この日、私は長野県長野市に出張しておりました。職場の友人と昼食を一緒に食べることになり、「霧下蕎麦」が食べられるという「藤木庵」に行くことにしました。

そのお店は善光寺の門前から200m手前の参道沿いにあります。文政十年(1827年)第十一代将軍徳川家斉の時代に創業された老舗のお蕎麦屋さんです。お店の外観は、白い漆喰の外壁で、紺色の暖簾には「創業文政十年門前そば藤木庵」と書かれており、いかにも歴史を感じさせる趣のある構えです。

暖簾をくぐり、格子戸を開けると、ベージュ色の内壁と小石で舗装された和風モダンな通路になっていました。そこには木製の長椅子が設けられており、店内が満席になるとそこで順番待ちをするために腰掛けられるようになっているようでした。店内の入口には、ガラス越しにそば打ち台が見えます。打ち方は一本棒ではなく、江戸流の三本棒で打たれる蕎麦だそうです。店内に入ると、白い内壁になっており、ダークブラウンの木製のテーブルとのコントラストがシックな色彩で、清潔感あふれる明るい雰囲気でした。

金曜日の開店から15分遅れて到着したのですが、既に数名の先客がテーブル席に座っていましたが、幸運にも並ぶこともなく、私たちもテーブル席に案内されました。

メニューを見ると、冷たいお蕎麦の中に、「ごくらく(そばつゆ、とろろつゆ、くるみつゆ)」という品があり、二八(1,320円)と十割(1,420円)の2種類がありました。片山先生の著書によりますと、「ごくらくそば」は善光寺に参拝すれば極楽に行けるという善光寺の信仰にちなんで名づけられたとのことです。

店員さんに「お勧めは何ですか。」と尋ねましたら、「ごくらくは人気です。」と勧められました。十割にしようかとも思ったのですが、今回は二人とも二八を注文しました。そば茶を持って来られた女性店員さんは親切で優しい応対でした。

このお店の蕎麦は、全て「黒姫の霧下蕎麦」です。「霧下蕎麦」は長野県北部の北信五岳(班尾山、妙高山、黒姫山、戸隠山、飯綱山)に囲まれた高原状の土地で、昼夜の気温差が大きく、春から夏にかけて霧が多く発生する場所で採れる良質の蕎麦なのです。片山先生の本によりますと、このような霧下地域で栽培される蕎麦は、長野県だけではなく、北海道をはじめ全国に何か所もあるそうです。「霧下蕎麦」の特徴は、風味が良く、弾けそうに膨らんだ実には、健康に良い成分が豊富に含まれているそうです。

5分後に店員さんが、注文した品を持ってきてくれました。そばの外観は、薄い小豆色です。麺の太さは細く、長さは普通で、量はちょうどいいボリュームでした。麺はできたてなので、瑞々しく断面には角がありました。ホシもありました。

一口目は、細麺を箸で3本つまみ上げて、そのままいただきました。蕎麦には、ほんのり甘さを感じました。麺の舌触りは、つるつるしており、麺のコシはしっかりしていました。

二口目は、そばの上に山葵を少し乗せて、そのままいただきました。山葵の辛味が鼻にツーンと抜けていくのと、冷たく冷やされたそばが、口の中の頬にあたり、冷たく感じるのと、麺がしっかりしており、細麺なのに噛み応えがあり、そばのおいしさを感じることができました。

メニューを見ると、「ごくらく蕎麦」を食べる順番が書かれていましたので、その通りに、食べてみることにしました。最初に、陶器の器に入ったそばつゆをそば猪口に入れました。そばつゆは、一本釣りされた鰹二年物本枯節で、天然利尻昆布と合わせて出汁を摂っており、保存料を一切使用していない濃口醤油を使用しているとのことです。蕎麦猪口のつゆを味見した印象は、つゆは濃い目で、カツオだしの味が効いていました。

いよいよ、山葵を乗せて、そばにつゆをつけて、一気にそばを口の中に入れました。そばが冷たいのと、麺がツルツルしているせいか非常にのど越しがよく、つゆの香りも口の中に広がっていきました。
とろろが入ったそば猪口には、そばつゆを少しずつ加えて、お好みの味にしてから食べるようにと書かれていましたので、その通りにしました。そばつゆが加わったとろろのふわトロの食感と細いそばが絡まって、大変美味しいです。

くるみつゆは、薬味を入れないでそのまま食べるようにと書いてありましたので、その通りにしました。くるみは手で割り、すり鉢で擦りながら、蕎麦のもり汁とかけ汁を少しずつ加えて作られたものだそうです。蕎麦をくるみつゆにつけて、口の中にすすりこみました。くるみの自然の甘さなのでしょうか、甘くてドロっとした食感と細いそばが絡まって、大変美味しいです。その後は、それぞれのつゆにつけて、一気に食べてしまいました。

そばを食べ終える寸前に、女子店員さんが蕎麦湯を持ってきてくれました。半透明の蕎麦湯でした。つゆに入れて飲んだ印象は、程よくさっぱりとした味わいでした。

メニューには、そば湯の話が書かれていました。蕎麦湯の栄養は水溶性の為、茹でるときに栄養分が湯に溶け出してしまいます。なので、蕎麦湯を飲むと、蕎麦の栄養を全て摂取したことになるとのことです。漢方では、蕎麦には解熱作用があるようで、風味が落ちてくる真夏に好んで食されたそうです。冷たいそばは、胃腸を冷やすので、蕎麦湯を十分飲んで胃腸を温めるようにとのことでした。
ネットで調べたのですが、蕎麦湯は、その発祥の詳細は不明とされていますが、江戸時代に信州(長野県)でそば湯が出されて、それが江戸に広まったとされているそうです。

食べ終わると、店員さんが、温かいそば茶を湯呑に注いでくれました。そば茶は、香ばしいので、食後の一服には最適です。

勘定を済ませて、お店を出た後、友人が「こんなにおいしいそばは初めて食べた。次は十割を食べてみよう。」と満足げに語ってくれました。

お店の内装は、落ち着いた空間を作り出していて、抜群でした。女性店員さんの優しい応対が印象的でした。私としては、お店の雰囲気、接客態度、「霧下蕎麦」の味等を総合して、100点をあげたいと思ったお店でした。

なお、今回は片山先生の本を参考にさせていただきました。
(参考文献:「真打ち登場!霧下蕎麦」 著者:片山虎之介 発行所:㈱小学館)

(レポート提出/いり番茶)

【 店 名 】信州善光寺 門前そば処 藤木庵

【 読 み (ひらがな)】しんしゅうぜんこうじ もんぜんそばどころ ふじきあん

【 店の電話番号 】026‐232‐2531

【 住 所 】長野県長野市大門町67番

【 アクセス 】長野電鉄長野線善光寺下駅善光寺口より徒歩8分

【 営業時間 】11:00~15:00

【 定 休 日 】火曜日

【ひとり分の平均的な予算】昼 1000円

【 予 約 】可

【クレジットカード】不可

【 個 室 】有

【 席 数 】 64席(カウンター7席、テーブル23席、小上がり14席、
座敷20席)

【駐 車 場】 有

【 煙 草 】禁煙

【アルコール】有

【店のホームページ】有

【地図にリンク】https://goo.gl/maps/M9uY9Hazk1cEYsRM7

 

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