「弁天」さんは、浅草寺の裏手（北側）の柳通り沿いの角にあります。ちょっと離れただけなのに、観光地の喧騒は感じられない地域です。店舗2階部分の角両側に看板が掲げてあり、入口には白地に墨文字のシンプルな暖簾がかかっています。

2時前という時間にもかかわらず、お店の前の椅子には二人連れが座り、順番を待っている様子。食べ物屋で並ぶということが本当に嫌いな私は、少し近くを散歩することにしました。

店のすぐ近くに「俳句投函ポスト」なるものを見つけました。月に一回回収された中から優秀作を選び、ポストの隣にある掲示板に貼り出されるそうです。

さて、10分ほどぐるりと一周して店に戻ると、待ち客はなくなっていました。いよいよ入店です！　ガラスの引き戸をガラリと開けて中に入ると、空間なく3席のカウンター席が目の前に迫ります。右手の小上がりには3卓、左手には固定式の長いすと2卓があります。無駄な空間はないという感じで席があります。

空いていたのは入口脇のカウンター席でした。隣には、今日はお祭りなのでしょうか、若いカップルがゆかたを着て好みの食材の話をしながら食べています。

花番さんからメニューを手渡されます。見開きのメニューと、パウチされた「はまぐりせいろう」のメニューがもう1枚。すぐに今日の目的、「はまぐりせいろう」（1500円）をお願いしました。

花番さんに聞くと、このお店、ご近所さんの御用達というばかりでなく、浅草寺観光のついでにスマホで調べて立ち寄る人も多いそうです。そんなお客さんは、間違いなく皆はまぐりせいろう、はまぐりそばを注文するそうです。私も浅草寺参りのついででしたが、すでにバレていたようです。

さて、5分ほど待つと、いよいよ待ち焦がれた膳の登場です。テーブルに置かれる時から、はまぐりと三つ葉のいい香りがしてきました。

目の前に置かれた膳は、鴨せいろなどと比べると、明らかに“特別感”があります。大きなはまぐり貝の入ったつけ汁の「どうだ！」感は半端ないものがあります。しかし反面、（そばが浸けづらそう‥‥）と思ってしまったのも事実です。

せいろうそばからいってみます。そばの色は薄めですが、透明感があります。また、よく見なければ麺の中に星は目立ちません。水切れの状態はいいようです。

箸で数本摘まみ上げると余り絡まずにスルスルっと持ち上がります。蕎麦の香りはほとんどしません（あまりに強い香りのはまぐりと三つ葉のせい？）。そのまま口に入れて噛んでみると、あきらめかけていたそばの香りが微かですが感じられてホッと一安心。

こういう変わり種のそばは、逆にそば自体が良くないと、全体が死んでしまうのかもしれません。そば自体が美味しいのだと思います。次回はこのお店のもりそばを食べてみようという気がしてきます。

つゆを一口。見た目の色の濃さを見て心配だったのですが、意外とアサリ、もとい、“あっさり”していて美味しいです。出汁もはまぐりが効いていてカツオは控えに回っている感じです。

そばをつゆに浸けやすくするために。まず、はまぐりを一ついただきました。4センチほどある大きな身はプリプリでジューシー。はまぐりのうま味が口の中に広がります。いい塩梅の煮え具合で美味しいです。

殻を一つ出してスペースを広げ、そばを浸けて啜ります。あぁ、うまい！　はまぐりと三つ葉の香りが先に来て、そのあとからそばの味がしっかり追いかけます。麺だけを啜った時よりもつゆに浸けた時の方が強くそばを感じるのはなぜでしょう。

残りの2つの身を食べて、殻を外に出すと、なんと、つゆの中に4個目の身が入っていました。これはサービスなのか、間違えて入ったのか‥‥。どちらにしても得した気分です。

そば湯は白濁していますがサラサラタイプ。つゆ自体の塩味が強くなかったので、そのままつゆ椀に入れて飲みました。

はまぐりの味が最後までしっかり残っていました。一度は食べてみるべきとお勧めできるはまぐりせいろうでした。

お代を払っていると、子供連れの3世代7人の家族が、小上がりが空いたのを見て入店してきました。では、私はこの辺でドロンさせていただきます。

ごちそうさまでした。

（レポート提出/木曽馬ジョージ）

【店名】弁天

【読み(ひらがな)】べんてん

【 店の電話番号 】　03-3874-4082

【　住　所　】　東京都台東区浅草3-21-8

【 アクセス 】　浅草駅（銀座線、東武伊勢崎線、浅草線）から徒歩8～10分

【 営業時間 】　（月～土）11:30～22:00、（日）11:30～21:30

【 定 休 日 】　水曜日

【ひとり分の平均的な予算】昼　　　夜

【　予　約　】

【クレジットカード】

【　個　室　】

【　席　数　】　27席（うちカウンター3席、小上がり14席）

【駐　車　場】　なし

【　煙　草　】

【アルコール】　ビール、日本酒、焼酎、角ハイボール他

【店のホームページ】　なし