港区のおいしいそば屋

この日、私は東京都に日帰り出張をしていました。東京まで来たのだから、江戸蕎麦を食べたいと思い、一人でこのお店に行くことにしました。東京駅からJRと地下鉄を乗り継いで15分ぐらいです。

このお店は、1872年(明治5年)創業の老舗の蕎麦屋です。1923年(大正12年)に建てられた木造の建物で、いかにも大正時代といった歴史を感じる構えです。「砂場」という屋号は、1583年(天正11年)に豊臣秀吉が大坂城を築き始めた時、大坂の和泉屋(いずみや)という菓子屋が、資材の砂置き場に蕎麦屋を開店し、「砂場」と呼ばれていたのが始まりだそうです。

そのお店があった場所に、石碑(「ここに砂場ありき」)があるということなので、後日早速行ってみました。地下鉄長堀鶴見緑地線「西大橋」駅の1番出口を出て、北に歩くと新町南公園内にあります。大阪に日本最古の蕎麦屋があったのですね。徳川家が天下を統一した際に、江戸にも進出し「大坂屋砂場」の営業が始まったそうです。

さて、白い暖簾をくぐり、格子戸を開けて店内に入ると、女性店員さんが席まで案内してくれました。夕方近くだったので、幸運にも混んではいませんでした。1階はテーブル席で、2階は座敷もあるようです。時代を感じさせる赤茶色の欅のテーブル席でした。私はこのテーブルが気に入りました。

「キリンビール(中)」(710円)を注文しました。「お通し」は昆布の佃煮でした。のどが渇いているときの冷えたビールの1口目は、旨いですね。あっという間に飲み干しました。女性店員さんが美人だったので、一度に注文せずに順番に注文することにしました。

メニューを見ると、品数の豊富さに驚きました。冷麦、そうめん、うどん、きしめんもあるのです。変わりそばでは、「紫蘇切り」(950円)、「生姜切り」(870円)がありました。季節の商品は、「生しらす天せいろ」(1,150円)と「じゅんさいそば」(1,490円)が気になりました。冷たいそばでは、「ごぜんそば」(800円)、「鉄火味噌そば」(900円)、「納豆そば」(950円)が気になりました。温かいそばでは、「カレー南蛮そば」(980円)、「にしんそば」(1,240円)が気になりました。

BGMが流れていない時代にタイムスリップしたかのような静けさの中で思案し、結局「もりそば」(740円)を注文することにしました。

5分後に女性店員さんが、注文した品を持ってきてくれました。本山葵とネギが添えられていました。小徳利に入った蕎麦湯用のつゆも添えられていました。

そばは、北海道産の二八です。色はベージュ色で、長さは細くて長く、太さも均一です。つゆは、ほんのり甘みがありました。表面は瑞々しく光沢があります。山葵を麺に乗せて、つゆをつけて一気にズズッとそばを口に入れました。そばが冷たいのと、麺がツルツルしており、つゆとの相性は抜群でした。そばは、すぐに食べないといけない食べ物なので、あとは、この繰り返しで一気に平らげました。

そばを食べ終わるころに、女性店員さんが丸湯桶を持ってきてくれました。半透明の蕎麦湯をネギの入ったそばつゆに注いで飲みました。さっぱりとした味わいでした。

また、メニューを見ました。たぬきそば・うどんがありましたので、女性店員さんに「たぬきそば」(800円)を注文しました。「たぬき」の語源ですが、関東では胡麻油で揚げるから衣が茶色になり、たぬき色に似ていることや、江戸時代の終わりごろにはイカのかき揚げを乗せていたのですが、そのうち具のイカがなくなり、「揚げ物の種がない」ので、「たぬき(種抜き)」と呼ばれるようになったそうです。

大阪で「たぬき」と言えば、「刻んだ油揚げ」や「味付けしてある油揚げ」が入っているそばで、うどんはありません。

京都で「たぬき」と言えば、「刻んだ油揚げが入ったあんかけうどん」のことです。

4分後に、女性店員さんが注文した品を持ってきてくれました。丼の中には、揚げ玉と白ネギとほうれん草が入っていました。刻みネギが添えられていました。つゆの色は、若干薄茶色でした。大阪では、天かす(揚げ玉)が入っているのは「ハイカラそば」と言います。大正時代に、関西人が「捨ててもいいような天かす(揚げ玉)を入れるなんて、関東の人はハイカラやなあ」ということから呼ばれているようです。「揚げ玉入り」は関東が発祥ですね。

細く長い麺は、のど越しがよく、ほんとに食べやすいです。揚げ玉はサクサクでした。私は、どちらかというと昆布出汁より鰹出汁の効いた濃い口しょうゆのコクのあるつゆが好きなのですが、少しマイルドなこのつゆも美味しかったです。家内から出汁は高血圧に良くないので、全部飲んではいけないといつも言われているのですが、今回も我慢できずに完食してしまいました。

大阪で生まれたそばも、幕末になって台頭してきたうどんに圧倒され、明治になると大阪から砂場の看板は消えていきましたが、東京の土地にしっかり根付いていました。

私の今回の採点ですが、そばの味に加え、女性店員さんの接客、お店の歴史と雰囲気等を総合して、100点満足のお店でした。

(レポート提出/入り番茶)

【 店 名 】虎ノ門大坂屋砂場本店

【 読 み (ひらがな)】とらのもんおおさかやすなばほんてん

【 店の電話番号 】03-3501-9661

【 住 所 】東京都港区虎ノ門1-10-6

仮店舗:東京都港区西新橋1-10-1

【 アクセス 】東京メトロ銀座線虎ノ門駅1番出入口徒歩3分

【 営業時間 】月、火 11:00~20:00

水、木、金 11:00~21:00

土 11:00~14:00頃

*土曜日は蕎麦がなくなり次第閉店。

【 定 休 日 】日曜日、第3土曜日、祝日

【ひとり分の平均的な予算】2,000円以内

【 予 約 】可

【クレジットカード】可

【 個 室 】あり

【 席 数 】80席(テーブル席、座敷席)

【駐 車 場】なし

【 煙 草 】禁煙

【アルコール】あり

【店のホームページ】https://www.toranomon-sunaba.com/

【地図にリンク】https://goo.gl/maps/YY3Vrv7NqbBjrnSK6

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