関東地方のおいしいそば屋

即位パレードの日、晴天。

連日の残業でめまいが起きていたが、新幹線で寝ていけば何とかなるだろうと、記念日に頑張って出かけた。

合羽橋で蕎麦道具を見たかったが、今回は無理せず、蕎麦屋とパレードに絞る。

向かった先は老舗名店。

上野駅から徒歩で行けるのが嬉しい。

お店を目指していくうちに、開店を待つ行列の光景が入ってきた。上野藪蕎麦総本店である。

入り口には「新そば」の案内が張ってあり、この季節の風味を味わいたい人で並んでいる。

家族と一緒に若い世代もおり、その若さで名店で食べられることが羨ましいと思った。

並んだわりには回転が早く、一階カウンター席に通された。

決して広くはないが、見事に洗礼された空間にはっとする。

ガラス越しに蕎麦打ち場があり、私の好きなフレーズ「蕎麦道」がかかげられている。

打ち場に神様が宿っていると感じる。

ガラス張り周りに沿って、なんとガラス棚に蕎麦猪口が展示され、下からも眺められる。蕎麦が来るまで眺めてられるデスプレイが見事なのだ。

花番の女性スタッフが、頻繁にお茶や蕎麦を運ぶ様子を観察できる席にいたのだが、待つ間、一番感心したことが、厨房のシステムである。

忙しくバタバタしたり、食器をガチャガチャする雑音がないのだ。

不思議に思い、暖簾越しに奥を見たら、配膳する蕎麦が見当たらず、厨房がないのであるびっくり!

厨房が見えないように上下する小さな入り口があり、そこから蕎麦が出てくるのだ。

ここからさきは想像であるが、一階の奥に厨房があるか、2階に厨房があり、自動で小型エレベーター降りてくる仕組みだろうと思う。

狭いスペースを有効的に活用し、かつ騒がしさを除去できるのだ。

感心している場合ではなく、注文を「天せいろう」を頼む。

全く予備知識ないまま来店したので(上野藪蕎麦監修、蕎麦打ち入門の本は持っている。また経営者の鵜飼良平氏は素人蕎麦打ち段位試験の委員長で、受験で審査を受けたことがあるが)どんな器でどんな蕎麦が出てくるのか、初対面の人に会うようだ。

お客さんの中には外人さんもいて、メニューの違いを質問していた。

隣のカップルは温かい蕎麦が冷たい蕎麦か悩んでいた。

私は初来店には天蕎麦を頼むようにしている。

その蕎麦屋の蕎麦とつゆを知ることができるし、天婦羅は蕎麦屋の盛り付けやセンスが光る。

家族連れが多かったので、少し蕎麦茶を飲みながら待つ。レジ近くにお土産コーナーがあり、蕎麦味噌を探す。自家製はたまらない。帰りに買うことにする。

お土産を見ていたら、蕎麦が届いていた。

年期のはいった黒漆塗りのせいろうを見たら、たまらなくなった。

いつも選ぶ店が蕎麦を笊で出すのが多い。

せいろうは品が出て、黒い器は蕎麦を引きたたせる。

笊は丸で幅広いが、四角い小さなせいろうの範囲に、なんとか小高く盛る工夫に、せいろうの世界観がみられた。

ではさっそくつゆを飲もう。江戸蕎麦の辛汁は濃すぎず鰹の出汁が効いている。

次にお蕎麦を。

産地を聞くのを忘れてしまった。二八ではある。

蕎麦の表面はつやつやしていた。麺線は更科並みの細さである。星は少な目、色はグレー色。

蕎麦だけで一口。

常に潤っているので、ずずっとと言うより「ツルッ」といけるのである。大変フレッシュな味わいがした。しかも時間が経ってもパサつきがない。

蕎麦打ちの本では、つなぎに卵を入れていたがそのせいであろうか?

いよいよそばつゆとのマリアージュ。つゆと絡み合い、蕎麦の瑞々しさが融合し大変のど越しがよすぎて、あっというまに胃袋に流れ込む。

先人たちは蕎麦とつゆの相性を、よくここまで進化させたと思う。

次に天婦羅は代表的な海老であるが、その巨大さに驚く。

盛り付けは海老が十文字に重ねられ、しし唐、大葉の天婦羅が脇役、ピンクの葉生姜が添えられアクセントになっている。

天つゆが別にあり、天婦羅が大きいからお椀からはみ出してしまうが、揚げたてで、サクサク感が消えない。

一つ気がついた。

また蕎麦に戻ると、大根おろしと葱があるのだが、山葵がなかった。

周りを見渡すと天せいろうには、山葵がつかないようだ。

この違いは、天婦羅の味を生かすためだろうか?

けっこうゆっくり味わい、お腹が一杯になってきた。

蕎麦湯が出てきたが、銅製の急須でお洒落である。銅製は冷めにくいと聞いた。素敵で欲しくなる。

とろっとした乳白色の蕎麦湯を、残ったつゆに葱、山葵を入れる。たんまり飲んで、至福の時間を過ごした。

蕎麦味噌を買って東京に向かう。ゆっくりしすぎて、即位パレードは良いスポットで見れなかったが満足できた旅であった。

(レポート提出/28sobayu)

【 店 名 】上野藪蕎麦総本店(上野)

【 読 み (ひらがな)】うえのやぶそばそうほんてん

【 店の電話番号 】03-3831-4728

【 住 所 】東京都台東区上野6-9-16

【 アクセス 】東京メトロ・JR上野駅徒歩5分

【 営業時間 】11:30~21:00(ラストオーダー20:30)

【 定 休 日 】水曜日

【ひとり分の平均的な予算】昼・夜 1,000円~3,000円

【 予 約 】可

【クレジットカード】可

【 個 室 】無

【 席 数 】40席

【駐 車 場】無

【 煙 草 】禁煙

【アルコール】有

【店のホームページ】http://www.yabusoba.co.jp/mutsumi/index.html

【地図にリンク】https://goo.gl/maps/BMUypPwgzhPaqQHW6

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