藪蕎麦 宮本 (静岡県島田市) 江戸そばの原型がここにある / 日本蕎麦保存会
《全国 おいしい蕎麦屋ランキング》 写真と文=片山虎之介
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藪蕎麦 宮本 (やぶそば みやもと)
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日本蕎麦本来の味を知るには、ここまで来る必要がある
本当の日本蕎麦の味を備えた蕎麦を供する店が、いったい日本に何軒あるのだろうと考えると、寂しい気持ちになります。
言葉は辛辣ですが、名店、老舗、人気店と言いながら、蕎麦とは違う「蕎麦のようなもの」を、誇らしげに出す店が大多数なのが、今の、蕎麦の世界の状況です。
蕎麦を食べる多くの人たちも、そういう蕎麦しか食べたことがないので、それが日本蕎麦の味だと思ってしまっている。ここに蕎麦の食文化の荒廃があります。
静岡県島田市の『藪蕎麦 宮本』は、そうした店とは違います。この店には、本物の蕎麦があります。
安心して、遠路、はるばる、島田市を訪ねてください。
根底に流れる日本蕎麦伝統の心意気
蕎麦店は、商売をしているのですから、利益を出さなくてはなりません。それは当然のことで、利益を出せなかったら、生活できませんし、店も維持できません。大いに稼いでいただきたいのですが、利益を出す方法には、いく通りかあります。
仕入れ値を抑えるために材料の質を落とし、手を抜いて粗製濫造の商品を売って利ざやを稼ぐというやり方もあります。
それとは正反対に、材料を吟味し、魂を込めた蕎麦を作り、お客さんに感動してもらい、また来てもらうという方法で、売り上げをのばし、利益を上げる方法もあります。
私は、後者の店でしたら、何度でも通います。
蕎麦の値段が高額になっても、かまいません。材料を惜しまず、手間ひまかけて作る蕎麦の値段が高価になるのはあたりまえです。それは「高い」とは言いません。適正価格なのです。
作る人が、食べる人のために、「できる限りの力を注いで、おいしい蕎麦をご馳走してあげよう」と思って作るのが、日本蕎麦の伝統です。蕎麦はもともと、庶民が大切な人をもてなすために作った食べ物です。その根底には、こうした思いが流れていなければならないはずなのです。
毎日手挽きする「手挽きざる」を味わいたい
『藪蕎麦 宮本』では、何よりもまず、「ざるそば」「手挽きざる」を味わってください。この味、香り、食感を、あなたの記憶に、刻み付けてください。これが日本蕎麦本来の食味です。
そして、温かい蕎麦と汁の味も、必ず、味わってください。舌に焼き付けてください。
これらの味を、これからあなたが蕎麦を召し上がるときの「ものさし」として使うことができたら、あなたは本物の蕎麦通になれます。本物になるための一里塚が、『藪蕎麦 宮本』の蕎麦の味を知る事なのです。
蕎麦を極めた職人の志
『藪蕎麦 宮本』主人、宮本晨一郎(しんいちろう)さんは、言います。
「片山さん、私が池之端で修行していたころは、新蕎麦の時期になると、ほんとうにむせかえるような強い香りの蕎麦が入ってきたものですが、今、ああいう蕎麦は、どこに行ってしまったんでしょう。どこかに、ああいう蕎麦は、ありませんか?」
日本の蕎麦は、材料そのものが変わってしまったのです。
すべて効率優先の社会のシステムが生み出したひずみが原因です。
だからこそ『藪蕎麦 宮本』のような店が貴重であり、必要なのです。
『藪蕎麦 宮本』の蕎麦を食べるときには、味、香り、食感を味わうのは、もちろんですが、同時に、宮本さんが蕎麦に込めた「志」も感じとってください。
これこそ、醤油、砂糖以上に重要な、日本蕎麦では、もっとも大切で、得難い「調味料」なのです。
【 店の電話番号 】
0547-38-2533
【 住 所 】
静岡県島田市船木253-7
【 アクセス 】
車で行くことをおすすめ。東名吉田インターから北へ2分ほど。
鉄道の場合は、JR島田駅から静鉄バス初倉線に乗り「初倉中学水野医院入口」下車、徒歩約1分。
【 営業時間 】
11:30~14:00
【 定 休 日 】
月曜日(祝日は営業。翌日振替で休み)
定休日は変更となる場合があるので、要確認。
【ひとり分の平均的な予算】
2,000円~5,000円
【 予 約 】
座席の予約は不可。
そばがき、そばずしは、前日までに要予約。
そば会席は、3日前までに要予約。日曜は不可。
店内撮影禁止。
【クレジットカード】
不可
【 個 室 】
なし
【 席 数 】
24席
【駐 車 場】
あり
【 煙 草 】
禁煙
【アルコール】
日本酒あり
【店のホームページ】
【地図にリンク】
https://goo.gl/maps/UDnfe9sb8h5VGQ2j8