるうちに食してみなければ!という気持ちで到着を待つ。


湯を張った熱々の黒い鉄鍋の中で泳いでいるのは黒みがかった太い平麺。麺の中には黒い星が沢山確認出来る。口の中に入れると水分を含んでほんの少しだけ柔らかな食感になった蕎麦は、まるでパスタの生麺のようなモチモチ感でつるっと口の中を通り過ぎ胃へと滑り落ちてゆく。決して延びたわけでは無くしっかりと噛み応えのある蕎麦でとても美味しい。計算された太さなのであろう、噛めば噛むほどに蕎麦の香りが口いっぱいに広がってゆく。先程の十割よりもこの黒挽き十割の方がより蕎麦の香りを強く感じる。顔を近付けると温かい湯気と共にふわっと香る蕎麦の香りは本当に心地良く、幸せを感じる瞬間である。胡麻だれとの相性も抜群で蕎麦を手繰る手が止まらなくなってしまう。微かな胡麻の苦みと出汁とのバランスが良いのか、しょっぱめの胡麻だれは麺を絡めるには丁度良い濃さである。例えて言うならカルボナーラであろうか、とろっとよく絡む胡麻だれは絶品なのである。釜揚げの十割蕎麦は以前他店でも頂いた事があるのだが、麺の形状も付けダレも違い店によって大分印象が変わるものだなぁ~と改めて釜揚げ蕎麦の奥深さを感じる。最後にさらっとした蕎麦湯で口直し。これからの時期「みぞれ蕎麦」や粉山椒をかけて頂く薄味の「京風親子丼」なども是非頂いてみたいお勧めの店である。

(レポート 玄)

 

【 店の電話番号 】
029-864-8985
【 住 所 】
茨城県つくば市筑穂3-7-7
【 アクセス 】

(つくば学園西大通りを筑波山方面に直進、土木研究所を過ぎて教員研修センター脇の信号を右折、直進して1つ目の信号を右折後2つ目の角を左折すると右手に見える)
【 営業時間 】
11:30~14:30(ラストオーダーは14:15)
17:30~20:30(ラストオーダーは20:15)
【 定 休 日 】
木曜日、第一水曜日、水曜と日曜の夜(昼は通常営業)
*月曜が祝祭日の場合は日曜夜営業、月曜夜は休業
【ひとり分の平均的な予算】
約1000円~2000円
【 予 約 】

【クレジットカード】

【 個 室 】

【 席 数 】
22席(4人掛けテーブルが2つ、カウンターが4席、座敷に掘り炬燵の4人掛けテーブルが1つと同6人掛けテーブルが1つ)
【駐 車 場】
有(4台)
【 煙 草 】
全席禁煙
【アルコール】
瓶ビール、日本酒(地酒)、焼酎、ワイン、ノンアルコールビール
【店のホームページ】

 

 

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