彼岸花の寿命は1週間。そろそろ見頃を迎える頃かな…と近くの神社を訪れてみる。この日は台風の影響で局所的に雨が降ったり止んだり。不安定な天気に怯えながら車を走らせ神社に着くと、奇跡的とも言える絶景が目の前に現れる。何とその空間にだけ燦燦と太陽が降り注ぎ、森の中一面に広がる彼岸花の赤い絨毯に木々が落としこむ影が重なって、幻想的で美しい風景を描き出している。昼時を過ぎての帰り道、温かい蕎麦を食べて帰ろうと以前から気になっていた「筑山亭」さんに立ち寄ってみる。

　霞ヶ浦を見下ろす高台の新興住宅街「おおつ野ヒルズ」の一角にある蕎麦屋「筑山亭」さんは土浦協同病院のほど近くにある。道を挟んで斜め前方に位置する筑山亭さんの店舗は大通りに面しているため、比較的迷わずに辿り着ける。広い砂利の敷地に建つ日本家屋の一軒家で提供するのは江戸流蕎麦打ちでの常陸秋そば（この日は大畑産（旧新治）の挽きぐるみ二八そば）である。

　入口に鎮座する蝙蝠の化身のような悪魔の銅像と黒を基調にした外観は蕎麦屋らしからぬ雰囲気を醸し出してはいるものの、白い暖簾と白木の引き戸が若干コンセプトにアンバランスな違和感を感じさせつつもジャズが流れる店内は普通に明るい印象の蕎麦屋である。

　中に入るとワンフロアの中央に位置するカウンターの上に置かれた蕎麦や蕎麦粉、韃靼そばふりかけ、沢庵や女将さんの手作りスイーツ（アップルパイやおはぎなど）等々物販の多さに先ずは驚かされるであろう。
　中年の男性客が多く、その殆どが3～4人のグループや一人客での訪問である。店主と話し込む姿から察するに、恐らく常連客のようである。

　この店では、殆どの客が注文する王道の「天せいろ」をはじめバラエティに富んだ蕎麦や丼物とのセット、つまみ等の一品メニューが目白押しである。珍しいところではキノコや鮭の「蕎麦パスタ」であろうか…。また、せいろを注文した客に対してのみ数量限定で「熟成蕎麦」（前日に打った蕎麦）の提供を行っているのも興味深いところである。

　冷たい麦茶を頂きながら注文した「きのこ天せいろ」（1750円）の到着を待つ間、小さな黒板に書かれた本日の蕎麦の履歴を確認する。（普段は新治市大畑産と阿見町上条産で栽培された常陸秋蕎麦の蕎麦粉を使用しているようである）
地産地消を謳っているだけあって霞ヶ浦産の蓮根や海老、野菜などを使用。女将さんが作る手作りスイーツの材料も奥久慈の林檎や梨など、なかなかの徹底ぶりである。

　程なくして運ばれて来た蕎麦は喉越しとは無縁の噛み応えのある太麺で、量は少ないが、瑞々しく張りのある薄茶の麺の中には赤茶と黒の星が確認出来る。
噛むほどに香りが立ってくる、そんな印象の蕎麦である。少しざらつきのある麺は温かいきのこつけ汁にもよく絡み、甘汁の美味さを口いっぱいに感じる事が出来る。小鉢に入った白魚の佃煮や自家製の沢庵も、適度な濃さでとても美味しい。

　椎茸、しめじ、えのき、焼きネギ、ほうれん草から成るこの「きのこつけ汁」のちょっぴり甘めで鰹と昆布が効いた透明感がある甘汁は、水色も赤茶で見た目にも美しい。兎に角、蕎麦湯で割らずに全て飲み干してしまうほど本当に美味しいのである。この店の温かい蕎麦のベースになっている甘汁が全てきのこつけ汁になっているのも納得である。このつゆに対する店の自信が伺える。
温かい蕎麦に関しては、＋350円で大盛に変更も可能。これからの寒い季節、店の看板メニュー「鴨せいろ」や「卵とじ蕎麦」「ちから蕎麦」などを頂きに再訪してみたい、お勧めの店である。

(レポート/玄)

【 店の電話番号 】
　029-869-8170
【　住　所　】
　茨城県土浦市おおつ野7-5-1
【 アクセス 】
　JR土浦駅より車で20分　（新しい土浦協同病院近く）
【 営業時間 】
　11：30～16：00（ラストオーダーは15:30）
　毎週金・土曜日18：00～21：00（ラストオーダーは20：30）
【 定 休 日 】
　木曜日、第3水曜日
（臨時休業もあり）
【ひとり分の平均的な予算】　
　約1000円～2300円
【　予　約　】
　可（席の予約では無く蕎麦の予約。予約は8名からで子供も1人換算）
【クレジットカード】
　可　（電子マネーｄ払いも対応）
【　個　室　】
　有　（貸し切り可）
【　席　数　】　
約35席（4人掛けテーブルが5つ、座敷に6人掛けテーブルが2つ、カウンター3席）
【駐　車　場】　
　有（約14台）
【　煙　草　】
　全席禁煙
【アルコール】
　生ビール、瓶ビール、日本酒、焼酎（芋・蕎麦）ウイスキー、ワイン、サワー、ノンアルコールビール、ソフトドリンク
【店のホームページ】
　chikuzan¬-company.com