あみだそば(福井県福井市)十割そばで、福井在来の風味を見事に引き出す
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福井の郷土そば「おろしそば」の味がどのようなものであるかを知りたい方は、JR福井駅前の大きなビル「ハピリン」の一階にある『あみだそば』を、ぜひ、訪ねてください。
「駅前にある店だから期待しないほうが‥」と考える方は多いと思いますが、この店は期待して入っても大丈夫。そういう基準で判断するのは正しくないと、教えてくれる店です。
『あみだそば』は、おろしそばに命をかけている店です。大根を吟味し、鰹節にこだわり、刻みネギを大切にします。
もちろん、そば粉へのこだわりは、徹底していて、福井在来しか使いません。それを主人の永見さんが製麺して供します。
『あみだそば』に通う常連客は県外の人も多く、グルメサイトの評価では、福井県で一番人気の店となっています。
おすすめのメニューは「おろしそば三昧」、盛りの多めのそばと、三種類の出汁(おろし、わさび、とろろ)がセットになっています。
福井在来の風味を楽しみたいなら、汁をかける前に、まず、麺だけを箸で摘んで味わってください。
汁をかけてしまうと、麺そのものの繊細な風味は、汁の強い味にさえぎられてわからなくなってしまいます。
この店では、そば好きの客が何を望んでいるかを承知していて、最初から汁をかけて出すことはしません。麺の味を堪能してから、汁をかけ、味のバリエーションを楽しむというのが、在来種、福井そばの味を知っている人の食べ方です。
三種類の出汁のうち、気に入ったものを、一枚のそばと合わせて供するメニューもあります。「越前おろしそば」「わさびおろし」「とろろおろし」が、それです。常連客になると、このうちのどれかを、いつも決まって頼む人が多いようです。
そして、もう一つ注目していただきたいのが、器に盛られた麺の形状です。
やや幅の広い、平麺の形に切られています。この幅広の麺が舌に触れると、広い面積からそばの味が伝わるため、より美味しさが強調されるのです。
こういう工夫は、そば粉の美味しい地域でなくては生まれません。するすると滑らかな食感を楽しみながら、時々噛み締めて、至福の美味に酔う。
駅前でこんな贅沢が味わえるのは、福井というそばの名産地ならではの楽しみです。
『あみだそば』は、店構えや雰囲気は、極めて普通のそば屋といった風情です。派手なパフォーマンスはないのですが、美味しさへのこだわりは、ずば抜けていて、福井名物であるサバを使ったオリジナルメニューも開発しています。
サバは、とても美味しい魚なので、関東では、そばの出汁をとるときにも使われます。それを丸ごと焼いて、そばと組み合わせたのが「さば蕎麦」。食べてびっくりの美味しさです。
焼きさばの温もりと、そばの冷たさが、絶妙のバランスで互いのうまさを引き立てます。
ボリュームもたっぷりで、食事として食べても、十分に満足できるのが、この店の良いところです。
福井県民は、前にしゃしゃり出て自分を売り込むことが不得手な方が多いようで、そば屋さんのメニューにも、控えめな性格が現れているような気がします。
一見、どこの店でも同じように思えるおろしそばでも、いろいろなバリエーションを頼んでみると、その店の、大いなるこだわりが見えてきます。
福井のそばは、店の常連になって初めて、美味しさの真髄に触れることができるような気がします。
福井駅前にある恐竜の像と、「あみだそば」が入っているビル「ハピリン」。
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