千代田区のおいしいそば屋

この日、私は東京都に日帰り出張をしていました。東京まで来たのだから、江戸蕎麦を食べたいと思い、一人でこのお店に行くことにしました。ここは、何度も足を運びたくなるぐらい、東京の下町情緒あふれる風情のあるお店なのです。JR神田駅東出口から徒歩で7分ぐらいです。1884年(明治17年)創業の老舗の蕎麦屋です。1925年(大正14年)に建てられた木造2階建の建物で、いかにも大正時代といった歴史を感じる構えです。食通で知られる小説家の池波正太郎氏が「まつやで出すものはなんでも美味い」と言ったほど、良く通われたお店だそうです。

さて、お店の前には左右2か所に白い暖簾がかかっています。右側が入口で左側は出口です。右側の暖簾をくぐり、格子戸を開けて店内に入ると、「いらっしゃい~」と抑揚のある女性店員さんの声が店内に流れ、優しく迎え入れてくれました。案の定、店内は先客でほぼ8割近くは埋まっていました。女性店員さんに案内された通りの席に座りました。私の隣と前の席に座っている先客は既に美味しそうなそばをすすっていました。このお店では相席は当たり前なのです。私の生まれた昭和時代の大阪もそうでした。

壁はベージュ色で、柱は黒色。テーブルは赤茶色です。黒色の天井は格子状の照明となっており、柱には行灯がありました。古い柱時計が店内の雰囲気にマッチしており、昭和初期の古き時代にタイムスリップしたかのような感じにさせてくれました。店内は繁盛しておりました。複数の女性店員さんが、丁寧にお客様の注文を受け、出来上がった品を迅速にお客様の席に運ぶ姿が印象的でした。BGMは流れていません。お客様の明るい話し声や女性店員さんが厨房に正確に注文を伝える声で店内は賑わっていました。

まず、女性店員さんに「キリン一番搾り(中)」(770円)と「かつお酒盗」(495円)を注文しました。のどが渇いていましたので、コップに冷たいビールを注ぎ、ぐっと飲み干しました。やっぱり、ビールは1口目がおいしいですね。お通しは「そば味噌」でした。甘みのあるねっとりした胡麻入りの味噌でした。池波氏が「蕎麦前なくて蕎麦屋なし」の名言通り、「かつおの酒盗」や「焼き鳥」(935円)などは蕎麦屋になくてはならないものですね。特に「焼き鳥」の美味しさは有名だそうです。

「御品書」を見ると、池波氏が良く食べられたという「カレー南蛮」(1,210円)が気になりました。蕎麦屋で「南蛮」とは長ネギのことだそうです。「小田巻きむし」(1,265円)も気になりました。「小田巻きむし」は、ネットで調べたのですが、簡単に言うと、茶わん蒸しの中にうどんが入っています。このお店は、うどんもあります。「ごまそば」(935円)は、前回、女性店員さんに勧められて食べたことがありました。「ごまだれで食べるもりそば」なのです。女性に人気で、蕎麦湯に加えると、クリーミーな洋風スープのような味わいになります。

結局「天ぷらそば」(2,310円)を注文することにしました。8分後に女性店員さんが、注文した品を持ってきてくれました。大きな車海老の天ぷらが2尾入っていました。刻みネギが添えられていました。衣はサクサクです。三つ葉の上に柚子が乗せてありました。柚子の香りが食欲をそそらせます。三つ葉もシャキシャキでした。プリプリの海老とふんわりと出汁の浸みた衣とのバランスが抜群です。

このお店のそばは、茨城県境町の「常陸秋そば」を中心に、北海道の雨竜(うりゅう)や青森県十和田の階上早生(はしかみわせ)、長野県妙高山の霧下そば等を厳選して使用しているそうです。女性店員さんにそばの産地を尋ねましたら、「雨竜産です。」と親切に教えてくれました。石臼で挽いた「挽きぐるみ」のそば粉に繋ぎ粉を加えて外二で手打ちにしています。

そばの色はベージュで、角がありました。ホシもありました。長さは、細くて長いです。三本棒の江戸打ちです。噛み応えはソフトな弾力がありました。出汁は、やや濃いめでサバ節がマイルドな味わいに仕上げています。麺はツルツルしており、出汁との相性が抜群なので、癖になるような味わいです。家内から、出汁は塩分が多いので、全部飲んではいけないと言われておりますが、今回も我慢できずに飲み干してしまいました。

折角なので、「もりそば」(770円)も注文しました。刻みネギが添えられていました。「山葵」(77円)は付いていないので注文しないといけません。麺が細くて長いです。太さも見事なほどに均一なのです。本枯れ節と宗田節の一番出汁で作られた濃いめのつゆとの相性も良く、あっという間に平らげました。そばを食べ終わり、蕎麦湯をお願いしました。半透明な蕎麦湯をネギの入ったそばつゆに注いで飲みました。あっさりとした味わいでした。会計は自分の席で終わらせるシステムになっていました。

蕎麦屋にとって、蕎麦の味はもちろんですが、お店の雰囲気、女性店員さんの明るくテキパキと働く姿に、きっとお客様はこの店を愛するのだと思いました。江戸時代からの慣習で、「そばのように細く長く生きることができるように」という願いから、毎年、大晦日になると、このお店には年越しそばを食べるお客様で大行列ができるそうです。創業136年を経過していますが、これからも細く長くお客様に愛され続けるお店であってほしいと願っております。

(レポート提出/入り番茶)

【 店 名 】神田まつや本店(東京都千代田区)

【 読 み (ひらがな)】かんだまつやほんてん

【 店の電話番号 】03-3251-1556

【 住 所 】東京都千代田区神田須田町1-13

【 アクセス 】JR「神田」駅東出口から徒歩7分。

【 営業時間 】月~金曜日 11:00~20:00(L.O/19:30)

土曜・祝日 11:00~19:30(L.O/19:00)

【 定 休 日 】日曜日

【ひとり分の平均的な予算】2,000円以内

【 予 約 】不可

【クレジットカード】不詳

【 個 室 】なし

【 席 数 】66席(テーブル席)

【駐 車 場】なし

【 煙 草 】禁煙

【アルコール】あり

【店のホームページ】http://kanda-matsuya.jp/

【地図にリンク】https://goo.gl/maps/tB1k4tnVY3miu8BH7

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