野の庵 (青森県弘前市) 津軽そばの美味しさに感動 / 日本蕎麦保存会jp

青森県のおいしいそば屋

《全国 おいしい蕎麦屋ランキング》 写真と文=片山虎之介

 

津軽そば処 野の庵

 

 

幻の津軽そばを復活させる

『野の庵』は、明治期に創業した歴史ある名店ですが、老舗の名に甘えることなく、絶えず、進化を続けている蕎麦屋です。

一度は途絶えた津軽そばを、製法を研究してよみがえらせたことからもわかるように、おいしい蕎麦を目指して、いつも努力をしています。

その『津軽そば処 野の庵』が、また新しい世界の扉を開けました。

津軽そばを、在来種のそばを使って打つようになったことと、新たに十割そばも始めたのです。

もともと日本料理の世界で修行を積んだご主人ですから、料理の腕と、センスは際立っています。

さらに、そばの研究も重ね、日本中の在来種の中から、最も風味に優れた材料ということで、福井在来に着眼しました。

東北地方では残念ながら、在来種は、ほとんど絶滅状態なので、福井のおいしい材料を使って、津軽そばを、さらにおいしくしようとしたのです。

その狙いは、成功しました。

もともとは在来種を使って作られていた津軽そばが、本来のおいしさを取り戻したのです。

弘前城のお堀に寄り添うように、『津軽そば処 野の庵』はある。

 

津軽そばは、なぜ、おいしいのか

『津軽そば処 野の庵』では、かつて、昔ながらの津軽そばを作って、地元の人たちに供していました。

津軽そばとは、簡単にいうと、すりつぶした大豆をそばに練りこんで打った、この地方独特の郷土そばです。

そばの持ちがよくなって、大豆の味が、ほのかに加わり、そばのおいしさに厚みが増して、おいしいそばができるのです。

それはたしかに、おいしいのだけれど、作るのに手がかかる・・・残念ながら、そういう理由で、この作り方は、いつの間にか忘れられてしまいました。

 

しかし、『津軽そば処 野の庵』主人の佐藤 彰さんは、この地ならではの伝統のそばを消し去ってはならないと、多くの人の協力を得て、津軽そばの製法を再現し、「幻のそば」とまで言われたこのそばを、よみがえらせました。

そして、令和元年、津軽そばのおいしさを、完全復活させるために、在来種を使うという決断をしたのです。

昔の津軽の人たちが愛した津軽そばが、本来の形で復活しました。

その味は、「えっ!」と目を見張るぐらい、おいしいものです。

『津軽そば処 野の庵』の人気メニュー、「あけび カゴ盛り」と「十割そば」のセット「十和田」。

 

『津軽そば処 野の庵』の受難

そばがおいしいことで知られ、『津軽そば処 野の庵』には、多くの客が訪れました。

しかし、それが逆にわざわいとして、逆風を吹かせたのです。

 

『津軽そば処 野の庵』のお店は、弘前城のお堀のすぐ脇にあります。

弘前城は、東北地方屈指の桜の名所で、桜の咲く時期には、たいへんな数の観光客が訪れます。

そういう人たちが、花盛りのとき、『津軽そば処 野の庵』の店の前に行列を作ります。

店は基本的に、主人と女将さんのふたりで切り盛りしていますから、大勢の客は、さばききれません。

待ちくたびれて、手持ちぶさたの客は、イライラした気持ちを、『津軽そば処 野の庵』のグルメサイトにぶつけました。

店に入ってもいないのに「まずい」と書いたり、駐車場に無断で車を停めておいて、注意されると逆切れして、悪い評価をいっぱい書き込みました。

こうして『津軽そば処 野の庵』のグルメサイトの評価は、見たこともないようなひどい点数に落ちました。

これでは、事情を知らない人たちは、ここはひどい店なのだと思ってしまいます。だから、春が過ぎて、夏になっても、客足が途絶えてしまい、ガラガラの状態が続きました。

インターネットのことなど、まったくわからないご主人と女将さんは、グルメサイトが、そんな状態になっていることさえ気がつきません。

なぜか、お客さんがこないと、不思議がるばかりだったのです。

そんなことが、何年も続きました。

しかし、ようやく原因がわかって、改善策を講じました。

花見の時期は、完全予約制にして、きちんと対応できる人数しか、店に入ってもらわないことにしました。

これでようやく、騒ぎは収まったのですが、グルメサイトの評価は、落ちたままです。

体力のない店なら、倒産してもおかしくない状態です。

津軽そばを復活させた津軽の名店には、ぜひともがんばってもらって、このおいしいそばを、後世に伝えてほしいから、私は応援します。

みなさん、『津軽そば処 野の庵』を訪ねて、この感動するほどおいしい津軽そばを、味わってください。

おいしさは、私が保証します。

きっと満足してもらえると思います。

 

在来種の強い風味が楽しめる十割そば

 

津軽そばの通販、「取り寄せそば」を始める

『津軽そば処 野の庵』では、かねてから要望のあった「取り寄せそば」のサービスを、令和元年の11月から始めました。

すると、日本経済新聞社が行っている「NIKKEIプラス1 何でもランキング」で、12月に、『津軽そば処 野の庵』の津軽そばが、お取り寄せそば 全国9位に選ばれたのです。

登場したばかりの新星に、わずか一ヶ月で、輝かしいスポットライトがあたりました。

『津軽そば処 野の庵』の津軽そばが、それだけおいしいのだということが証明されたのです。

今では、日本各地から、取り寄せそばの注文が入ります。

遠くは沖縄からも、注文があります。

 

本当のおいしさは、店で味わいたい

取り寄せそばは、もちろんおいしいのですが、店で食べる、心尽しのそばは、格別のおいしさがあります。

つるりとしたのどごしと、やさしい舌ざわり、喉に滑り込んだそばのあとを追うように、ほのかなそばの香りが広がります。

東北の郷土料理を食べてみても、津軽の人はなんとグルメなのだろうと、そのおいしさ、手間のかけ方に驚きますが、津軽そばも例外ではありません。

東北を代表する、郷土そばの王者といっても過言ではないと思います。

津軽、弘前に、古くて新しい名物が、よみがえりました。

桜の時期に行っても、混雑して、店に入れないので、どうぞ、それ以外の季節に、弘前城のお堀端で気持ちの良い風が楽しめる『津軽そば処 野の庵』を訪ねてください。

ご主人と、女将さん、こんなおいしいそばを復活させていただいて、ありがとうございました。

 

【 店の電話番号 】

0172-36-0500

 

【 住 所 】

青森県弘前市五十石町57

 

【 アクセス 】

JR弘前駅より車で約12分

高速道路、大鰐弘前ICより 車で約25分

 

【 営業時間 】

[幻の津軽そば/十割そば]

11:30~15:00

 

[会席郷土料理]

11:30~21:30(会席料理は要予約)

 

【定休日

火曜日

 

【ひとり分の平均的な予算】

昼 3,300円〜

夜 7,000円〜

 

【 予 約 】

可能

 

【クレジットカード】

不可

 

【 個 室 】

あり、20席

 

【 席 数 】

30席

 

【駐 車 場】

あり

 

【 煙 草 】

禁煙

 

【アルコール】

日本酒あり

 

【店のホームページ】

https://nonoan-soba.com/

 

【地図にリンク】

https://goo.gl/maps/y4HzXBbE6D1pgMZ76

 

 

どんごろやす
手打ちそば ながお(広島県東広島市)こんな所に豊平流の蕎麦屋さん

いつだったか東広島市の南部に豊平流の美味しい手打ち蕎麦屋さんがあると聞き、居ても立ってもいられず食べ …

のほほんと。
手打そば処 谷屋 (愛知県名古屋市) 元綿問屋を改装した店内でいただく手打ちそば

ゴールデンウィークの初日、名古屋市西区の手打そば処「谷屋」さんへ伺いました。名古屋城までのウォーキン …

どんごろやす
蕎麦 降松(くだまつ) (山口県下松市) 小山の中にある古民家改装の蕎麦屋

下松市東部の山あいにある、古民家を改装した今年ちょうど開業十年になる蕎麦屋さんです。国道2号線やJR …

error: Content is protected !!