蕎麦蔵 めぐみ (茨城県石岡市) つゆのうま味が後を引く。かけ蕎麦の名店此処にあり!
- By: Reporter
- カテゴリー: 茨城県のおいしいそば屋, 関東地方のおいしいそば屋, 関東甲信越のおいしいそば屋, 玄, 北関東のおいしいそば屋, 蕎麦Webレポーター別、そばのクチコミ, おいしいそば屋の食べ歩きレポート
用事で石岡に行くついでに以前から気になっていた蕎麦屋を訪問するがまさかの臨時休業。慌ててその場から行ける範囲内で蕎麦屋を検索するがひと口に石岡と言ってもこの界隈だけで60軒は下らない。そば処でもある石岡地区には実に沢山の蕎麦屋が点在しておりその中から数分で納得のいく好みの店を見つけ出そうなどというのは端から無理な話。何と言ったら良いのか…今日はあまり冒険したくない気分なのである。
という訳で一から探すのは早々に諦め、この場所から掛かる時間と距離は知る由もないが取り敢えずふっと頭に浮かんだ石岡で行ってみたい蕎麦屋の一つ「蕎麦蔵 めぐみ」さんを目指すべくナビにセットして出発する。果たして無事に辿り着けるのだろうか?土地勘の無いこの町で迷子になったらどうしよう…様々な不安が頭を過るが、ここはひとつ信頼出来るGoogleに全てを委ねショートトリップを暫しの間楽しむ事にしよう。
ナビに従い大きく道を横断する形で田んぼ道をひた走る事20分。人も家も何も無い。本当にこの道で良いのか?まさかの迷子か?と心配になってきた頃、山裾にポツンと現れた一軒家。ナビは到着を告げている。此処かな?速度を落とし家の様子を伺うと真っ白い暖簾に品良く「蕎麦蔵 めぐみ」と書かれている。あ~良かった!此処だ…ホッと胸を撫で下ろす。道を挟んではす向かいには関東鉄道バスの柿岡車庫がある。バスの停留所もレトロな感じで非常に味がある。そして広い車庫の奥へと続く砂利の敷地には映画でしか見た事が無い古びた観光バスやボンネットバスなどが幾つも陳列されている。(野ざらしだから放置かな?)何だかここだけ切り取られたようなタイムスリップしたかのような不思議な感覚に陥るが、どうやら映画やドラマのロケ地にもなっているようで得心した。
この時期水田に映り込むのは新緑に彩られた里山の風景である。時折風で揺らぐ水面に落とし込まれた緑のグラデーションが陽の光を浴びてキラキラと輝きを放つ様は、餌を啄む白サギの優美な姿と共に実に爽やかで心が洗われるような何とも言えない風情がある。恐らく私が通って来たのは裏道と思われるが、お陰で来る道すがら美しい景色も堪能出来たし幸先が良い滑り出しである。「めぐみ」さんのお蕎麦との出会いにも期待が持てそうな予感がする。
「めぐみ」さんは昼しか営業しない手打ち十割蕎麦の専門店である。白壁と木材が醸し出す蔵造りのような美しい佇まいの日本家屋で提供するのは石臼挽き自家製粉(丸抜きの挽きぐるみ)した常陸秋蕎麦の十割蕎麦で、天麩羅や酒の提供は一切無い。蕎麦一本で勝負する拘りの店なのである。夫婦2人で営む小さな蕎麦屋なので蕎麦の提供には少々時間が掛かると心得て、こちらも時間に余裕を持って訪れたいところである。
到着したのは開店から僅か10分後である。にも関わらず店は既に満席。レジ横の名簿に名前を記入し外のベンチで先客が捌けるのを他の客と共にじっと待つ。風も無くカラっと晴れた穏やかな日。青い空を見上げながら鳥や蛙の鳴き声に耳を傾ける。雲が動いてゆく先を見つめるのはいつ振りであっただろうか…このひと時も悪くない。今日は雨が降らなくて本当に良かった。
女将さんに誘われ、先陣の客と入れ替わる形でベンチで待機中の我々第二陣の客も順次入店する。明るく清潔感のある店内は一目で全てが見渡せるワンフロア。ラジオの有線放送であろうか?店内には少し抑えたボリュームでハナミズキの曲が流れている。客の年齢層は高めで常連客が殆どのようである。夫婦二人連れや作業着姿のグループ、フラワーパークから足を延ばしてやって来たのか若いカップルや営業車で乗り付けたサラリーマンの一人客もちらほら。めぐみさんの人気が伺える。
客の殆どが「もりそば」か店の看板「ぶっかけ野菜そば」を注文している。一人前の蕎麦の量がそれ程多くないのか、300円プラスで大盛にも出来る事から男性客の多くが大盛での注文である。
冷たいそば茶を頂き先ずは「ぶっかけ野菜そば」を注文する。笠間焼の器で提供されるこの蕎麦は冷たい麺の上に千切り野菜がこんもりと盛られ、ここに炒りゴマをたっぷりまぶしつゆを回しかけて頂くスタイルの蕎麦である。がその前に蕎麦本来の味を確かめたかったので先ずは何も付けずにそのまま、次に猪口を一つ頂いてつゆにちょこっと付けつつわさびを舐めつつ「もりそば」として味わってみる。極細の十割蕎麦は白みがかった薄茶の麺で中に薄い赤茶の星が所々点在して見える。もっちりと少し柔らかでありながらしっかりした歯応えとつるっとした喉越しの良さも感じられる優しい麺である。イメージするならブリしゃぶであろうか…薄くスライスしたブリの切り身にごく薄く片栗粉をまぶししゃぶしゃぶして頂く時のざらつきの無いあのつるっと感である。蕎麦粉の挽き方なのであろうか?十割にしては香りが控えめな印象であるが、気付けばそのまま半分食べ進めてしまうほど美味しい蕎麦である。つゆは黒と言うより黒みがかった赤茶色で、出汁が効いた濃い口であるが醤油の香りとほのかな甘みも感じられる。このつゆの感じだと温麺の甘汁にしたら…想像するとよだれが出そうになる。この店のかけそば、きっと美味しいだろうなぁ~。
続いて半分残しておいたつゆを蕎麦と向こうが透けて見える位薄くうす~くスライスされたキャベツ、人参、ネギに回しかけよく絡めて炒りゴマをたっぷりとまぶして本来の「ぶっかけ」で味わう。なんと!同じつゆなのに先程頂いたもりそばとはまた違った味わいでこれがまた本当に美味いっ!店の看板商品であるのも頷ける。極限まで薄くスライスされた野菜と細麺が一体となりさっくりと噛むほどに野菜の甘みと蕎麦の甘みとが濃いつゆの甘さと共に口の中で溶け合い絶妙なハーモニーを奏でる。そして炒りゴマの香ばしさが加わる事で際限なくどんどん蕎麦が胃に収まってゆくのだ。
こうなってくるとやはり甘汁が気になる。「かけそば」への未練が絶ち切れない。先述のぶっかけで胃は丁度良いくらいに膨れて落ち着いている。だがこのまま後ろ髪を引かれる思いで帰宅すれば後悔しそうな予感もするしなぁ…。迷いを振り払い追加で「かけそば」を注文する。その際女将さんに「蕎麦の量を少なめにして頂く事は出来ますか?おつゆが飲みたいので蕎麦を残してしまうと申し訳なくて…お値段はそのままお支払いしますので…」と打診すると有り難い事に店主が快く承諾して下さった。
それ程待たずに運ばれて来た「かけそば」の第一印象は「美しい」この一言に尽きる。蕎麦とつゆとネギだけが盛られた水色の器の大きさと量のバランス。透明感のある赤茶の甘汁の水色。中に箸を入れると細い蕎麦が優雅に泳ぎ、立ち上る湯気と共に出汁の香りが鼻腔をくすぐるあの感覚。極めつけは甘汁の美味さでこれは筆舌に尽くし難い。兎に角「かけそば」がこの上なく美味しいのである。さらっとしてほんのり甘めのこの汁は蕎麦と共にするっと口に含むとふわぁ~っと体中に染み渡る出汁と醤油の上品な味わいを堪能出来る逸品なのである。この店の「かけそば」は是非とも一度は召し上って頂きたいお勧めの品である。
最後に白濁した蕎麦湯(この店の蕎麦湯は蕎麦粉を溶いて提供されるので濃くてドロッとしている)をそのまま頂き口直しのデザート(蕎麦寒天であろうか?味も甘さもごく控えめ)でさっぱりと終える。
会計で金額が少し安かったので間違えたのではないかと申し出たら、店主が笑顔で「かけそばを少なめにしましたのでその分少しお安くしておきました」サービス精神溢れる店主の優しさに、かえって申し訳なかったかな…と我がまま言ってちょっぴり反省。
次回はみつせ鳥を使用した温かい「鳥汁そば」(1260円)と同じくみつせ鳥とごぼうをそば汁で煮込みご飯に混ぜ込んだ「ちょっとご飯」(280円)を頂いてみたいお勧めの店である。
(レポート 玄)
【 店の電話番号 】
080-1987-7499
【 住 所 】
茨城県石岡市柿岡1595
【 アクセス 】
車
【 営業時間 】
11:30~14:00(売り切れ次第終了)
【 定 休 日 】
火曜日(祝日の場合は営業し翌日休業)
毎月第3月曜日、12月30日~1月4日迄、
その他都合により休業する場合も有
【ひとり分の平均的な予算】
約1000円~2000円
【 予 約 】
可
【クレジットカード】
不可、電子マネー不可
【 個 室 】
無
【 席 数 】
14席(4人掛けテーブルが2つ、6人掛けテーブルが1つ)
【駐 車 場】
有(約10~15台)
【 煙 草 】
禁煙
【アルコール】
無
【店のホームページ】
http://sobagura-megumi-hp.com