湧水仕込みそば処千成 (長野県長野市) 湧いた滝の水で打つ期間限定の鬼除まぜそば

関東甲信越のおいしいそば屋

長野県長野市、戸隠神社五社のひとつ宝光社に仕える宿坊に併設されている手打ち蕎麦屋。長野駅の善光寺口から車やバスで約40分、戸隠神社中社に向かう一本道の麓、宝光社の入り口が見えて右に曲がってすぐ左手に見える白塗りの壁に茶色い看板の「千成」が目印。長野市内とはいえ戸隠地域は厳かで空が高く静かな場所です。


そば処は建物の扉を入ってすぐにある階段を上がった二階にあります。階段を上がってすぐに、蕎麦打ちをするガラス張りのスペースが目に入ります。店内は木目調の落ち着いた風合いの机や椅子がワンフロアに広がっています。当日は快晴だったので、南向きに開いたガラス窓から暖かい日差しが入り込んで心地よい空間になっていました。


スキーシーズンということもあり、客層はスキーウェアを着た男女やアジア系の海外の団体が目立ちました。スーツを着た男性組もちらほら。メニューはざるそばやかけそばの他に、ざるそばと半かけそばが両方楽しめる双味(ふたみ)そばや、天丼に半かけそばのセットなど、興味をひくものが幾つかありました。

注文したメニューは冬季限定の節分そば(鬼除まぜそば)です。節分そばは5年前から戸隠地区の蕎麦屋が数店参加している行事で、旧正月にあたる時期に年越し蕎麦と節分をならって各店がオリジナルメニューを展開しています。今年は1月27日から2月3日までの一週間、うずら屋などの6店で提供されています。まさしく期間限定、そして地域限定。その中で一番気になったのが今回訪れた「千成」の「鬼除(おによけ)まぜそば」です。蕎麦の上に7種類の具材が乗っています。とろろ〈鬼の角をすりおろす、鬼が滑って家に入れない〉、豆(納豆)〈真を滅する〉、いわし(いわし節)〈魔除け〉、玉子〈鬼の目にみたててつぶす〉、海苔〈運草とも呼ばれる縁起物〉、野沢菜〈長寿日本一の長野県の健康食〉、ねぎ〈邪気を追い払う〉の七種類は七福神にちなんで商売繁盛や無病息災の願いが込められているそうです。また、戸隠地区では節分にとろろを食べる風習もあるそうです。とろろ芋は長野市松代地区の名産でもあります。


注文すると同時に、小皿に乗ったそば団子と野沢菜とそば茶が運ばれてきました。そば団子は甘辛い味噌の素朴な懐かしい味がしました。数分して鬼除まぜそばが運ばれてきました。器の中心の鬼の目に見立てた温泉卵のインパクトとその周辺に蕎麦が見えないほど散りばめられた具材たちに圧巻。納豆といわし節の際立った匂いが食欲をそそります。里芋の煮物の小鉢も付いていました。付属のつゆをかけて、卵の黄身を潰して具材と蕎麦を混ぜます。混ぜる度にとろろと納豆により粘り気が増します。

具材と混ざった蕎麦を口に含むと、野沢菜の塩気とパリっとした触感、とろろのネバネバ感、いわし節の風味、冷水でキリっと締まったざらっとした舌触りの蕎麦、など一気に沢山の感覚が押し寄せてきました。蕎麦は、白めでホシは少なく茶色のホシが少し見える程度、戸隠そばのイメージより細く表面も若干ざらついていました。風味は口に入れて一度噛んだ時に蕎麦らしいはっきりとした味わいがあり、飲み込むまで同じ風味が口の中に残ります。食べ進めると見た目よりもボリュームがあり、蕎麦の触感も特に変わらず最後まで新鮮で様々な味が楽しめる満足度が高い一品でした。

店主の佐々木さんにいろいろ尋ねたところ、蕎麦は二八の一本棒丸のしで、蕎麦粉は国産の粗めの石臼挽き、小麦粉は中力粉とのこと。つゆは宗田節や鯖節を出汁に使っていてコクのあるさっぱりとした味でした。

佐々木さんは宮城県出身で結婚を機に千成の併設されている山本館に勤め始め、35歳から20年間蕎麦を打っている。「まだ20年ですよ」と笑顔で謙遜していました。とても気さくで優しい雰囲気のダンディな方でした。

蕎麦打ちに使う水は贅沢にも敷地内に湧き出している「不動滝」という湧き水を使用しているという。信州の寒い冬でも凍ることなく沸き出ているという。もともと、宿坊で戸隠講の人たちに出していた蕎麦だが、昭和41年頃に一般向けに蕎麦を出そうと「千成」を開店して今に至るとのこと。

帰り際に店主から、「戸隠の他店の蕎麦も食べてみてください、秋には半ざるを食べ歩くイベントもありますから」と声を掛けていただいた。何となく敷居の高かった戸隠そばが今回の訪問でより身近に感じられた。秋と言わず近々訪れようと思う。

(レポート提出者/ はねた)

【店名】湧水仕込みそば処千成

【読み(ひらがな)】わきみずじこみそばどころせんなり

【 店の電話番号 】026-254-2612

【 住 所 】長野県長野市戸隠宝光社2339

【 アクセス 】JR長野駅西口より戸隠高原行バスにて「戸隠宝光社」下車

【 営業時間 】10:00~17:00

【 定 休 日 】木曜日

【ひとり分の平均的な予算】1,500円

【 予 約 】不明

【クレジットカード】不明

【 個 室 】有

【 席 数 】40席

【駐 車 場】有

【 煙 草 】不明

【アルコール】有

【店のホームページ】http://yamamotokan.org/

【地図にリンク】https://goo.gl/maps/xFguM1HT9Jzspax2A

日本蕎麦保存会
「福井そば博2023」11月18日(土)、19日(日)に開催! そばの食文化が福井に集結!!

福井そば博2023 -日本一の「福井そば」を知る博覧会- おかげさまで、福井そば博2023、たくさん …

どんごろやす
蕎麦 降松(くだまつ) (山口県下松市) 小山の中にある古民家改装の蕎麦屋

下松市東部の山あいにある、古民家を改装した今年ちょうど開業十年になる蕎麦屋さんです。国道2号線やJR …

のほほんと。
蕎麦割烹 黒帯(愛知県名古屋市) 十割そばと二八蕎麦の食べ比べ

ラストオーダー30分前の13:30頃に店舗に到着。店内は満席で、前に3組のお客様が待っている状態でし …