まる家・かどや食堂(福島県檜枝岐村)裁ちそばの食べ比べ

東北地方のおいしいそば屋

尾瀬を歩いた帰りに“裁ちそば”を味わった。両サイドを2,000m級の山々が迫る川に沿って家屋が集落する檜枝岐村は標高約900〜1,000mに位置する寒冷地で、稲作はできず昔からそばを主食としてきたという。

十割を熱湯で捏ね上げ(でっちる)、さらに幾つかの団子に分けてからさらに捏ね(こでっちる)、これを延したものを折り畳まずに、幾重にも重ね、左手を定規にして菜包丁の形のもので引き切る。「布を裁ち切る様」からついた名前だという。

御池から国道352号を下り街並みに入るとすぐに、左にまる家、右にかどやがある。どちらに入るか迷ったが、1軒目を満足して出ると、そう簡単に来れる処ではないという想いに唆(そそのか)されて、もう一軒にも入った。比較できたことでさらに深く楽しむことができた。

“まる家”は明治5年創業丸屋旅館が平成5年に蕎麦店を開業、現在7代目がそばを打つという、樹齢数百年の栃ノ木の丸いテーブルが目を引く広くて明るい店内で、土産物の販売コーナーもある。

“かどや”は民宿もやっていて一般家屋を改築して店舗にしている。打つのは3代目。

裁ち蕎麦は延圧が弱く切れやすいために温かい蕎麦の提供はない。

その薬味には、ネギ、ワサビの他に“山人漬け”(やもうどづけ;しその実と葉、青南蛮とうがらし、らっきょう、ミョウガを塩漬けにして刻んだもの)がつく、こういうものは過酷な環境の中で生まれた保存食なのだから美味しい不味いを言ってはいけないと思う。しそやミョウガは私の好物で、あっさりとしていてご飯には合うと思う。しかし、蕎麦と合わせるには塩分が強く旨味が少ない気がした。

ワサビについては、私は伊豆生まれで生ワサビを食べて育ったたから、そばに“練りワサビ”は今ひとつだと思う。しかし、今から30年ぐらい前、蕎麦が道楽という人(今は高じて蕎麦店を開業しているが)が打った蕎麦を食べた蕎麦店主(片倉康雄氏に師事)が「私にはこんな蕎麦は打てない」と言ったからエッと驚いた。訳を聞くと「定価の範囲ではこんなにお金をかけられない」ということで、なるほどと思った。「喉越しの良いそばに生ワサビ」もそういうものだろう。

“まる家”では、笊に盛られたおろしそばの他に「岩魚一夜干しのから揚げ」を頼んだ、岩魚特有の臭みなく、ふっくらして美味しかった。しかし、大根おろしや天ぷらのような蕎麦との相性はさほど高くは感じられなかった。

 

他のメニューは冷やしかけ、もり、とろろ、他に山川天丼(岩魚、舞茸、山菜)、そばがき、はっとう(そば粉ともち米粉)などがある。

“かどや”は「わっぱ」で出される。わっぱ1個の“わっぱ盛りそば”を注文したが、他に2個の“わっぱ特盛そば”があり、どちらも薬味の他に山菜料理が前者では1品、後者では2品つく。

 

他に裁ちそばと山菜料理2品、はっとうがセットになった“そば定食”や、さらには手打ちのラーメン(醤油、味噌、チャーシュー)もある。村の人と思われる客はラーメンを食べていた。

檜枝岐の蕎麦は檜枝岐農業生産組合が一手に栽培しているという、であれば玄蕎麦は同じで、挽き方が違うのかもしれない。

“まる家”ではそばに関する情報を得られなかったが、色はやや茶色、ザラザラな感じはなく、程よい弾力の後スパッと切れ、ちょっと噛んだ瞬間そばの味を少し感じた(この時期はそばの不遇時代だが)。

それに対して、“かどや”は雑誌によれば石臼挽きの一番粉とを使用しているとあり、写真を見るとそんな感じがするが、コシが強く、そばの味は少なかった。これはラーメンを打っていることと関係あるのか? 優劣は付け難く、この街に住んでいるとしたら、その日の気分で選ぶだろうと想う。

つゆは、“まる家” はバランスがいい感じがした。“かどや”は濃いめの辛い味付けと感じた。

そば湯は両者ともドロドロせず、さりとて薄くなくちょうど良い濃さだった。

参考文献

1.Monmo別冊 福島そばめぐり  2019

2.尾瀬檜枝岐山旅案内所内掲示店舗情報

(レポート提出/知蕎麦 好楽)

【店 名】

まる家 (まるや)

かどや食堂(かどやしょくどう)

【 店の電話番号 】

まる家      0241-75-2025

かどや食堂  0241-75-2004

【 住  所 】

まる家       福島県南会津郡檜枝岐村字上ノ原595-1

かどや食堂   福島県南会津郡檜枝岐村居平638

【 アクセス 】

檜枝岐村内、国道352号沿い

【 営業時間 】

まる家        11:00〜

かどや食堂    11:00〜15:00(そばがなくなり次第終了)

【 定 休 日 】

まる家       火曜日、11月下旬〜4月下旬は冬季休業

かどや食堂   不定休  11月中旬〜4月中旬は冬季休業

【ひとり分の平均的な予算】

〈昼〉

まる家        900〜せいぜい2,000円

かどや食堂    900〜1,600円

夜はなし

【 予  約 】

まる家       グループ、団体は要予約

かどや食堂   11月中旬〜4月中旬は休業だが、5名以上なら1週間前に要予約

【 クレジットカード 】どちらも利用不可

【 個  室 】どちらもなし

【 席  数 】

まる家       64〜80席

かどや食堂       20席

【駐  車  場】

まる家          11〜15台

かどや食堂      11〜15台

【煙  草】禁煙

【アルコール】

まる家      ビール、焼酎の他、

日本酒は冷酒(300ml)尾瀬ごころ(会津酒造)、檜枝岐百年(開当男山酒造)、ワンカップは花泉

かどや食堂   ビール、日本酒

【店のホームページ】

まる家       www.naf.co.jp/maruyashinkan/

かどや食堂   http://tachisoba-kadoya.com(民宿のHP)

【地図にリンク】 https://goo.gl/maps/EqgsSQd9wvuR5Wc79

どんごろやす
蕎麦 降松(くだまつ) (山口県下松市) 小山の中にある古民家改装の蕎麦屋

下松市東部の山あいにある、古民家を改装した今年ちょうど開業十年になる蕎麦屋さんです。国道2号線やJR …

のほほんと。
蕎麦割烹 黒帯(愛知県名古屋市) 十割そばと二八蕎麦の食べ比べ

ラストオーダー30分前の13:30頃に店舗に到着。店内は満席で、前に3組のお客様が待っている状態でし …

ルーモス
蕎麦割烹 黒帯(愛知県名古屋市)伝説の蕎麦職人の味を受け継いだ蕎麦割烹「黒帯」で希少種「幻の蕎麦」をいただく

以前、鶴舞店へ伺った「蕎麦割烹黒帯」さん。特徴ある蕎麦をもう一度食べてみたいと、今回天白本店へ伺いま …