中央区のおいしいそば屋

この日、私は東京都に日帰り出張をしていました。東京まで来たのだから、江戸蕎麦を食べたいと思い、一人でこのお店に行くことにしました。

100年以上の歴史のある老舗の蕎麦屋の中でも、江戸三大そばと呼ばれる系統があります。それは、「藪そば」、「更科そば」、「砂場そば」です。どの系統も1件の蕎麦屋から始まり、親、兄弟、親戚、弟子たちが暖簾分けをして受け継がれ、広まったそうです。江戸時代の万延元年(1860年)、江戸の町には蕎麦屋が3,763軒もあったと言われています。因みに、タウンページに掲載されている都道府県別蕎麦屋店舗数では、東京都は3,200軒でした(2010.12.31公開)。江戸時代は蕎麦屋が多かったのですね。

さて、このお店は明治2年(1869年)創業の老舗で、店名通り「砂場」系の蕎麦屋です。食べログでは「2021年日本そば百名店」に選出されています。JR神田駅出口から徒歩3分ぐらいで到着しますよ。お店は、1974年(昭和49年)に表通りから、現在の4階建のビルに移転しています。お店の前には「砂場」と書かれた看板がありました。柳の木の枝が入口近くに垂れ下がっており、趣があります。白い暖簾が掛かっていました。暖簾に書かれた「砂場」の字体に歴史を感じました。

暖簾をくぐり、格子戸の自動ドアに触れて、店内に入ると、美人の女性店員さんが、親切にテーブル席まで案内してくれました。平日の夕方近くに訪れたので、幸運にも混んではいませんでした。3組の先客がテーブル席に座っていました。品格のある初老のご夫婦や上品なご婦人たちが、お酒を飲みながら、そばをすすりながら、くつろいでいました。小上がりの壁は江戸茶色で、その壁には日本画が飾られていました。奥はガラス戸になっており、どの席からもその美しい内庭を眺めることができます。高級料亭のような風情のある空間になっており、時の流れを忘れてしまいそうでした。2階は座敷になっているようです。

女性店員さんに「エビス生ビール(グラス)」(650円)を注文しました。のどが渇いているときの、1口目はおいしいですね。お通しは「あさりのしぐれ煮」でした。甘辛く、ふっくらやわらかなので、生ビールにぴったりでした。

「お品書き」を見てみました。表示が時価になっている「あられそば」がありました。関西人なので、値段が正直気になりました。それは、青柳の貝柱をあられに見立てた温かいそばです。「種込天ぷらそば」(2,800円)が気になりました。それは、かき揚げと海老天が入っています。「おかめそば」(1,450円)は、島田湯葉が髪飾りで、かまぼこは目、才巻海老が鼻、頬が玉子焼き、椎茸が口で、おかめさんの顔に仕立てたそばです。「三味そば」(1,150円)は、三つ葉、海苔、大根おろしを載せた冷たいかけそばです。「そばぜんざい」(800円)がありました。それは、更科そばの上に、温かい自家製の漉し餡を載せた新感覚のスイーツです。

このお店は「天もり」(1,600円)と、「天ざる」(1,600円)の発祥のお店だそうです。天ぷらそばを暑い夏でも食べやすいように、冷たい蒸篭でのつけ麺スタイルにしたのが始まりだそうです。一般的には、蒸篭に載せられた冷たいそばに海苔がかかっているものを「ざる」と言い、その冷たいそばに海苔がかかっていないものを「もり」と言いますが、このお店ではそうではありません。「ざる」は蕎麦の芯だけを挽いた更科粉を卵の黄身でつないだそばを言います。「もり」は挽きぐるみのそば粉に繋ぎ粉を加えて、二八の割合で打ったそばを言います。

結局、今回は「天もり」を注文することにしました。7分後に女性店員さんが、注文した品を持ってきてくれました。濃いめの温かいつゆが入った白い丼の中には、ごま油で香ばしくたぬき色に揚げられたかき揚げが入っています。かき揚げの中には、芝海老の小エビと小柱が入っています。三つ葉も入っていました。刻みネギが添えられていました。

そばはベージュ色で、角がありました。長さは、細くて丁度良い長さです。江戸時代は、「うどん一尺(約30㎝)、そば八寸(約24㎝)」の長さが良いと言われていたそうです。当時は、畳の上に座って食べていたので少し長めだったようですが、今日ではテーブルで食べるので、蕎麦は21㎝(7寸)の長さが良いようです。麺は瑞々しく、つやがありました。量は、少食の女子にはちょうどいいぐらいでした。

つゆは本鰹の一番出汁で、ほんのり甘く濃いめです。麺はツルツルしており、つゆとの相性が抜群なので、癖になるような味わいです。天ぷらは、衣がしっかりしており、つゆに浸かってもグダグダにならないようになっていました。衣がつゆに浸って程よく柔らかくなっているのと、小海老のプリプリ感と小柱の噛み応えが合わさって、抜群の美味しさです。

そばを食べ終わり、蕎麦湯をお願いしました。半透明な蕎麦湯をネギの入ったその温かいつゆに注いで飲みました。あっさりとした味わいでした。いつも通り、すべて飲み干してしまいました。お勘定を済ませて、お店を出た際に、「次は、天ざるに挑戦してみよう。」と思いました。

私の今回の採点ですが、天もりの味に加え、女性店員さんの接客、お店の歴史と雰囲気等を総合して、大満足のお店でした。

(レポート提出/入り番茶)

【 店 名 】室町砂場日本橋本店

【 読 み (ひらがな)】むろまちすなばにほんばしほんてん

【 店の電話番号 】03-3241-4038

【 住 所 】東京都中央区日本橋室町4-1-13

【 アクセス 】JR山手線「神田」駅より徒歩3分

JR総武快速線「新日本橋」駅より徒歩5分

東京メトロ銀座線「三越前」駅より徒歩3分

【 営業時間 】月~金曜日:11:30~21:00(L.O/20:30)

土曜日:11:30~16:00(L.O/15:30)

【 定 休 日 】日曜日、祝日

【ひとり分の平均的な予算】2,000円以内

【 予 約 】可

【クレジットカード】不詳

【 個 室 】あり

【 席 数 】100席

 

【駐 車 場】なし

【 煙 草 】禁煙

【アルコール】あり

【店のホームページ】https://www.muromachi-sunaba.co.jp/

【地図にリンク】https://goo.gl/maps/BtEw2m8wHp7pLVcz9

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