中央区のおいしいそば屋

大きく「浹」と染め抜かれた紫色の暖簾は、そば屋というよりも少し上等な割烹をイメージさせます。場所は中央区日本橋本町にあるアステラス製薬本社の昭和通りを挟んで向かい側(東側)、2本目の道沿いにあります。

店内に入ると、BGMの心地よいジャズが耳に入ってきます。明るく清潔感あふれる店内、左手のカウンターには、一人客の女性の姿も。カウンターもテーブルも椅子も木製(座面は明るい茶系のクッション)でセンス良く並べられています。テーブル席も木製基調ですが、椅子は座面・背もたれ一体型のクッション付きで、紫色は暖簾や壁側の固定のソファと合わせてあります。「浹」のイメージカラーと言ったところでしょうか。

カウンターに通された私は、冷たい麦茶を出してくれた花番さんから「温かい鴨そばがおすすめです」と言われたので、「じゃあ、冷たい鴨ざるをください」と天邪鬼ぶりを発揮。実は、この店の鴨ざる(1180円)は、付いてくる合鴨煮が美味しいそうで、それなくなると売り切れというのを聞いていたのです。花番さんはカウンター内の料理人さんに確認。鴨煮はあったようで、注文は無事通りましたが、私でお終いのようでした(ラッキー!)。

目の前に置かれた「鴨ざる」は、丸いざるに盛られた黒く太めのそばに、鴨肉、炒め九条ネギ、大根おろしの薬味3品が付いてきました。そばは、ツヤもありながら水切り状態もよさそうで、見た目から美味しい予感を感じさせるものとなっています。


カウンター越しに、目の前に来た料理人さんに声をかけ、蕎麦の種類について伺ってみました。すると、常陸秋蕎麦の玄蕎麦を蟻巣石の石臼で挽いたものと、気持ちよく答えていただきました。ありがとうございます。

そばだけ数本啜ります。しっかりとしたコシがあり、香りも立っていて美味しい。噛むとそばの甘みを感じることもできます。適度なざらつき感はありながらのど越しもよろしい。

つゆはうれしい“無添加だし”を使用。甘さが抑えられていて、少し酸味を感じますが後味はスッキリとしています。そばの甘みが生きるように感じました。このつゆ、驚いたことに、薬味を加えるとがらりと変わりました。大根おろしと炒めた九条ネギが甘さを加え、酸味がさっぱり感を演出。つゆ自体というよりも、そばが一段と美味しくなりました。


また、驚いたのが3枚添えられた合鴨肉の味です。美味しいとは聞いていましたが、今まで食べてきた合鴨とは大きく違うものでした。出汁で薄味に炊いてあって、臭みが全くなくサラッとした旨み、柔らかく、脂身までが美味しくて、まるで、この鴨肉だけで一つの料理として完成しているかのようです。

さすがに“鴨そば専門”と謳うだけのことはあります。一気に平らげると、全身に美味しさが運ばれていきました。

そば湯もちょうどよい塩梅。そば湯専用の猪口が初めから別に用意されていたので、まずはそのままいただきます。白濁しているもののドロッとし過ぎず、そばの香りが鼻を突きます。そばつゆを加えると、塩味、甘み、酸味が三位一体になって味が完成されました。

「鴨ざる」、とても良く考えられたメニューだと思いました。美味しかったです。

翌日、再び伺いました。やはり看板メニュー「鴨そば」(1080円)をいただかないわけにはいきませんので。

シンプルな器の中に、そばの上に大量に乗った九条ネギの緑色が映えます。


まずは汁からいただきます。塩だしのような薄い色のつゆですが、昆布だしのきいた京風のつゆということで塩味は強め。むしろ江戸そばよりもしっかりした味だと思います。ざるのつけつゆ同様、甘味は抑え目で、爽やかな酸味を感じます。

そばはざると異なり細く白いものでした。でもコシはしっかりしており、ちゃんとそばの味もします。

入っている合鴨肉は鴨ざるのものよりも小ぶりなものが五切れ。脂身(皮)のみのものが必ず一切れ入っています。これは、合鴨の脂のおいしさを知ってほしいという、店の合鴨肉に対するこだわりと受け取っておきましょう。この店の鴨そばだったら、鴨嫌いのひとでも十分美味しくいただけるのではないでしょうか。

店の人のお勧めで山椒をかけていただました。確かに香りと味が加わって楽しい変化ですが、私のお気に入りは「黒七味」のほうでした。黒七味にも山椒が入っています。柔らかい九条ネギとそばのコシが絶妙で素晴らしい!

2日間、昼休みを利用してこだわりの鴨そばをいただきました。東京で、江戸蕎麦とは違った美味しさをまた一つ発見することができました。

ごちそうさまでした。

(レポート提出/木曽馬ジョージ)

【店名】京都鴨そば専門店 浹

【読み(ひらがな)】きょうとかもそばせんもんてん あまね

【 店の電話番号 】050-5872-8065

【 住 所 】東京都中央区日本橋小舟町4-10

【 アクセス 】三越前駅から徒歩5分、小伝馬町駅・新日本橋駅から徒歩7分、人形町駅から徒歩8分

【 営業時間 】11:00~14:30、17:30~22:00

【 定 休 日 】日曜・祝日

【ひとり分の平均的な予算】昼   夜

【 予 約 】夜のみ可

【クレジットカード】可

【 個 室 】なし

【 席 数 】26席(うちカウンター8席)

【駐 車 場】なし

【 煙 草 】完全禁煙

【アルコール】日本酒、ビール、焼酎など

【店のホームページ】http://kamosoba-amane.com

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