十割そばの打ち方。おいしくてつながりの良い十割そばを打つ秘訣/片山虎之介

そばの基礎知識と雑学

そばの香りや味の良さを、最も楽しめるのが十割そば(生粉打ち=きこうち)です。
そばは本来、つなぎなしの十割で、十分つながるものです。
ブツブツ切れる十割そばになってしまうのには、理由があります。

おいしい十割そばを打つには、十割そばを打つための特別な技術が必要です。
日本そばの伝統の中には、十割そばを打つために磨かれた、特別な打ち方が伝えられています。
でも、多くの方は、そのことをご存じありません。

ここでは、まず、十割そば打ちに失敗する原因を5項目説明します。
そのあとで、ではどうすれば良いのかという対策を解説します。

       片山虎之介 -日本蕎麦保存会-

 

【十割そば打ちを失敗する原因】

1、そば粉の質が悪い
十割そばは、文字通り、100%そば粉だけのそばです。だから、そば粉の味が勝負なのです。おいしい十割そばは、そば粉がおいしい。まずい十割そばは、そば粉がまずい。あたりまえの話です。つながりの良し悪しも、そば粉の質で決まります。

2、加水量が少なすぎる
二八そばを打つときには、コシを出す目的で、加水量を抑えて打つことがあります。それと同じ感覚で十割そばの加水量を決めたら、失敗します。十割そばには、二八とは違った、加水の考え方があります。

3、こねすぎる
二八そばを打つときは、良くこねろと言われます。二八の場合は、おおむね、それでいいのですが、十割そばの場合は、こねすぎると失敗します。こね足りなくても失敗します。

4、麺棒でプレスしてはいけない
タンパク質の「ねばり」だけでつながっている十割そばの生地をのすときに、細い麺棒でギュウギュウ、プレスして押し潰したら、生地には耐えられないほどの大きなストレスがかかります。これが二八そばだったら、小麦粉のグルテンでつながっている、いわば「小麦粉の麺」ですから、プレスしても平気なのですが、十割は「そば粉の麺」です。グルテンはありません。そば粉の麺を、こんなふうに打ったら、生地には細かな傷がいっぱいできて、そこから切れてしまいます。

5、時間をかけすぎる
二八の場合は、水まわしに時間がかかります。そば粉と小麦粉に均等に水を行き渡らせ、さらに練りこんでグルテンを引き出す必要があるからです。のしにも時間がかかります。しかし、グルテンではなく、タンパク質でつながっている十割そばで長い時間をかけて捏ねたり、のしたりしていたら、水分は蒸発してしまい、そば打ちは失敗します。二八そばと十割そばは、打ち方が根本的に違うのです。

では、どうすれば良いのか。その解決策を、お伝えします。

【おいしい十割そばを打つ秘訣】

1、良質なそば粉を使う
十割そばなら、なんでもおいしいわけではありません。味や香りのないそば粉で打ったら、味も香りもない十割そばになります。コシのないそば粉で打ったら、これもおいしくないそばになります。十割そばは、硬くてブツブツ切れるものと思っている方は、正しく打たれた十割そばを、召し上がったことがないのです。そば粉の選定と打ち方で、十割そばは、ほぼ決まると思ってください。

2、加水量を見極める
十割そばを打つには、生地にストレスをかけないことが重要です。ストレスをかけたら、そばは切れてしまいます。そばに気持ちよくのびてもらうためには、適正な加水が必要です。どのくらいが適正かは、粉によって違います。加水量を決めるには、本番の前に、少量をテスト打ちしてください。200gほどを打ってみて、うまくできたら、そのパーセンテージで、本番も打ってみてください。ただし、テスト打ちした量と、本番で打つ量が、大きく違う場合は、所要時間が異なるので、水分が蒸発して加水量が足りなくなります。そういうときは、テスト打ちのときよりも、やや多めに加水することをおすすめします。

3、こね過ぎない
 そばはこねるほどおいしくなるというのは、迷信です。こねすぎると、まずくなります。時間もかかって、かえって切れやすくなる場合もあります。私は、十割そばを打つとき、菊練りはしません。それで、つながりも、喉越しも良くて、風味豊かな十割そばができます。

4、麺棒でプレスは絶対にしない
 十割そばを打つときに、麺棒でプレスしたら終わりだと、私は思っています。生地は押しつぶされて、香りも味も、その中に閉じ込められて、食べても感じにくくなってしまいます。日本蕎麦保存会が主催する「日本蕎麦伝統技能保持者」の認定会では、麺棒で生地をプレスしたら、その瞬間に失格になります。

5、できるだけ短い時間で打つ
時間をかけてはいけない理由は簡単です。水分が蒸発してしまうからです。最も効率の良い手の動きと力の入れ方で、生地をコントロールして、できる限り短い時間で打ってください。しかしそれは、乱暴にしていいということではありません。生地の扱いは、あくまでもやさしく。十割そばは、極めてデリケートなそばなのです。

おいしい十割そばの打ち方は、日本蕎麦保存会のそば打ち教室「蕎麦のソムリエ講座」でお教えしています。初めてそばを打ちますという方でも、初日からおいしい十割そばを打つことができます。そばの打ち方は「片浮かせ、一本棒、丸のし」です。
下の写真をクリックすると、「日本蕎麦保存会の蕎麦のソムリエ講座」のご案内ページにリンクします。

 

 

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