年越しそばの正しい食べ方。三つのタブーを避けて厄払い
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文と写真 = 片山虎之介
年越しそばは年末に行われる、日本人に馴染みの深い国民的行事です。
この行事の起源や、それにまつわるルール、タブーを知り、正しく厄払いをしてください。
まず、決して外せないこととして、年越しそばには三つのルールがあります。
1、必ず、残さずに食べなくてはいけない。
細く長い麺に作られたそばは「そば切り」とも呼ばれます。このそば切りは、細く長くのびることから、長寿や、身代(財産)がのびるようにとの願いを込めて食べられてきました。また、その反対に、そば切りは切れやすいものなので、旧年の厄を、きれいさっぱり切り捨てて、新年を迎えたいという願いも込められました。厄ばかりでなく借金までも帳消しにしたいとの願いも込められたといいます。これらの願いを成就させるためには、必ず、食べ残すことなく完食しなければいけないというのが、ルールなのです。
2、年越しそばを食べるタイミングは大晦日。
年越しそばは、いつ食べるものなのかと迷っている方は多いようです。年越しそばの起源には、いくつもの説がありますが、その一つに、鎌倉時代、博多の承天寺(じょうてんじ)で、年の瀬を越せない町人に、世直しそばと称して、そば餅をふるまったところ、翌年からみなに運が向いてきたため、大晦日に運そばを食べる習わしが始まったと言われています。※
また、室町時代に関東三長者のひとり、増渕民部が、毎年、大晦日に無病息災を祈って、そばがきを食べたことから、この風習が始まったとも言われます。どちらの説も、大晦日にそばを食べて、新しい年の幸福を祈っています。大晦日に食べるから、年越しそばなのです。大晦日とは一年の最後の日、12月31日に食べましょう。
3、食べ過ぎると毒になる。
江戸時代の百科事典とも言える「本朝食鑑(ほんちょうしょっかん)」という本に、そばは体に良いと記してあります。そばを食べると気力が増し、胃腸が活発になり、お通じが良くなるとのこと。一年のお腹に溜まったものを、そばを食べてさっぱりと排出して新年を迎えたいと、そばの効能から始まった行事だという説もあります。でも、そばは食べ過ぎると毒になるということも、「本朝食鑑」には書いてあります。そばは食物繊維も多くて、難消化性の食べ物なので、お通じも良くなるかわりに、食べ過ぎると消化不良や胸焼けを起こすことがあります。厄払いのはずが、そばをいっぱい食べたために、体調を崩してしまったら、年越しそばを食べた意味がありません。美味しくても、食べ過ぎないようにして、フットワークも軽く、新年を迎えましょう。
※参考資料/蕎麦の事典