そば好きは、十割そば派と、二八そば派に分かれる
そば好きには大きく分けて、十割そば支持派と、二八そば支持派がいます。
それぞれが、「そばは十割に限る!」とか、「そばは二八。噛まずに、のどごしを楽しむものだ!」などと主張します。
十割そばと二八そば、いったい、どちらが、よりおいしいのでしょう。 それぞれのそばの特徴を比べながら、詳しく検証してみましょう。
なお、この記事の後半で、十割そばと、二八そばがおいしい、おすすめの店を紹介していますので、じっくり、最後までお読みください。
二八そばとは何か
まず、二八そばとは、どういうそばでしょうか。
そば粉8に対して、小麦粉2の割合で混ぜて打ったそばが、二八そばです。 この比率で打ったそばは、麺にしなやかさが加わり、食感がなめらかになるため、つるりと喉を滑り落ちます。 これこそがそばの食感だと、二八そば派は主張します。
そばに小麦粉を混ぜる割合は、二八のほかにも、外一(そといち)や七三(しちさん)など、いろいろありますが、そば屋さんのメニューに載っている最も一般的なそばが二八そばです。作りやすく、食べやすいそばだといえます。
二八そばの魅力は、なんといっても、しなやかな食感にあります。 ときどき、しなやかを通り越して、柔らかくなりすぎたそばもありますが、それは二八そば本来の食感とは違うものです。 しなやかで、なおかつキリッとコシがあり、口に入れると、つるりとなめらかに、のどに滑りこんでいく。これが理想の二八そばの食感です。
「そば粉に、小麦粉を2割も入れるのだから、そば粉の風味は、2割落ちるのではないか」と心配する声もあります。 一般的な蕎麦屋さんで食べることのできる蕎麦の味や香りは、もともとそれほど強いものではありません。ほのかに感じる繊細な風味が、清涼感を感じさせ、そばならではの魅力になっているのです。
この繊細な風味が、2割も落ちるとしたら、それは問題です。 でも、上手に作れば二八そばは、十割そばと間違えるほど、香り高い
そばにすることもできます。 二八そばが、すべて、風味が弱いわけではありません。つまりは、作り方しだい、蕎麦の打ち手しだいなのです。
↓二八そばの代表格、信州・戸隠『戸隠そば 山口屋』の二八そば
十割そばの魅力とは何か
次は、十割そばとは何かというお話をしましょう。
小麦粉を使わずに、100パーセントそば粉だけで打ったそばが十割そばです。 そば粉だけで打つことを「生粉打ち(きこうち)」とも言います。生粉打ちで作ったそばが、十割そばです。
十割そばには、二八とはまた違った、魅力的な食感があります。
麺の表面に、そば粉の粒子のザラザラした舌触りを感じ、歯を軽く当てると麺が、ふっつりと切れ、その切れた部分から、そば粉の粒子が砕けて拡散し、味と香りが、ふわっと口中に広がる。これが十割そばのおいしさです。
舌に触れる粒子のつぶつぶ感と、歯を当てたときのモチモチ感。そして、あっけなく切れる、儚(はかな)ささえ感じさせる食感。そこから味と香りの波紋が口中に広がり、鼻腔の奥深くにまで到達する。二八そばには真似のできない、ある意味、壮大な世界です。
最高の生粉打ちを食べると、口の中に、十割そばの宇宙が出現すると言っても、おおげさではありません。
しかし、すべての十割そばが、こんな食味を備えているわけではありません。 そば粉の扱いを熟知し、そば打ちを極めた達人だけが生み出せる、究極のおいしさが、こういう世界です。
↓東京でおいしい十割そばが食べられる店『蕎亭 大黒屋』の十割そば
十割そばと二八そば、どちらがおいしい
町のそば屋さんで、多く供されているのは二八そばです。
その理由は、滑らかな食感を出したいということもありますが、小麦粉を入れて作ると、打ってから時間が経過しても、そばが切れにくいということが大きな要素になります。小麦粉に含まれているグルテンが、時間がたってもそばを切れにくくしてくれるのです。
お店で営業としてそばを扱う場合は、やはり長持ちすることが重要です。風味にこだわって切れやすいそばになるよりも、食感の魅力に重点をシフトして、そこをお客さんに楽しんでもらうという選択も、合理的な考え方です。
食感は、そばの魅力の重要な柱となるものですから、決して間違った方法ではありません。
「二八そばのおいしさ」は、細く長くつながった食感に、最大の魅力があります。 ですから、この食感が大好きな二八そば派が、「ブツブツ短く切れたそばは、そばじゃない」と言いたくなるのも、わからないではありません。
しかし、そばの魅力は、「つるりとした食感」にしかないわけではないのです。 十割そばならではの、豊かな香りと味。そして、はらりと切れて、風味が口中に広がる至福の感覚。これは「細く長くつながって切れないそば」には、真似のできない世界なのです。切れるからこそ、こうしたおいしさが生まれます。
「十割そばの魅力は、切れるところにある」とさえ言えるのです。
↓達人が打った十割そばは、そばという食べ物の奥深さを教えてくれる
⬇︎クリックすると十割蕎麦の栄養、健康、美容効果についてのお話にリンクします
作り方によって、そばは「おいしさ」に違いが出る
十割の冷たい「もりそば」がおいしいと評判の店でも、温かい「かけそば」や、天ぷらなどを乗せた「種もの」には、二八の麺を使うところがあります。
そうかと思うと、冷たいそばも、温かいそばも、どちらも同じ十割そばで通している店もあります。
また、日本で、1、2位を競う名店と評される店で、十割そばはメニューになく、小麦粉のつなぎを使ったそばしか供していないところもあります。
なぜ店によって、十割、二八の使い方が異なるのでしょう。
その理由は、そばは作り方によって、まったく違った食味になるからなのです。 つまり十割、二八という、小麦粉の混合比率だけで、そばの「おいしい」「まずい」が決まるわけではないのです。目的によって、どのように麺を作り分けるかで、そのメニューの魅力は大きく変わります。
ですから「十割そばが最高!」、「いや、二八こそ、そばの中のそば!」という、混合比率だけですべてを決めようという議論は、なりたたないことになります。 江戸時代から十割そば派と二八そば派の論争が繰り返され、いまだに結論が出ないのは、こういう理由があるからなのです。
↓使う材料や粉の状態を見極めて、「打ち方」をコントロールすると、美味しさを引き出すことができる
十割そばのおすすめの店と、二八そばのおすすめの店を紹介します
ここまで読んだ方は、お蕎麦、食べたくなりましたよね。
ぜひ、本物の美味しさの蕎麦を召し上がってください。
名店の評判高い店なのに、食べてがっかりの店が、とても多いのが、蕎麦の世界です。
ここまで書いたような蕎麦の個性を、「なるほど」と味わえる店を、以下に紹介しますので、それを読んで、お店を訪ねてください。
そこまでやっていただいて、初めて、この記事を読んだということになります。
まずは、十割そばの、おすすめの店です。
長野からいきましょうか。
JR長野駅で新幹線を降りて、駅からあ類て5分ほどのところに、その店はあります。
ものすごく、みつけにくいところにありますので、がんばって探し出してください(笑)。
そこは、本物の十割そばを供する、本当の名店です。
⬇️そばの作り方によって、十割そば、二八そばが、どのように変化するのか。以下のアイコンをクリックしてご覧ください。