もぐら庵の遊印刻々 〈連載第一回〉 妖怪アマビエの印
- By: Reporter
- カテゴリー: 特集記事のcontentsへ
連載、第一回です。
もぐら庵さんは、遊印家(ゆういんか)といって、篆刻(てんこく)に遊びの要素を取り入れて、上のタイトルアイコンにあるような印(ハンコ)を作る第一人者、アーティストです。
「スターウォズ」を作ったジョージ・ルーカスなど、世界、日本の著名人の印もたくさん作っています。世界各地で個展を開催して、その楽しい作風には、多くのファンがついています。
蕎麦屋さんや、料理店などに依頼されて、お店の印も作っています。暖簾や箸袋に入れたりして使っているのですが、かわいい印なので、箸袋などのグッズは、持ち帰る人も多いそうです。
私、片山とは30年以上にわたり、お付き合いいただいていて、今回、『日本蕎麦保存会jp』に、作品を連載で発表していただくことになりました。
楽しくて不思議な、もぐら庵さんの「遊び印」(あそびいん)の世界、お楽しみください。
※もぐら庵さんは、個人の似顔絵の入った遊び印や、お店の印などの注文にも応じてくださいます。
虎之介も、虎の印を作っていただいて、愛用しています。
「私にも、お願いしたい!」という方は、『日本蕎麦保存会jp』編集部までメールをお送りください。
妖怪アマビエの印 連載第一回
もぐら庵
今年は春から世界中に、新型コロナという伝染病が広がり、多くの人が苦しんでいる。
自宅待機することが、その対策だが、社会の動きが止まってしまった影響は、伝染病に負けないくらい深刻だ。
そんな折「妖怪アマビエ」の印を彫ってほしいと、注文があった。
日本には妖怪という文化がある。アマビエはその一種で疫病封じの妖怪らしい。
肥後の国(熊本)に伝わる伝説では、江戸時代、海の中で毎夜、光を放って戯れる妖怪がいたという。
世に疫病が流行したとき、その妖怪は海から現れ「私の姿を描いた絵を、たくさんの人に見せなさい」と告げて、海へ帰っていったという。
人々がその通りにすると、不思議なことに、間もなく疫病はおさまった。
それ以来、アマビエは、疫病封じの妖怪として伝説になった。
姿は人形のように長髪で寸胴の体。
体は鱗に覆われ、鳥のようなくちばしがある。
目は赤く菱形。
3本の尾びれがあり、背びれもあるらしい。
印象としては、愛らしい女性のようだ。
若い人魚かもしれない。
この姿は妖怪ファンでなくても知る人が多いのか、私に来る手紙にも、アマビエのイラストを描いたものが何通かあった。
こんな謎めいたものを彫るのは、遊び印作家としては大変嬉しい。
久しぶりにワクワクして、夢中になって彫った。
「蕎麦は救荒作物といって、飢饉や病気などで人が困っているとき、人に寄り添い、助けてくれる作物なのです」と、虎さんは言う。
なんと、アマビエは、まるで蕎麦のような妖怪ではないか。